ゴッド・オブ・ウォー・アセンション:(ゲーム)
ゴッド・オブ・ウォー。それはまさに神々の戦いと呼ぶにふさわしい。PS2に初代GOWがリリースされ、骨太なアクションであまたの人々を虜にし、スパルタ魂を見せつけた。
前作のGOW3では、ついにクレイトスの復讐も終焉を迎え、またハードもPS3に移行、PS3の能力を限界まで使って見せてくれた残虐な戦闘シーンは、数々のプレイヤーの脳裏に記憶されたことだろう。このGOW3はグラフィックも次世代級なうえ、ストーリーも復讐の総仕上げというだけあって、ゼウス、ハデス、ポセイドンなどメジャーな神々フルボッコで一番盛り上がったのではないだろうか。
そんなGOWシリーズの期待を背負って、最近リリースされたのがこのGOWアセンションである。
あの3より少しとはいえ、さらにグラフィックが綺麗になったうえ、対戦などのオンライン要素など、今までにない新要素も追加、さらに盛り上がったのだが……
結論から言うと、やはり3を超えることはできなかった。
大きな原因はストーリーにあると思う。アセンションは1と2の間か1の前なのか、詳しいことは分からないがとりあえず過去の話らしい。それゆえか、クレイトスにはまだ人間らしいところが残っている。それが思わず「え?」となってしまうのである。
3で容赦なく神々をフルボッコにしていたクレイトスさんが、意外にもうろたえていたり、葛藤したりしているのだ。やっぱりホールデン判事も仰っている通り、色白のハゲは「容赦なく全てを破壊する」のが鉄則だとあらためて思った。
さらに、特殊なアイテムが微妙……
時間を止めたり巻戻したりして仕掛けを解いたり、それで敵の動きを止めたりするのだが、クレイトスさんは魔法使いというよりやはり力づくでやって欲しいというのがある。
3は放火して奪った弓矢に、もぎ取った神の首に、切り落として強奪した神の靴という豪華ラインナップ。どれもクレイトスさんの豪快さ、残虐さ、力強さをアリアリと示していた。これと比べると、アセンションは強奪した感が少ない。これはスパルタ精神に反するのではないだろうか? 価値あるものは強奪せよ。世界共通のこの法則に外れていることが残念だ。また、魔法自体の効果も地味で暴力的でない。暴力が売りのゲームなのだから、そこらへんはそういう魔法であって欲しかった。
次に世界観が、少し「違う」と思った。GOWの舞台はあくまでギリシャだったはずだが、途中からもう訳の分からない雪山へ行く。ここら辺からアジアンテイストすら醸し出されているのだが、これが混乱しか招かない。一体自分はどこにいて何をしているのか? クレイトスさんの過去のトラウマにケリをつけるなら、もっとやりようがあったと思う。何やら訳の分からない場所で化物退治より、もっとギリシャの戦争など、描くべきシーンはあったと思うのだが。元々、戦争に勝つためにアレスと契約したのであるし、オリュンポスだけでなく、下界の人間界もどうなっているか、ちょっと見せてくれれば楽しかったと思う(とはいえ、少しだけでてくるが。もっと軍隊とか、戦争とか、そういうところを見せて欲しかった)。
あと、アセンションでは、冒頭の戦闘が終わってから過去の回想、という形でストーリーが進んでいくのだが、これが少し盛り上がりに欠けた。回想シーンというのはかなりうまくやらないと、逆にストーリーが停滞してダイナミズムを失いかねない。ゲームで回想をうまく利用したのはファイナルファンタジー・タクティクスぐらいしか思いつかない。冒頭のチュートリアル戦闘が終わってから主人公の回想、という形だが、それでもほとんどチュートリアルであり、実質時系列順といっていい。ゲームで回想シーンを多用したものは見たことがないが、アセンションではそれが多用されている。冒頭(現在)→回想→現在→回想→……といった感じでストーリーが進んでいく。なんだか細切れ感があり、イマイチな盛り上がりだった。やはり一直線に進んで全てを破壊するに限るだろう。元々そういうゲームであるし、求められているのもそこだからだ。
ただ、冒頭のヘカトンケイレス戦は3のポセイドンに負けず劣らずの盛り上がりだった。あれがあのまま続けば十分楽しい作品になっただろうに、残念だ。
ストーリーに関連して、鬱陶しいボス、雑魚が多い。ボスのカスターは特に鬱陶しかった。巨大でもないし、何か豪快なCSアタックがあるわけでもない。
