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『ゴジラ』:映画

 久々に映画を見に行った。そう、映画館に足を運んで見に行ったのだ。これはもう、政治家が国民のために働くより珍しいことと言わざるを得ない。

 この少し前、『ノアの方舟』を見に行こうと近くの映画館に行ったが、夏休みシーズンということもあって、クソガキが害虫みたいに大量発生していた。その曲がりくねった害虫の行列を見ただけで嫌気が差して並ぶ気も失せたので、すぐに帰ってしまった。たかだか映画を見るためだけに、この害虫集団に混じって並ぶという苦行を行うなら、後でツタヤで借りた方がマシだ。

 というわけで要するに面倒くさいので映画館に足を運んだのに回れ右をしたのだが、がちお氏のお誘いもあって、映画館へ最新版『ゴジラ』を見に行くことにした。

 ただ、この映画を見に行く日に予想しないことが起こった。私がなぜか夏風邪をひき、咳と鼻水が止まらない状態になったのだ。

 まあ、別に映画くらいはいけるだろう、と思って行ったのだが……結果的に人の集まる映画館でさらに状況が悪化した。

 まあ、体調の話はどうでもいいので、今回のゴジラの話である。

 その前に、相変わらず上映時間のかなり前にがちお氏と合流を果たした。まあ、ちょうど昼くらいだったので昼食でも食うか、ということになり、私の希望でイタリアンにすることになった。だが、結果的にはこのイタリアンはまるでバタリアンでしかなかった。

 まあ、イタリアンにした理由が私の体調不良のせいで、ちょっとあっさりした食事をしたかったというのが大きい。これがバタリアンのような、IQの低いミーハーな主婦のひしめく店に足を運ばせる結果となった。店内は人工のツタなどで覆ってあり、いかにも地中海風でオシャレな雰囲気を醸し出しているのだが、いかんせん集まってくるのはバタリアンばかりである。これでは世紀末イタリアンにしかならない。

 とにかく、愚痴ばっかり言っていても仕方ない。がちおと私は料理を頼んだ。ついでにドリンクバーもつけた。早速ドリンクを取りに行く。がちおにコーラを頼まれたが、ドリンクの種類はオレンジジュース、リンゴジュース、紅茶の3種類しかなかった。バタリアンはコーラなど要らないのだろう。私は無難にオレンジジュース二杯を持って帰った。自分自身の喉に優しいし、風邪のときにはビタミンCが欠かせない。オレンジにはビタミンが豊富とあらば、それを選択するのはいたしかないだろう。

 ちなみにがちお氏は後にこの三種類を適当にブレンドして作ったオリジナル飲料を飲んでいた。何と言う勇気だろう。本人曰く「けっこういける」だそうだが、私には真似する気にはならなかった。風邪を引いてなくても無理っぽい。

 さて、飲み物は確保したが、問題の料理である。これがまたくるのが遅い。田舎の無人駅で電車を待っているより長い! 一体いつまで待たせるつもりなのか。しかし本当の理不尽はこれからで、やってきたのはどう見ても一人前分の前菜だった。なんか適当に頼んだコース料理だったが、これがまた二人用と銘打っておきながら実は一人前分の料理でしかなく、つまり店側の言いたいことは「これアベックとかが分け合うコース料理だし!」ということだろうか。この店、あとでエクスペンタブルズに頼んで爆破してもらおう。そうしよう。

 まあ、そんな感じでいかにもチョイスをミスってしまった感はあるが、適当に映画などの話をして微妙に盛り上がっていた。このときに、たまたまバットマンゲームの新作『バットマン・アーカム・ナイト』を思い出したので、そこで感じた疑問をバットマン専門家のがちおにぶつけてみた。私が疑問に思ったのは、トレーラーのバットモービルの描写である。バットモービルがどう考えても大砲を撃って、敵戦車を爆殺していた。これはバットマンの不殺の信条に反するのではないか、という疑問だった。がちお氏の見解によると「あれは胡椒玉」ということで、バットマンの不殺の信条には全く反しないことが判明、これからバンバン、ギャングどもを胡椒玉で血祭りにあげることにしよう。

 さて、長い時間が経ったが、ようやく映画館へ。がちおはゴジラの設定資料集的なのを買っていた。後で思うと私も買っておけば良かった。今から後悔している。

 そうやって始まったゴジラの映画。だが、ここで一つ説明しておかなければなるまい。私はゴジラについてほとんど何も知らない。特に初代ゴジラなんて一秒も見てないし、他のゴジラ作品にしても記憶には全くない。ひょっとしたら子供の頃にテレビで何かしら見たかもしれないが、それも記憶にない。一番記憶にあるのは、ゴジラファンから最も悪名高い通称『エメゴジ』だけ。しかもこのエメゴジに対して、実はけっこういい映画だったと評価している。確かに批判されている内容はもっともだが、ゴジラを生物としてみた場合、やはり現代兵器で倒せなくてはおかしいと思う。もちろん、怪獣のゴジラとしては失格だろうが、エメゴジはもう怪獣というのを忘れてモンスターとして見るしかないのではないか。それより何より、当時からすでに時代遅れだった着ぐるみ感丸出しのあのゴジラよりも、CGで表現された生物的なエセゴジラの方が、私にとって遥かにリアリティも迫力もあった。「怪獣としてどうたらこうたら」と言っているが、その劣化ゴジラにすら迫力やリアリティで負けている邦画ゴジラの方が余程偽物ではないだろうか。

