プロメテウス~~優しくないガニメデの巨人たち~~
初っ端から思いっきり全力でネタバレしているので、嫌な人はまず映画館へ行こうね。ていうかネタバレ前提の薄っぺらい考察も入っているぞ。
もちろん、「優しくないガニメデの巨人たち」というのは、j・p・ホーガンの著作にあやかって私が勝手につけた副題だ。
この映画、広告で『人類の起源が明らかにされる』とか銘打っているが、結論から言うと「人類の起源」は明らかにされず、むしろ「エイリアン」の起源が明らかにされちゃった映画。
おそらく、タイトル的には「エイリアン0」とか「エイリアン・オリジン」とか「エイリアン・ライジング」とかつけられるべきだったかもしれない。
壮大な風景から始まるオープニングはともかく、それ以降は見ていて「エイリアンの(むちゃくちゃ良くできた)同人映画か?」と思ってしまうくらい、エイリアンだった。まず、タイトルの文字の出現の様子が、初代エイリアンのまんまだった。宇宙空間に浮かぶ地球を背景にして徐々に浮かび上がるあのタイトル文字のことね。その「エイリアンの遺伝子」は映画中のあらゆるところで見受けられる。もちろん、宇宙船などSF的デザインが酷似しているのは仕方ないにしても、宇宙船クルーの中にアンドロイドがいて、しかもそのアンドロイドが上層部から他の乗組員も知らない秘密の使命を受けている、ということまでそっくりだ。そしてこのアンドロイドが生首だけになって喋るのも、もはや伝統芸能だろう。なんかこの映画の舞台設定は2090年代なのだが、さすがに2090年代とは言えここまで人間に近いアンドロイドは無理じゃないか? まあ、この辺の科学技術的な考察は別にどうでもいいのだが。そして最後のほうで復活した「優しくない巨人」が乗り込む大砲の台座のような装置。あれは初代『エイリアン』で出てきた謎の宇宙人の死骸そのままだ。『エイリアン』の方がもっと大きかったような気がするが、基本的なデザインは同じ。
早い話、『プロメテウス』は初代『エイリアン』の、監督自身による正統派リメイクである。『エイリアン』は純粋なSFホラーで、エイリアン自身の起源など全く説明されていなかったから、ここらへんを人類の起源と絡めて「SFミステリー」チックにしてみたのだろう。むろん、『プロメテウス』もSFホラーであるが、そこにSFミステリーの仮面を上手くかぶせて巧みな映像表現で料理しているあたり、この監督は本当にすごい。ていうかメイン美術担当の画家H・R・ギーガー氏は天才すぎるだろ。オラに画才を分けてくれ。もっとも分けてくれたところで、ごく一部でも有り余るあまりにも強大な画才のせいで私のお腹が裂けて死ぬだろうけど。
最初この映画のオープニングを見て、私はホーガンの「星を継ぐもの」3部作を思いだし、勝手にそれに近いものを想像していた。すなわち、科学者たちがSF的な考察を重ねて「人類の起源」を探り当てる話だと。その過程で、ハリウッド的なアクションやらなんやらはあるかもしれないが、本筋をSFミステリーだろうと。それは見事に裏切られた。これをいい意味でとるか、悪い意味で取るかは人それぞれだろうと思う。
ただ、ツッコミどころが多く、そして肝心の部分は何も説明されないままだった。
一番突っ込めたのは、主役の女性が腹の中のエイリアン(の幼体)を手術で取り出す場面だ。手術自体は機械がやってくれるのだが、そのやり方が結構ザツ。あれだけ人間ソックリの、それも外面だけでなく内面もソックリのアンドロイドが作れるのに、なぜ手術台のAIは気のきかない原始的なプログラムなんだ? レーザーでお腹を切開するところまではいいが(かなり痛そうだったが)、それから中のエイリアンを取り出すのは完全にUFOキャッチャーのアームだった。そして切開した傷はホッチキスで止める。もちろん、文房具のようなホッチキスではなく、もっと高級なんだろうが、それでもホッチキス…… これもビジュアル的に考えて作られているからこうなったんだろうか。
そして宇宙人のビジュアル。これを見たとき、私は『ブラッド・メリディアン』のホールデン判事を思い出した。もちろん、『ブラッド・メリディアン』は小説だから絵で見たわけではないが、小説の描写と、この映画で描かれている宇宙人の姿はいくつかの特徴で非常に酷似している。まずは色が白いということ。そして毛がない。次に巨体で筋肉質。判事ですら「2mを超える」し、宇宙人は目測でも2m半は確実にあった。内面的な特徴で言えば残酷というのもそっくりだ。判事は何の容赦もなくインディアンを虐殺するし、この宇宙人も目を覚ましていきなり、自らを起こしてくれた地球人を(特に理由もないのに)皆殺しにしている。そして両者とも恐ろしく知能が高い。宇宙人の知能が高い具体的な描写はなかったが、あれだけの科学文明を築き上げてエイリアンを生み出したのだから、そう見ても間違いあるまい。
だが、何より謎なのは「3万5千年前」に地球にやってきたと思われるこの宇宙人を、なぜか作中人物たちは「人類を作った」と「創造主」呼ばわりしていることである。
現在の人類の直接の先祖は約5万年前に誕生したのであり、約3万5千年前なら人類誕生より後に彼らはやってきているから、どう考えても「人類の創造主」ではないはずだ。もちろん、アウストラロピテクスとか、そういう猿人レベルの起源まで遡れば何百万年前とかいう話である。『2001年宇宙への旅』のモノリスはまさにそういう意味で、本当に人類を誕生させた。先のホーガン著『星を継ぐもの』三部作では、現代人の直接の先祖がどうやって誕生したのかという話で、5万年前の「事件」がすべての発端となっている。
ところがこの『プロメテウス』は、どちらでもないのだ。まだ人類「文明」の起源なら分からないこともないが、「文明」ではなく明らかに「人類そのものの起源」だとしている。
あ、今思い出したけど、そういえば劇中で宇宙人の遺伝子と人間の遺伝子が完全に一致したとか言ってたような……
何か余計、人類の起源の謎が深まったんですけど……
だが、この映画は上記のような小賢しい理屈などどうでもいいと吹っ飛ばしてくれるくらい面白かったのは確か。2時間ちょいの映画だったが、見終わってみるとあっという間。
ラストは続編へ続く、といった感じだったが、続編では『エイリアン』とはまた別の方向性を提示してくれるだろうと期待したい。そして今度こそ「人類の起源の謎」が解明されることも……




