『シャドウ・オブ・ウォー』(ゲーム)
けっこう酷評ですが、ゲーム自体はすごい好きなんですよね……
前作『シャドウ・オブ・モルドール』の続編がついに登場! というわけで、遅ればせながら買ってみたのだが……
前作を買った人は、今作はやる必要はないと、断言する。動画で十分。ストーリーをどうしても知りたい人は(多分いないと思うけど)、3章だけ見れば十分。理由は後述する。
そして前作をやってなくて、これからシリーズに手を付けたい方は、もういっそのことSOMの方を買うべきであると個人的には思う。
今作の評価のポイントは、「ネメシス・システムをどれだけ発展させられたか」に尽きるだろう。そのネメシス・システムだが、前作とほとんど変わっておらず、マップが増えただけで、やることは完全な作業なので、特に進化が感じられなかった。この時点で、続編としてプレイする価値はそれほどない。
いいところはもちろんあるが、それは全て前作にも存在した。そしてSOWは、最終的にSOMよりも色んなところで鬱陶しい作りになってしまっている。
まず、今作のコンセプトである“影の戦争”ということだが、これが映像作品なら間違いなく面白いと思うが、ゲームだと非常に鬱陶しくなってしまっている。特に操作性の悪さが致命的で、崖近くの上り下りの動作が、誤作動を頻発しやすく、また反応もトロい。そこにオークの集団が押し寄せてきてバトルになると、まるでプレイヤーの意志通りタリオンさんが動いてくれないのだ。
原因は色々ある。まずはボタンの反応速度。コントローラーの操作から、実際にキャラが動くまでに、少し時間がかかる。ボタンを押した瞬間に反応してくれない。ダークソウルシリーズなどを想像していただけるとすぐに分かると思う。しかし、場合によってはダクソより反応がトロい。
そして一番の理由が、一つのボタンに様々な機能を割り当て過ぎたこと。特に×ボタンと○ボタンは酷使され過ぎであろう。
×ボタン……軽く押す・ローリング回避、長く押す・ダッシュ、壁に向かって長押し・壁登り、敵に向かって軽く押す・敵飛び越え
○ボタン……軽く押す・パンチで凍らせる、長く押す・ドレイン(吸収)、崖際で押す・降りる
うん、やっぱり酷使され過ぎな気が……。SOMから同じなんだけど、ただ今作のSOWについては、とにかく敵味方入り乱れた乱戦が多い。そこであろうことにもタゲを取るのが敵味方の区別がないという、舐めているとしか思えないような仕様だから、敵を攻撃しようとしているのに、なぜか味方を殴りだすパワハラ・タリオンさんになってしまう。この「自分の思ったタゲでなかった」現象は、前作より圧倒的に増えた。SOMからそんなに弄ってるとは思えないから、単純にゲーム内での敵味方入り乱れた乱闘が増えたせいだと思う。そして、そんなことができないのなら、“戦争”に焦点を当てるのを止めればいいのに……
次の大いなる疑問が、この“戦争”である。この戦争がどこまで表現できているか、という点だ。
SOMの時は、「敵の軍勢を内部から崩壊させる」という点が、今までにない新機軸で斬新だった。ところが、SOWでは完全な「軍勢同士のぶつかり合い」を再現しようとしているが、なにぶんお粗末な調整に終わっている。
自軍のオークの柔らかさに比べて、敵のオークの固いこと……さらに砦を巡る攻防戦だが、ほとんどタリオンさん一人で東奔西走する羽目になる。
