『デスティニー』:ゲーム
だって「5億ドルかかっている」とか「開発期間をかけた」とか言われたら、しかも作ってる会社があの『ヘイロー』のバンジーだったら期待しちゃうじゃん? それがここまで期待外れの凡作だったとは、予想外だった。当レビューの『これから期待するゲームたち』の中で、一番最初に取り上げたし、そこで「グラがいいだけの微妙ゲーになるかもしれない」というようなことを書いていたと思う。まさかその通りなるとは思ってなかったよ……
何がダメだったのだろうか、とかそういう問題ではなく、ハッキリ言ってこれを「全てを超える」だの何だのかんだの宣伝していたのは、完全に誇大広告。ビジュアル的にはマスエフェクト、ゲーム内容的にはボーダーランズに影響を受けたのは丸わかりだが、それらの作品を超えられていない。「全て」どころの話ではない。思いっきり旧世代のゲームだ。
ゲーム内容だが、本当にボーダーランズそのもので吹いた。最初に主人公を死から蘇らせるゴーストはクラップトラップだし、そもそものゲームシステム等、ボーダーランズである。グラはPS3版のせいもあって、綺麗だがまあ、これくらいか、という感じ。ただ、美術的な美しさはあり、見ているだけで癒される景色が広がる。
褒められるのはこれくらいか。あとは単調な銃を撃って同じような敵を撃ち殺していくだけのゲームです。ボダランには魅力的な武器があった。膨大な種類だけでなく、それぞれ炎や電撃、酸や爆発などの特殊効果があったし、武器自体の見た目もかなりこだわって作られていた。翻ってデスティニーの武器はどれも同じような見た目で、特殊効果も少ない。ショットガンだけどスコープ付きで遠くまで狙えたりとか、いろんな性能の銃があって面白かった。まさにハクスラを体現していると言っていい。
デスティニーにはそれがなかった。武器集めもアイテム集めも単調でしかない。もっとエッジの効いたカッコいい武器が出てこないとダメだ。長年考えてこれでは、10年どころか一年も持たないコンテンツにしかならないだろう。武器での不満はショットガンの弱さである。リコイルの激しさもさることながら、威力が弱すぎる。いや、敵が固すぎるのか……? 至近距離で全弾当てても全然HP減らねえ! こんな死に武器要らねえよ……ショットガンが弱いゲームはクソゲーです、これはクソゲー第一の法則です。
シューティング部分はよく出来ているが、何しろスキルも大したことないし、やることはひたすら狙って撃つだけ、なのですぐに飽きる。しかも場所が荒野ばかり。地球も荒野、月も荒野、荒野荒野荒野……そこで疑問に思うのだが、荒野で無限に湧いてくる「フォールン」と呼ばれる敵は、一体何が好きでこんな荒野に集まってくるのだろうか。資源でも採取しているのか、とも思ったが、そういうわけでもないようだ。また、ボーダーランズのように、現地でフォールンに抵抗する人間のゲリラなどもいない模様。ボーダーランズでは魅力的なNPCが面白かったのに、そういうキャラもいない。キャラもそうだが、ストーリーもかなり薄味、というかストーリー何もなくね? 最初は「とにかく敵と戦え!」でもいいかもしれないが、ゲーム内でフォールンとは一体どういう種族でどういう目的で人類を滅ぼそうとしているのか、などが徐々に明らかになっていくのが普通だと思うのだが、そういう気配は微塵も感じられなかった。ストーリーというより、設定だけ詰め込んだ感じ。ナレーションでも設定は語る。例えば人類の黄金時代と、その没落とか。じゃあゲーム中に人類の黄金時代を感じさせるようなものがあったか、というと何もない。ロシアの荒野とか、なんで舞台にしたのか……中二的と批判されるゆえんは、こういったストーリー不在の設定重視の姿勢からだろう。マスエフェクトも同じような批判はあるが、あれは設定にしてもかなり凝ったマニアックな設定で、設定そのものにSF心をくすぐるものがあった。SF版指輪物語としてもいいだろう。それにストーリーもちゃんとあった。