しかも特定の雑魚にはなぜか無敵時間がつくように。その間はどんな攻撃も一切ダメージを与えられないので、逃げ回るしかない。そんなクレイトスさん、見とうなかった……
あと、カメラワークが時々悪い。カメラが引きすぎて、クレイトスさんがどこで何をしているか全くわからなくなってしまうのだ。そのあいだも敵の攻撃は容赦なく続いており、その点はもう少し改善してほしかった。
しかし、悪いところばかりでもない。いいところとして、武器を強奪できる、という点が挙げられる。やはりクレイトスさんといえば強奪である。強奪すれば楽しいのだから、このシステムはもっと早く導入されていてもいいくらいだ。これまで○ボタンで掴み攻撃だったのが殴り攻撃に変更、掴み攻撃はR1で行うように。最初は混乱したが、慣れれば特に問題なし。さらに今回の掴みは鎖を伸ばして遠くからも掴めるようになり、使いやすさがアップ。アセンションやってから3に戻ると、そのあたりは改善されたことがよくわかると思う。また、3では掴み攻撃から派生する掴みタックル攻撃がゲームバランス全てを破壊するくらい強烈な攻撃だったのだが、それがちょうどいいバランスに変更された。掴みタックル自体が特定の条件下でないと出せなくなっているし、タックルの威力自体もかなり落ちている。これは逆にいい調整だろう。
そうそう、武器の強奪だった。今回の武器は一種類だけで、そこに属性のようなものを付加して戦う形式になっている。だが、その武器不足を補うように、ザコ敵が持っている武器を殴って奪えるようになったのだ。敵が持っている武器は大剣、槍、盾(クレイトスさんが持てば盾も立派な武器に)、ハンマーなどだ。なので、武器の種類は今まで一番多いかもしれない。
ただ、これも完全に満足できる出来ではなかった。武器を奪うのもけっこうダメージを与えてから殴る必要があり、そんな簡単に奪えないことが一つ。さらに敵が落とした武器を拾いにくい点。乱戦だと特に顕著だ。武器を拾うボタンも掴みと同じR1なので、投げが暴発してしまう可能性大。近づいて拾おうにも、乱戦ではそんな暇もない。そこらへんはR1を押したら鎖を伸ばして武器を拾う、とかいう仕様でもよかったかもしれない。それでも多分同じボタンである以上暴発するだろうから、殴ったらモーション変化して直接奪い取る、とか、R1掴みで倒したら(強奪武器を何も持っていない場合は)自動的に入手、とかにしてくれたらありがたかった。また、強奪武器独特のCSアタック、ブルータルキルなどあれば、強奪しがいもあっただろう。現状、あまりに“補助武器”としてのポジションが強すぎる。
あとは、最後の盛り上がり。飽きはじめた頃にこれでもかと盛り上がる。復讐の女神は一応女性だが、女子供にも容赦ないクレイトスさん。やっぱりこれがクレイトスの真の姿だと思う。CSアタックばかりで意外とあっけないラスボスだったが、爽快感があるのでよし。
そしてオンライン要素だが、そこそこ面白い。ただ、飽きる人はすぐに飽きる。よく似た対戦形式ばかりで、イマイチ「やり込みたい!」という風には、少なくとも自分はなれなかった。協力プレイは二人だけで、ボスもなんもない。ただ出てくるモンスターを倒すだけだし、しかも倒したモンスターから得られるオーブは最後のトドメを刺した方に入る。つまり、自分は何もしなくて最後においしいところだけ持っていくのが一番効率がいいという仕掛け。そこは平等に分配とかにした方がお互い気分よくプレイできると思うのだが。個人的にはモンスターになれるモードとか欲しかったかなぁ。あとは新参を古参で圧倒的戦力差が生まれるので、なかなか新規に気軽に参加しづらい、というところか。
全体的に改善点、新しい魅力などがあるものの、それよりも粗が目立って結局は実験作といった感じだろうか。実験は失敗だったのか成功だったのか、よくわからない。それは前作の3があまりにも盛り上がりすぎたため、それと比較されてしまうからだ。
3に比べると落ちるが、アセンションはアセンションで色々欠点もあるものの十分楽しいゲームだったと思う。期待には少し応えきれなかったが、決してプレイヤーを失望させるような出来ではない。
次回作があるかどうかもわからないし、あってもクレイトスさんが主人公なのかどうかも分からないが、是非ともアセンションで得た経験を元に、スタッフにはさらに神ゲーづくりに精進してもらいと期待している。