さらにこの砦の攻防戦で地味にウザいのが、敵の名乗りである。SOMの時は、小隊長の名乗りはけっこう好きだった。あまり長い名乗りはないし、中には面白いものもあった。今回もたまに面白い名乗りもあるのだが、全体的にセリフが長くなっているように感じた。そんな名乗りを3,4人くらい固まってされると鬱陶しいことこの上ない。さらに味方オークの死亡報告も、鬱陶しいことこの上ない。戦闘がそれで中断されたり、カメラワークが変になったりするから止めて欲しい。最悪なのが、名乗りが終わった瞬間に敵の攻撃を喰らうこと。「納得できないダメージ」をどれだけ減らすかは、アクションゲームの基本だと思うが、そこのところはダクソがどれだけ考えているのか、逆に悪い手本を見てよく分かったような気がする。
砦の攻防戦については、まだまだ不満がある。結局は(攻める側も守る側も)単調な作業に過ぎないということはもちろんだ。一番納得がいかないのは、攻める側で最後の本丸に乗り込んでいくときだ。敵の大将のところへ、なぜかタリオンさんが一騎打ちで入っていく。いやいや、今までの残存兵力叩きこんで、全員で殺しに行かなきゃダメでしょ……なぜか本丸では、敵の頭領はもちろん、無限に湧く護衛がいる。そんなに潤沢な兵士がいるなら、本丸に留めてないでさっさと攻防戦に出せよ! と言いたくなる。
ハッキリ言って、これでは何のためにフィールド上の小隊長たちをこまめに洗脳して敵軍団長を裏切りミッションで排除して、砦を丸裸にしたのか、意味が分からない。
少数の小隊長だけで殴り込んでもいいし、砦を入念に丸裸にしてから強大な戦力差で押しつぶしてもいいではないか。そこら辺の自由にできるように見せかけて、実は製作者側の「ここはこうしなさい」という強制がすごく納得できず、違和感がある。圧倒的戦力差があるのに、わざわざ単騎で本丸に乗り込むとか、アホらしい。それこそ、洗脳したオーク集団に全軍突入させ、タリオンさんは高みの見物を楽しむ、というプレイだってあっていいと思う。製作者側がそれをどうしても嫌というなら、もっと簡単に砦を落とせないように、何らかの工夫を凝らしてアイデアを考えるべきだろう。プレイヤーの努力を否定するというのは、一番やってはいけないことだ。
戦闘関係ができので、スキルや装備などについても述べていきたい。
まずスキルだが、目だったところでは「二段ジャンプ」、「一部必殺技に属性が付与」くらいか。あとはSOMとそう大して変わるところがない。そして一番の不満点は、スキルがツリー形式ではなく、切り替え方式になっていることだ。
確かに、切り替えるべきスキルもあるし、プレイスタイルによって発動して欲しくないスキルもある。それは分かるが、なるべく重なってもいい効果なら、重ねていくべきだと思う。それくらい強くても、多分普通に苦戦するレベルの難易度だから。
切り替え方式の一番の利点と欠点を体現しているのが、属性付与のスキルだろう。炎・毒・氷とあって、三種類あればいずれかは弱点を突くことができよう。しかし、戦いのたびに小隊長の弱点を確認し、画面を開いて弱点の属性に変更し……という作業はハッキリ言って全く楽しくないし、煩わしい。それなら、得意のQTEがあるんだからさ、必殺技の発動の際にQTEで柔軟に対応(例えば発動したときに追加で〇を押したら氷、△で炎、とか)できるようにすればいいんじゃないの?
