アンチャーテッド4:海賊王と最後の秘宝(ゲーム)
ついにやってきました、シリーズ最後にして最高傑作! 確かに映像はすごいぞ! これでPS3の開発環境(本作は言うまでもなく、PS4で発売されている)とか本気で言っているのか、隣の犬……
まず、アンチャ―テッドとはどういう意味だろうか。英検5級(小学生時に取った)の私が想像で答えてみよう。まず、チャートというのは海図という意味だと、どこかで聞いたことがある。「チャーテッド」で「地図に記されている」ということか。それに否定の接頭詞「アン」がついているので、「アンチャーテッド」で「地図に記されていない場所」、という意味になると、多分思う。
そう、このゲームは地図なき地図を求めて、世界中を舞台に飛び回り、なんとかヒントを集めてお宝をゲットする(ゲットしたのは初代アンチャだけだけど)という、もはや言わなくても分かると思うが、映画の『インディー・ジョーンズ』をゲーム化したようなゲームである。アンチャシリーズのウリも、ずっと「プレイする映画」で一貫している。
PS3が出てから、1~3が発売され、どれも発売されるたびに数々の賞を受賞するような素晴らしい出来である。ただ、最近はマンネリを気にしていたのと、『ラスト・オブ・アス』の成功で自信がついたのか、今作でシリーズを打ち切ることを発表、ゲーマーたちを驚愕させたと同時に、「アンチャの最後の集大成、やばいクオリティーになりそう……」という期待感もマックスとなった。
私も様々な情報を集めるうちに、「このアンチャ4はただ事ではない」というのがハッキリと、エンジン音を聞いただけでブルドーザーと分かるように、確実に理解できた。
PVを見ただけで、あれだけ興奮できたのは初めてである。
今のご時世、いわゆるPV詐欺も多いが、ノーティ―はその辺りもかなり誠実なつくりのPVとなっており、多少の“やらせ”プレイはあるものの、誠実にプレイヤーと向かい合っている姿勢は十分うかがえる。
先の『ウィッチャー3』も、ゲームの品質だけでなくCDプロジェクトの誠実な制作姿勢も称賛されたのと同様であろう。だからこそ、「アンチャーテッドシリーズ打ち切り」という、一歩間違えれば会社の運営すら危うくなるような決断も出てくるのだろう。普通のゲーム会社なら、人気シリーズを人気があるうちに打ち切るなんてことはしない。
これとは全く対照的なのがバイオシリーズだろうか。「バイオ6」のレビューで述べたのでここでは詳しく言わないが(言ったら罵倒ばかりになること確実)、気になる人は読み返してもらいたい。
ただ、アンチャ4をやるにあたり、一抹の不安があった。かつてアンチャ2だけちょっとプレイしたことがあるのだが(『ワンダ』のレビューにも少しそのことが書いてあるはず)、その時に敵の固さ、壁登りの作業感などの要因で、数時間で投げてしまったということである。
ただ、それも戦闘のPVを見て、多分大丈夫だろう、という結論に至った。今までのシリーズでは、基本的に“敵とドンパチ”することが多く、エイム力が求められた。しかし、今作アンチャ4では完全ステルスプレイが可能となっている。また、以前のシリーズでもステルスプレイは一部存在したが、一回でも見つかると、敵の正確な射撃にさらされ、執拗に追いかけ回されることになる。4では、一回見つかっても、隠れて逃げ回っていれば敵はこちらを見失い、またステルス・キルできる状態になるので、私のようなライトヘボゲーマーでも、多少グダグダになりながらも何とか進めることができた。
プレイした感覚では、どことなく『ラスト・オブ・アス』の影響がうかがえるような仕様が、各所に散見される気がした。
さて、プレイした感想としては、盛り上がることは盛り上がったが、やはり途中からワンパターンというか、飽きがくることは否めなかった。壁を登って→謎解き→敵集団がタイミングよく駆けつけてくる→戦闘→……の繰り返しであるので、どうしても先が読めてしまう。謎解きしたら、ほぼ必ずと言っていいほどその仕掛けは崩壊するし、その崩壊する中をネイトが「やべ、やべ、やべぇぇええ!!」と絶叫しながら走ったり落下したりするのもお約束。
少し否定的に書いたが、これが様式美になっていて、けっこう面白かったりする。物語も王道的ながらも、意外と凝っていて先が気になる作りになっている。そんなすごいどんでん返しがあるわけではないが、ストレートで好感の持てる作りになっている。
それはキャラクターも同様。すべて嫌味のない、いいオッサンたちである。特に途中でマダガスカル島に寄るのだが、ここの風景も相当な美しさだが、そこに舞い降りたのがジープに乗った3人のオッサン、というのも素晴らしい。完全に荒野での「オフロード・オッサンオフ会」の爆誕である。
このオフ会では、適当にジープを運転しながら周辺の遺跡を観光し、ついでに良さげなお宝は文化財保護のために失敬したりする。そして周囲の景色を楽しみながら写真を取ったりする。
ぶっちゃけ、このゲームで私が一番楽しんだのはフォトモードだったりする。このゲームのグラフィックはすごいが、それはリアリティだけでなく、美術的にも素晴らしいということである。