まあ、たとえば、である。人類の黄金期をちゃんとムービーにして見せる。その後、フォールンの襲撃を受けて崩壊する人類の黄金都市……やがて都市は廃墟になり、そこからカメラが引いて行って主人公の眠る荒野に移動する。そこからスタートすればもっとドラマチックになったと思うのだが。この時点で、「さっきの都市の廃墟に何かありそう。ゲームが進めばあそこに行けるようになるんだろうな」とか思わせることもできるだろうし、フォールンの侵略をちゃんと見せれば、いきなり「はい、戦ってね!」と言われるまでもなく、自発的に「このクソ害虫野郎どもがぁーー!」と銃を手に戦うことだろう。これがストーリーとゲームの融合、というものではないだろうか。普通ならこんなことやったら予算的に無理そうだが、5億ドルも開発資金をかけたのなら、それくらいしてもいいだろう。このゲーム最大の疑問は、5億ドルの開発費がどこにつかわれたか、である。そこまで開発費がかかっているようにはどうやっても見えない。
主人公はよくあるキャラメイキング。キャラメイクできる範囲が異常に狭い。これはネットでも散々叩かれているが、元々FPSは自分の顔が見えるわけではない。ただ、オンライン用のゲームなので、プレイヤーの中には見た目に拘りたい人がいるのも十分理解できる。ここで3種族が出てくるのだが、その癖に3種族のNPCとかがちゃんと書き分けられていない。3種族の由来は? 利害関係は? 3つの種族というのは人類と異星人と自立意志をもった機械種族だ。例えば、だ。彼らにはそれぞれ利害関係があっていがみ合ってる、とかすれば、もっと面白くなったのではないか? それぞれ特技のようなものがあればなおよい。例えば、機械種族は高度なオーバーテクノロジーを持っている、とかだ。いがみ合う種族を統合しながら、強大な敵に立ち向かっていく、というのはとても王道な展開だと思うし、普通にそれをやればいいと思うのだが、なぜそれをしないのか、疑問でしょうがない。結局、それが単調なミッション、単調な戦闘に繋がっていったのではないだろうか。
当たり前だが、これは王道であり、むしろここからどうオリジナルな展開やキャラクターを生み出せるか、がクリエイターの腕の見せ所だ。それが基本的な王道展開すらないがしろでは、薄味のゲーム通り越して無味無臭のゲームである。
まあ、それでもネットでの共闘が面白ければそこは評価できたかもしれない。だがそれもダメ……っっ!! フィールドで他のプレイヤーとすれ違うが、そこから共闘に発展することは特にない。それぞれが別の方向へ走り出す。意思疎通の手段が乏しいため、一緒に行動を共にするのがますます難しい。さらに偶然一緒になっても、ボス戦では強制一人プレイ。一応、パーティーなるものを組んでいれば複数人数で行けるらしいが、そのやり方が分からん! こういうネットゲームって、チュートリアル的なものでパーティーの組み方を教えたりするものだが、それも無し! FF14の方がまだまともにパーティー組めたぞ。ちなみにボス戦は孤独と敵による数の暴力との戦いを強いられる。ダクソより心折れそう。ていうか折れました。ここら辺がどうにか改善されればいいのだが、5億ドルかけてこんな基本的なことすらホッポリ出して発売する、その神経が全く理解できない。よく「アプデでよくなる」ということを言うが、アプデ以前の問題。さらにレベルキャップも20までと以上に低く、β版に毛の生えた程度の出来と容量でよくクソ高いフルプライスで発売できたもんだと別の意味で感心する。
・総評まとめ
ストーリーや設定はマスエフェクトの足元にも及ばず、ゲームとしてのボリュームも楽しさもNPCなどキャラクターの面白さもネットでの共闘もボーダーランズに及ばす、全てどころか大抵のゲームを下回る出来。ぶっちゃけこの二作買った方が余程面白いし、有意義な時間が過ごせるぞ!