そしてついでに言っておくと、この画面のUIも何か納得いかない。全体的にデザインはいいと思う。ただ、洋ゲー特有の文字の小ささが顕著だ。本当に目が疲れるゲーム。特に事典のようなものがあって、そこで登場キャラや色んな設定の解説を見ることができる。どれも力の入った文章量なのだが、正直言って字が小さいせいで到底読む気になれない。これは軍団編成場面でも同じで、レベル表示させても字が小さすぎてとてもじゃないが見えない。また、パッド押し込みでマップを呼び出して、そこから軍団編成画面に行くには、R2を長押ししないといけない謎な仕様……本当に長押ししないといけないのだが、一瞬で切り替わることは出来なかったのだろうか……ここら辺の微妙なこだわりなのか、何なのかよく分からないところで冗長な操作性が少しイライラする。
さて、装備やアイテム関係だが、何というか、こちらも色んな装備が増え、タリオンさんの見た目もバリエーションが出来たのはいいのだが……やってることが中途半端に終わっており、それならSOMみたいにスッパリ切り捨てた方が良かったかもしれない。そういう意味では、SOMは無駄のない、ちゃんと魅力を絞って魅せていたと思う。装備にはアップグレードチャレンジがあるが、ハッキリ言ってレベルの高い装備が出てきたら終わりのため、めんどくさいだけだ。明王装備だけはチャレンジでレベルが上がっていくが、そのチャレンジ内容が「レベル○○以上の△△族のオークを支配しろ」で、何族なんて見た目で分かる程のオークマニアでない限り、軍団画面でイチイチ確認しなければならず、そこまでしてチャレンジしたいかと言えば、別に答えはノーであろう。
追加効果のある宝石類も、急造した感じがぬぐえない。まだ前作のルーンの方が雰囲気が出ていた。宝石っていうのも、一体どういうことなのか……
さて、大体の不満は述べたが……今度はストーリー面になる。
ストーリーに入る前に、このゲームの全体的な構造について述べておきたい。
SOWは全部で4章仕立てになっている。一応、3章でSOWのストーリーは終わる。4章はいわゆるネトゲでいうエンドコンテンツになっている。4章は10のステージに分かれていて、最終的に20回の砦の防衛をしなければならない。ハッキリ言って単調な作業ゲーに過ぎない。それでも、まだストーリーが盛り上がったのなら良かった。
4章の直前の3章……ここのストーリーがあまりに悲劇的すぎた。以下、ネタバレになるので、見たくない人は絶対にスルー推奨。次の※印まで飛ばしてください。
最終的にタリオンとケリブリンボールは意見の違いから分かれてしまう。そしてケレブリンボールが立ち去って死人に戻るタリオンは、死の直前にそこら辺にあったナズグルの指輪を装備、何とナズグルとして復活する。
そして袂を分かったケレブリンボールだが、こっちはサウロンを吸収しようとして、逆に吸収されてしまう……
いや、何じゃそりゃ、ですわ。
確かに、途中でもケレブリンボールはSOMに比べてすごくエゲツないことを言ったりして、タリオンさんもちょっと引き気味だったが、まさかこんなことになるとは……
※はい、ネタバレ終了。
果たして、このような虚しい終わり方の後で、砦の攻防を20回もやりたいだろうか? 普通はならないだろう。
この4章のステージ5で、もはや完全にやる気をなくして挫折した。まあ、エンドコンテンツだから、気のすむ人だけやればいいんだけれども……ベストなのは、こんな楽しいこと、まだまだ20回もできるんだ! とプレイヤーが思えるようなゲームに、本来すべきだったのだ。それが、もうお腹いっぱいの状態に3章でしといて、さらに突っ込もうとするのを止めてもらいたい。しかも突っ込んでくるのは、マクドのハンバーガーのような同じ味(というとマクドに失礼か。マクドも最近はいろんな味出してるからなぁ……モス化しとるけど)の大量のジャンクフードなのだ。
メイン以外のサブキャラたちのストーリーも、正直そこまでよくはない。
DLCで補完するみたいだが、正直売れるのか、これ……ユーチューブでも色んな動画チャンネルを登録しているが、誰もやっている気配がないぞ……
最後に、これは大きな美点であるオークの個性について述べたい。
全オークが泣いたほどの、様々な個性あるオークたちの饗宴であり、競演でもある。「誰がタルクをぶっ殺せるか、競争だ!」と言わんばかりである。