例えば、そこら辺の草むら。
普通なら、葉っぱなどは適当な描きこみで誤魔化すものだが、草一本一本、葉っぱ一枚一枚、石ころ一つ一つに至るまで、全て描写されている。これだけ膨大なグラを作るのも大変だが、それをPS4という限られたマシンスペックで表示し、動かしている、というのが、職人技を感じざるを得ない。
以前、ラスアスの制作インタビューみたいなのを、動画で見たことがある。そこでノーティー社員の言っていたことが印象的だった。
「ちょっとでもいいゲームを作ろうと、残業もいとわずに遅い時間まで残って仕事をしていた。それが報われて嬉しい」
というような内容だったと思う。それだけ、仕事に真摯に取り組んでいるのだろう。いや、彼らにとって、ゲームとは生活費を稼ぐための仕事である以上の意味があるのだろう。私はそこに芸術意識を感じるし、ノーティ―がそれを持ち続けている限り、いちプレイヤーとして、純粋に応援し続けたい。
グラついでに、モーションも凝っているのは当然である。
まず、細かい動作に至るまで、いくつものパターンが用意されている。ジープに飛び移るのですら、方向が違うといろんな方法で飛び移る。銃の拾うモーションもいくつもあるし、壁を登るときも、いくつもモーションがある。
ただ、これは指摘しておかなければならないが、たまに挙動不審な動きも見受けられる。気になる程度ではないし、限定的な状況で発生するに過ぎないが、たまに見ると気になった。特に、戦闘時の味方の挙動不審さは気になる。ここら辺のAIの強化などは、ゲーム性を含めて課題であると思っている。
むしろ、アンチャ4はゲームというより、動くCGアートブック、とでも考えた方が、このゲームに対して正確な表現であるかもしれない。それくらい、美術には凝っている。
ロケハンしたかどうか気になるところだが、ロケハンしただけではやはりだめで、美術には作者の美意識、というのが欠かせない。
私が個人的に好きなのは、主人公が新しいエリアに入ってくると、赤い鳥たちが驚いて飛び去るシーンだ。けっこう何回も使われているので、気付いた人も多いと思う。アンチャ4では、岩や木々、水の流れなど、自然の中での探索が多い。そのため、赤色は目立つ。こういうのもけっこう好きだね。
もちろん、自然描写だけでなく、人工物の描写も凝っている。普通の街並みも、遠景まで見渡せる。例えば、町でドンパチして逃げてきて、山の上でひと段落。ふと下を見ると、さっき戦ってきた町の風景がバッチリ映っている。こういうニクイ演出も各所に出てくる。きっと、そういう「お宝を求める心」がある人にとっては、このゲーム自体がある意味「お宝」なのだろうが、もっとゲームとしての楽しさや戦略性などを求める人は、このゲームを「壁登りゲー」と言うだろう。それは個人の見解やゲーム観だと思うので、アンチャ4の購入を検討している人は、あまり世間の絶賛に惑わされずに、冷静に考えてから選んでほしいと思う。
とにかく、そういう絶景に出会ったときに、ついついフォトモードを起動してしまう。このフォトモード自体もかなり凝った、いろんな機能があるフォトモードである。ムービーシーン以外は、360度、カメラ位置の変更可能、ある程度のズーム、パンも可能。被写界深度や明暗など、基本的な機能は一通りついてある。
だが、すごいのはフォトモードより、フォトモードを起動して写真を撮ると、どれもサマになっていてカッコいい、ということだ。それだけ全ての道中において、ちゃんとどこから見ても破たんが無いように、考えつくされていると言えよう。地味だがすげえ。おかげで、気分はまるでプロ写真家である。もうこのまま次回作は、荒野に住むオッサンたちをひたすらフォトモードで撮影するだけのゲームを出せばいいんじゃないかな……というか、アンチャ4のゲームの素晴らしい美術を、ただ通り過ぎるだけの数秒で味わうのは、あまりにもったいない。高級フランス料理を丸のみするかのごとく、もったいない。この美麗アートを、ゆっくり咀嚼して味わえるような、何かしらの外伝的ゲームを出してもいいのではないだろうか。製作費も回収できたのなら、使いまわしで安く作れるで!(こういう発想自体が、ノーティ―の最も嫌うところなんだろうが……)
まあ、クリア特典に、好きなチャプターを選んでプレイできるモード、アートギャラリーなどがくっついているので、それなりにじっくりしゃぶりつくすように遊べるようにもなっているはずである。
クリア特典も凝っていて面白い。無限弾薬などの定番もあるが、無重力とか、意味不明なのもある。
いろんな遊び心も入り混じったアンチャ4。お宝を求める、全ての冒険を忘れられない冒険者たちに。安定した生活から離れられない僕たちの、地図に記されていないフロンティア。
アンチャシリーズ、とりあえずお疲れさまでした、としか言いようがない。
そして、次回作に何が来るのか(恐らくラスト・オブ・アス2だというのが、今のところ有力な見方らしいが)、楽しみに待っている。