『DOOM4』(ゲーム)
このゲームのやることはたった一つ。地獄から来たデーモンどもを地獄へ叩き落とすこと、ただそれだけです。
通称DOOM4と呼ばれている、2016年に発売されたゲーム。ジャンル的にはFPSになるのだろうか。初代DOOMをPS4で完全にリメイク、というより作り直した作品。
話の内容も「火星の基地にデーモンがやってきた、ぶちのめせ!」というもの。話だけ聞くと全く意味不明だが、実際にプレイしてみると、何となく一つの世界観を確立しているのが分かる。
そう、DOOMとは、うなる銃弾と血しぶきの舞う、プレイヤーが生み出す地獄の光景のことである。プレイヤーは必死こいて戦場を走り回りながら、敵デーモンを血祭りにあげてその戦場を地獄へと飾り立ててゆく。銃弾がデーモンのハラワタと脳漿をぶちまけるたび、プレイヤーの脳内に麻薬が生成され、全能なる神に近づいたような錯覚を得る。
そのあり様は、巷では「ゴア・ポルノ」と呼び称されているが、言いえて妙だ。そう、これは爆薬と血で描かれたポルノグラフィティ(ベタにアゲハ蝶が好きです)なのだ。
さて、DOOMのゲームについて軽く紹介しておこう。
まず、このゲームはマイナーだ。どれくらいマイナーかというと、近くのゲーム屋に買いに行った時のこと。DOOMが売っていたので、喜んで手に取ったのだが、なぜかそのままレジに持って行かずに、ブラブラと店内を散策していたのがダメだった。
相変わらず和ゲーはギャルゲーばっかだなぁ、いい加減にしろよ、とか内心呟いているところに、白人中年男性が偶然に来店してきた。
外人とか珍しいなぁ、とか思っていると、そのオタクと思しき見た目と体形をしている白人野郎は、DOOMを手に取ってレジに持って行った。
お、俺と同じの買うの? なんか、気が合いそうだなぁ、とか思ったのが全ての間違いだった。
その後、レジにDOOMのパッケージを持って行くと、店員から「今ので売り切れです」という悲痛な通告が……それから各地の店を巡り、三店目でようやく購入することができた。
外人なんだから、わざわざ日本に来て洋ゲー買うなよ! と心の中で叫んだが、その叫びはトランプの呟き(ツイート)にかき消されてしまって、届くことはないだろう。いつだって神は残酷で、僕たち働きアリの祈りなどそこに届くことはない。
だったらどうすればいい? そうだ、DOOMしろ。
ひたすら敵を銃と肉弾でぶちのめし、ストレスを発散させろ。
悪魔どもを殺し、その血肉の玉座によって、汝自身が神になるのだ……
とりあえず、長所から述べていきたい。
1.シンプルなゲーム性
動くものはすべて殺す、という狩猟本能に基づいたゲーム設計(特に先祖が狼など肉食獣の方にはお勧め)になっており、目標の物体も最後にはやっぱり破壊する。
物語に面倒くさい要素が一切なく、そもそも物語を理解する必要すらない。ただ、ここら辺は人によっては単調に映ってしまうかもしれない。
最近のゲームは映像作品化が進んで、プレイ時間よりムービー時間の方が長いものすらあるが、DOOMにそんな心配はご無用である。むしろ、NPCが喋り出すと「うるせぇ!」と言わんばかりに容赦なく破壊して終わらせる。
「お前らがやりたいのはムービー見ることじゃなくて、敵をぶっ殺すことだろ?」という製作者の問いかけが聞えてきそうだ。
アクションにおいてもシンプルさを突き詰めており、こういったゲームにつきものの銃のリロードすらないという単純さ。銃弾はなぜか銃の中に全部込められている。60発弾が入るショットガンってなんだよww だが、それでも銃弾が足りなくなる時があり、そんなときは
2.爽快な暴力とグロさ
チェーンソーでぶった切ると、なぜか敵が弾薬を大量に落とすというゲーム脳な世界観になっている。チェーンソーのモーションは、敵ごとにそれぞれ違っており、最初はとりあえず片っ端から試していくのも楽しい。
あと、体力回復のための、とどめモーションの「グローリー・キル」。体力が一定以下になったデーモンは、しばらくよろけるので、その間に近づいてR3ボタンを押すだけ。暴走したエヴァもひくぐらいの剛快かつ爽快かつ流麗な血みどろの格闘技がご覧いただける。ご褒美は回復薬。なぜ残虐に殺すと回復するかは分からないが、とりあえずプレイヤーのストレスは浄化されるので、実はそれなりにリアリティがあるのかもしれない。
この1と2の長所が組み合わさり、シンプルながら奥深く、しかもアドレナリン全開のゲームとなっている。あと、ゲーム展開が早いのもいいね。
そして最後の長所、
3.主人公が無口!
