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『アワビさん』 『抱かれたい道場』:中川ホメオパシー(漫画)

 さて、今回はネット漫画である。ネット漫画と言っても、電子書籍というよりネットの漫画投稿サイトのような場所。

 色んな漫画が置いてあるが、『アワビさん』(http://yw.vipdoor.info/comic/yw339)を最初にレビューしようと決めていた。まず絵が上手い。ネットのアマチュア漫画だから、正直絵もストーリーもお察しな作品は多い。それは認めよう。ただ、たまにこのような完成度の高い作品も存在する。『アワビさん』は絵だけでなく、ネタの純度も高くて笑えるのがいい。

 作品の概要だが、もはや言わなくてもそれこそ察しがつくだろう。あの国民的漫画にしてアニメになって、作者が死んでからもさらに放送され続けた結果、もはや現世の生活を描いたアニメとは思えないクソアニメになったあの国民的作品の『サザエさん』に中指立ててリスペクトした、超絶悶絶四コマ旋風漫画だ。ジャンルとしてはコメディック・スピード・ゴアというのが正確なところか。

 最近の四コマ漫画は日常モノばかりで、あくびの出るようなゆるい作品が多いが、この四コマはそんな作品を超音速で吹っ飛ばすくらいのスピード感と躍動感に溢れている。

 主人公のアワビさんを中心に、魅力ある、キモかわいいからかわいいを引いて」二乗したようなキモいニグロとかマゾとかが出てきては毎回ダイナマイトで爆破されたり斬首されたり拳銃で撃たれたりする。これほどまでにテンポよく登場人物がゴミのように死んでいく漫画には出会ったことがない。スラムキングでももうちょっと時間かけて殺していたぞ! しかしこのスピードこそ、四コマの命だ。昨今の四コマにはユルユルした雰囲気ばかりで、四コマである必要性を感じなかった。まさに四コマの意義を問い直した、と言う意味でも、ネット漫画の一つの快挙だろう。

 あとはネットゆえにパロディがギリギリの線、というかもう国境を越えてしまっている感があるが、ここまで無茶ができるのも非公式のネット漫画ならではの醍醐味だろう。特に二巻のチャゲアスのパロディには笑った。まるでタイムマシンに乗ってきたかのような先見性も見られる。田代パロもちょっとあった。

 ちなみに、この作者のコンビは、『オモロコ』というサイトでも四コマを描いていた。それも面白いものばかりなので、どうか興味ある人はまとめて見てもらえると幸いだ。特にエマニエル変人シリーズが好きだ。アワビさんと同じく、死の衝動とスピード感と躍動感に溢れており、一瞬たりとも気を抜けない展開だ。オチが早すぎて、オチを読んでから実際に落ちるまでに数秒の時間差が生じるかもしれない。だが、この人の四コマはそれが面白い。料理で言うなら味ではなく喉越しと胃で味わうようなものか。ジャンが作った料理よりキワモノだ。

 さて、傑作の数々を生み出してきた中川ホメオパシーだが、最近商業デビューしたようで、商業初単行本が『抱かれたい道場』。期待して買ったのだが、少々の肩すかしを喰らった。どうしてもアワビさんと比べてしまう。そして比べてしまうと、スピード感のなさとネタの陳腐化に首を傾げざるを得ない。確かに絵のいい意味での絵の汚さは健在だし、下ネタも豊富だ。だが、何かが決定的に欠けていた。それはNOGUSOであったり、NAMAKUBIであったりする。とにかく、四コマで見せてくれたスピード感がやや鈍っていた。それでも普通の漫画に比べれば十分なスピードだが、それ以上にネタがどことなく手ぬるい。アワビさんが燃え盛るONARAだとすれば、『抱かれたい道場』は湿ったONARAだ。やはりホメオパシーは熱くて爆発しなければダメだ。

 話は少し変わるが、やはり表現の規制というものの余波がここに来ているではなかろうか。アワビ的表現をそのまま載せることに出版社側から自主規制のような形で圧力があったのかもしれない。普通の漫画ならそれでいい。だが、この漫画にそれをしてはダメだ。一体漫画の何を見ていたというのか。業界にとって悲劇としか言いようがない。

 とりあえず、この作者や作品に興味のある人は、すぐに最初に乗せたURLへ飛んでいくといい。香ばしいMAKIGUSOのようなホメオパシー漫画が拝めるだろう。


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