また、SOMのレビューでも述べたが、SOMでは瀕死状態でHPマックスになるようなチート臭い特性があったりしたが、今回は激昂しても攻撃の威力と頻度が上がる程度で、そこまでのチートはなかった。ただし、これも新しいチートが出来た。戦旗を掲げると、周囲のオーク兵が激昂してすごい連続攻撃を繰り出してくることである。こうなると手がつけられなくなる。しかもそんな兵士が周囲にワラワラ湧いてくる……鬱陶しいことこの上なかった。あれなんだろう、意味が分からなかったな……
あと、オークのHPが増えたような気がする。その割に、タリオンさんのHPはすぐに減るのも納得いかない要素ではある。4割くらいあるHPを、一撃で0にされた時があった。しかも難易度イージーでそれって……ダークソウル並みの攻撃力と言っておこう。回復手段は無限にあると言えばあるので、駆使すればどうにかなるのだろうが、スキルは付け替え方式なので、乱戦の最中に付け替えるのも面倒くさい。
あとはオログという、3メートルくらいある巨大なオークの存在が追加された。これにより、オークたちの個性はさらに加速した。ただ、オログの攻撃は×ボタンで避けて、ときどき出る〇ボタンで反撃して凍らせる→背中に乗ってナイフでメッタ刺し、というワンパターンなQTEしかないので、一番攻略が楽だった。これは自分的には一番助かったが、逆に言えば個性とか関係ないので、そこら辺は少しどうだったのだろうか。もうちょっと何かあれば良かったのかもしれない。ていうか、オログは知能のない巨人、という設定にして、家畜に近い存在にしてしまうのが一番いいような気がするが……
あと、一番理不尽だと思ったのは、ワープして攻撃してくるオークである。あれを乱戦中に後ろからやられると、一撃でほぼ全部のHPを削られる。
というか、スタッフは1対1の戦いを想定してオークの強さを設定してないか? ダクソならそれでもいいが、乱戦する、という前提を考えてもらいたい。自分で作った「戦争」という要素を、自分たちが忘れてないか?
あと、オークが昇進したら装備が豪華になるっていう地味な特徴がSOMではあったのだけれど、今作ではほとんど衣装が変わった記憶がない。地味に前作以下になっている。
あと、洗脳したオークがときどき裏切るのだが、突然何の前触れもなくドンドン裏切るので、こっちはかなり面くらう。一番イラつくのは、裏切った上に「鉄の意志」という洗脳不可の特性がつくことだ。こうなるともうどうしようもない。しかも奇襲してくるからさあ大変。実際に敵小隊長に戦いを挑みにいったときに、裏切りが発生したことがある。敵小隊長+裏切者3人という、もはやお前ら打ち合わせ済みだろ、と言わんばかりの状況に、思わず苦笑いしながら逃走した。「三十六計逃げるに如かず」という言葉を実感できるゲームだが、それでも少しはどうにかならなかったのか。例えば、裏切り者を見せしめ処刑するミッションとかくらいはあっても良かったと思う。そのミッションを達成すると、裏切る確率が大幅に下がるとか。あと、鉄の意志があるなら鋼の忠誠もあってもいいよ。この辺もどうせやるなら忠誠度とか新しいステータスを作って、それを上げるようにプレイヤーを餌付けすべきだろう。
裏切りはスパイスになっていいのだが、あまりに突然かつイベントも少ないので、そこら辺を作り込んでくれたら、さらに良かったと思う。
それでも敵という点で言うなら、オークはまだ多少の欠点はあれど良かった。色んな個性が付加され、憎たらしい敵としての役割、存在感をかもし出していたから。
一番鬱陶しいのはナズグルだろうか。まず戦闘が楽しくない。根本的に乱戦になると悪い操作性がますます悪くなるから仕方ない。しかもナズグルとの戦闘はほとんどエルタリエルというNPCキャラとの共闘になるのだが、このエルタリエルがアホすぎてすぐダウン状態になるので、こいつの介護をしながら戦わなくてはならない。
そしてナズグルのQTEだらけの戦闘……ワープで逃げて、ワープで突進してくるナズグル……よく映画では倒せたなww こいつら、こんだけワープできたら通勤楽そうでいいな。
そして圧倒的な「楽しくない感」、「やらされている感」……
それも、戦闘システムが一対多をメインとするのか、一対一をメインとするのか、はっきりしないままどっちつかずになっているのが根本的な原因だと思った。少なくとも、スッキリした操作感と乱戦時のタゲなどをどうにかするだけで、ずい分快適な戦闘になると思う。その上でちゃんと楽しい戦闘の構築をしてくれれば助かったのだが……
オーク以外ではバルログなどもいたが、存在感薄すぎるよ……映画で出てたから出しました感があるけど……まあ、バルログを復活させようとしていた呪術師のオークとか、いいところはあるんだけど、力を入れるとこ、そこじゃないだろって言うね……
・結局、どうすればいいのか?