これは地味ながらに意外と得点がでかいのではないか? マリオから始まり、名作ゲームのキャラクターには“無口”という特徴がある。ドラクエもそう。
これは主人公=プレイヤー自身に置き換えるための仕掛けでもある。
そういえば、デッドスペースも初代はそうだった。ヘイローも無口である。
ただ、DOOMに関して言えば、無口というのがカッコいい。ただひたすらカッコいい。
プレイヤーとイコールとは言い難いものの、キャラとしての“威厳”がある。やはり、下手にしゃべってしまうと底が割れてしまう。それに、このDOOMは主人公が謎の人物、というのもさりげなく重要なポイントなので、そういう意味でも無口というのは正解だった。
あと、このご時世に日本語吹き替えというのも頑張っていると思うが、中の声優もどれもはまり役で、違和感なく、一癖もあるキャラを演じてくれていた。機械化した科学者も、AIの執事の声も、イメージ通りだ。
4.武骨な武器(と書いて相棒と読む)たち
これも外せない要素。基本的にはショットガンとロケットランチャーを使っていく。舞台はSFなれど、武器だけなぜか80年、90年代というミスマッチだが、それがむしろ馴染んでいるのは、DOOM力の高さがなせる力技だろう。銃弾の音も好きだ。
個人的にはガトリングガンがなかなか良かった。特に変形で銃身が3つに分裂、打ち出す弾が三倍プッシュになるのには、アカギも狂気の沙汰だと思うだろう。
もちろん、SFにちなんだ武器も出てくるが、どれも人権など考えていない雰囲気がプンプンしていて、素晴らしい。一番好きなのはガウスキャノン。何やら加速した粒子を打ち出すブラム的な武器のようで、すごい威力がある。溜め撃ちの爽快感は何者にも代えがたい。
どれも使っていて爽快で、それでいて個性もあるので、楽しい要素だった。
そして次は短所。短所はそれほどないし、ゲームを損なうほどでもなかったので、まとめて述べていきたい。
まずは単調、というところ。
長所の部分でもチラッと述べた通りである。ステージのロケーションが少ないのだ。
舞台は火星基地と、地獄、の二か所しかない。10以上あるステージは、ロケーションが被りまくっている。
しかし、よくよく考えてみればデッドスペースだってロケーションは宇宙船の中だけである。それでも全く単調などとは思わせなかったところを見ると、DOOMにはロケーションを利用するアイデアが足りなかったのではないだろうか。
例えば、火星と言ってもそこで人間が生活していく以上、食糧が必要である。どうあれ食糧ステーション、というのは必要となってくる。火星で食糧を栽培・培養しているなら、そういう施設があるし、地球から運んできているとしても、貯蔵庫や運搬港などはあるはずだ。その辺を描ければ、もっといろんな種類のデーモンが生まれたかもしれない。
デッドスペースでは重力発生装置や、医療室など、さまざまな役割の場所を、リアリティをもって描き出していた。デッドスペースみたいに、医療用に培養されている人間なんかがいて、そいつがデーモン化して培養槽を突き破って出てくる、とか演出があってもいいと思う。
あとは、ボスの少なさ。敵は割と豊富にあるのだが(それでも10以上あるステージを進むうちに若干飽きてくるが)、ボスと呼べるのはラスボス含め3体だけである。中ボスなんかがいてもよかったのでは? それか、ボスを途中で登場させ、存在感を増すか。
たとえば、トラムに乗って目的地に行くとき、行った先でお約束通りデーモンが出てくるのだが、途中でボスの襲撃があってもいいんじゃなかろうか。大人なしく駅で待っているなど、デーモンの名が廃るというもの。むしろトラムの前に現れ、電車と正面からぶつかり合うくらいの度胸が欲しいものだ。
あとはストーリーの薄さ。結局、どういうストーリーなのか……マッドサイエンティスト同士の喧嘩が、火星にデーモン到来の悲劇を生み出したようだが、特に中身がないのが残念。まあ、ストーリーなんてあってないようなものだから、そんなに気にする人いないだろうけど。
最後に、恐らく最大の短所。ロードが長い……
全体的にはすごく楽しめたので、続編をぜひ作って欲しい。同じテーマで行くと飽きるから、ここはゲームシステムだけを維持して、世界観を変える、というのはどうだろうか。例えばクトゥルフとか……邪神も旧支配者も、グローリーキル! とかすれば、ラブクラフトも苦笑するしかないだろう。
何より痛快なのは、日本のCEROなど笑い飛ばすかのような暴力表現の嵐。
やはりゲームは、こうでないといけない。