美点を述べるつもりが、またしても愚痴まみれになってしまった……ホント、いいところはあるんだよ、SOWは。ただ、それをスタッフが分かって進化・深化させようという気がないだけだと思う。まあ、やる気はあるのだろうが、社内での意見調整などで揉めたりしたのかもしれない。しかし、そんなことはプレイヤーに関係ないことだ。
まず操作性をスッキリさせるべきだ。そもそも、SOM時代から疑問だったけど、歩く速さと走る速さの差がおかしい。×を押さないと本当にゆっくり歩く。×を押すと早く走る。普通、何もせずにスティックを倒すと、小走り程度の適度な早さで移動すると思う。遅すぎず、早すぎず、色んな状況に適したスピードだ。どんなアクションゲームでも大体そうだと思う。この辺の操作が煩わしい。あとは上記で述べたような箇所だ。繰り返しになるので省く。
そして最大の疑問は、なぜマップを4つ(ミナス・ティリス除く)に分けたのか、ということ。「4つの砦を持つ、一つの広大なマップ」にすれば、砦の攻防というのが自然に表現できると思うのだが、どうだろうか。たとえば、一つ目の砦を落とす。すると、残った3つの砦の頭領たちが話し合い、「タルクの野郎、最近明王とか名乗って調子乗ってるし、砦を奪いやがって。ここは攻め返して取り戻そう」みたいな感じになって、砦防衛ミッションが発生する。防衛ミッションは時限式にしておいて、その時限の間にオークの強化やオーク集めなど、砦防衛の強化をしてもよいし、逆に襲撃側を襲って弱体化(襲撃部隊の駐屯地を破壊する等)させてもいい。
こういうのが流動的に発生、プレイヤーも臨機応変に対応→さらに流動的にいろんなイベントや攻防が発生、というのが、まさにネメシス・システムの根幹じゃなかったのか? どう考えてもこっちの方が自然だと思うが……
これに付随して、当然ながらオーク軍団もポケモンのようにいくらでも強化できるようにしておく。上記でも述べたような忠誠度の概念を導入。本編ではオークのレベルを上げるようなミッションなどが、少なかった。全部ネットにあったが、もっと本編を充実させて欲しい。本編が面白ければ、いくらでもネットでプレイしよう、という気にもなるし、本編とネットが補完し合って開発もお金儲けになって皆が得するではないか。
どうせオークが一番のウリのゲームなのだから、ダクソよろしく、プレイヤーがオークになって邪魔したり、助けたりできるようにすれば、すごい楽しいと思う。ガチャとかやるくらいなら、そういういいところをすぐにパクってマネしたほうがいい。
忠誠度が高くなれば、それに応じて主人公を助けたりするイベントの発生頻度も上昇。そうやってうまくミッションをこなすと、当然オークたちのレベルも自然と上がっていく。忠誠度やレベルに応じて、オークたちにももっといろんな特性を授けてもいいと思う。
たとえば、忠誠度が高くタリオンに心酔しているため、護衛にすると戦闘力アップ、とか。そういう護衛を率いて敵軍に進撃していく、というのがやはり男のロマンだと思うので、そこまで実現できれば素晴らしかった。護衛の規模もデカくなってくると、親衛隊長も任命でき、また明王の意匠をデザインした特別な武具なども装備させてやれる(特殊効果があってもいいが、無くても地味にうれしい)、などすると、オークゲーとして唯一無類になれたであろう。もっと言うと、オークの個性をまたしても「○○無効」という特性に頼り過ぎた。そういうのは「炎耐性○○%」とかにして、敵もこちらも利用できる成長要素にすべきだった。逆に「炎攻撃力+○○%」、「獣特攻+○○%」とかもできただろう。
しょうもない武器とか鎧を集めさすくらいなら、一番の特徴でありウリであるオークやネメシス・システムをもっと充実させて欲しい。今、さっと考えただけでこんだけ出てくるんだから、まだまだやろうと思えばやれるだろう。
あと、これも不満点からくるのだが、オークたちに指令を出してどこから攻めるとか、お前とお前はあそこのやぐらを攻撃しろ、とか命令ができればよかった。どうしても、無駄なところに集まっているものや、逆に全体的に広がって手薄になったりとかして、もどかしさを感じた。
敵の頭領との決戦も、当然こちらが手を下すこともできるが、圧倒的にこちらが優勢だと砦を放棄して逃げ出す、などの行動があっても良かったのではないか。そうやって逃げ出した頭領を、またフィールドで捕縛もとい洗脳してもいい。
他にオーク同士の絆も見逃せない。SOWでは、オークの間で義兄弟やライバル関係などがあるが、こういうのをもっと自軍のオークたちの間でも作り出せたら面白いのではないか。例えば、軍団長の部下にあるオークをつけていたとする。長い間、砦の攻防を生き延びてきた二人が、いつの間にか義兄弟になっていたりとか……もちろん、義兄弟ミッションなどもできればあると面白い。なんていうか、やろうとしてることはいいんだけど、その設定をもっと流動的に、プレイヤー側の努力に報いる形で発生させて欲しい。そういうのがあると、すごいオークたちにも愛着が湧く。現状のSOWでは、どうにもオークは使い捨ての駒に過ぎず、思い入れも持ちようがない。
さらに仲間にしたオークを使って資源の確保、砦の修復・改修の労働力にも使う。当然、完成までに敵の邪魔が入るので、これも撃退する。労働力を確保することで、完成までの時間を短くできる=襲われる可能性を低くできる。また、敵の勢力を削ぐことでそもそも襲撃をされなくするのも効果的……ってこれもはや「オークの野望」じゃねえかww
まあ、そのくらいやってくれ、ということだ。
また、ストーリーもテコ入れした方がいいと思う。タリオンの復讐も、もっと際立たせていいと思うし、強烈な個性を持った悪役も必要だ。さらにヒロインの不在もSOWの薄味に拍車をかけている。SOMではまだ女戦士とかいたのに……SOWはその辺も弱い。
最後の統括に入りたい。私はこのゲームを60時間以上プレイした。中には買い物に行って放置していた時間などもあるから、丸々プレイ時間でないにせよ、かなりの時間を費やしたことは確かだ。正直そこまでの価値はなかったし、後悔も少しあるが、全体的にはプレイできてよかったと思う。恐らく今作でシャドウ・オブ~~のシリーズは終わりだと思うが、このネメシス・システム、敵を洗脳して引き入れるという将棋のように革命的なゲームプレイは、是非とも何らかの形で引き継いでいってもらいたい。
できれば、もう映画の世界観にこだわらず、ゲーム独自のオリジナルのファンタジー
世界でやって欲しい。それなら『ロード・オブ・ザ・リング』という映画の引き立て役にならなくて済むし、ゲーム独自に好きにできるだろう。
爽快で残虐なアクションとか、そういうのは本当に面白い。ただ、そのポテンシャルを生かしきれないまま、こうやって幕を閉じることは残念だ。
だからこそ、まだネメシスは終わってない、次があると、大きく期待している。