 さて、今回の映画が始まって、どんなゴジラの描写になっているか楽しみにしながら見ていたのだが……

 まずゴジラ出てくるまでけっこう長い! 最初の原発破壊のところで、ついにゴジラ登場か? と思わせておいて実はムートーでした、というね……しかし、ここはいい意味での肩すかしだと思う。そういきなり怪獣王が出てくるものではない。主役は遅れて登場する、エンターテイメントの基本ではないか。だから悟空も、ナッパがZ戦士を次々殺すのを待ってから登場したではないか。ゴジラもそういう基本を忠実に踏襲しようとしたに違いない――この頃はそう思ってました、ええ。

 ここから先はずっとムートームートームートーで「いつまでムートーなんだよ!」と思ったほどである。ていうかこれムートー映画じゃん……

 ゴジラが最初に出てくるのは、ハワイの上陸シーン。これも全身は見せない。一部だけ見せる。しかしここの見せ方は上手い。尻尾の一部だけ見せるのだが、ビルにいる兵士たちとの対比でゴジラの巨大感が余すところなく表現されている。ただ残念だったのは、このシーンが途中で切られてテレビでのニュース映像になってしまうことである。もうちょっと「ゴジラという自然災害」を描写しても良かったのではないか。後の展開もあるのだが、このせいで結局はゴジラが人類の救世主みたいに見えてしまう。あくまでゴジラはゴジラの都合でムートーを倒したのであり、まあ映画の内容もそうなっていたのだが、どことなくご都合主義的な面が残ったままになったことは否めない。

 あと、ムートーの目的が「子孫を残すこと」であり、見ていて「あれ、ムートーかわいそうじゃね?」と思ったりした。主人公が最後にムートーの卵を卵焼きにするのだが、ムートーの悲痛さと相まって主人公が悪役にしか見えなかった。もちろん、主人公は人類を守るために立派な行動をしたのであり、称賛されるべきなのだが……なんとなく映画の描き方もムートーよりだったような気がするぞ。やはりムートーは被害者でもあるんや……

 今作の最大の特徴は、とにかく人間が活躍しないところ。まあ、怪獣映画で人間など祈るだけなのだが、それでも何らかの活躍はあるもの。今作はそれすらない。ただただ人間は逃げ惑うだけ。主人公が子供を助けるシーンも、割とあっさりしていてどうでもよさげな感じ。実際あのクソガキがどうなったのか、その後の行方は杳として知れない。もしかしたらあの後の戦闘で死んだのかもしれない。

 一応、人間も反攻作戦を考えるものの、結局は核兵器の使用ということになる。しかしムートーのエサは要するに放射性物質なのである。こんな生物に核使うとかどういうこっちゃ抹茶に紅茶。案の定作戦自体もグダグダ、核も怪獣には全くダメージなしで、むしろ核のせいで街が完全に壊滅したから、ただの余計な手間だったのでは? これほど核が無能、いや、足手まといに描かれている映画を知らない(ただし反核映画を除く)。

 主人公の活躍も、結局はムートーの卵を焼いただけに終始。むしろこいつを主人公と呼ぶことに抵抗すら感じる。親父の方がまだ主人公っぽいぞ!

 あと、関係ないことだが、兵士の中にスパルタカスS3のティベリウス役の人っぽいのがいたんだけど、あれって同じ役者なんだろうか? 誰か知ってる人、教えてください。

 怪獣プロレスは純粋に面白かった。「どうせCGだルォォォ?」と言われればそれまでだが、ぶっちゃけ此処までの迫力だともはや邦画でゴジラとか作れなくなりそう。エメゴジでただの巨大トカゲだったゴジラだが、今回のはまさしく「GOD―ZILLA」、つまり「神のジラ」ということになる。どういうことか書いている私にもサッパリ分からないが、神ということだからかなり出世したことは確かだ。実際に神の如き強さであった。ただ、ダメージ表現がけっこういい加減だったのはちょっと残念だ。まあ、神なので人間如きの現代兵器では傷つかないのは分かる。でもムートー二体のかなり痛そうな攻撃にも結局血一滴すら流さないのはどうだろうか。もうちょっと負けそうなムードから必殺技を出してほしかった。

 そしてゴジラの必殺技、火炎放射である。日本ではこの技名が放射能を連想させるから、という理由でゴジラが自主規制されるという、とんでもない噂を聞いたことがある。サザンの『ツナミ』ですら規制されたから、あながち嘘でもあるまい。こういうやつらこそゴジラに踏みつぶされて死ぬべきだ。そもそもゴジラ自体、元々は核や放射能をモチーフにした怪獣ではないか。そりゃ放射能を連想させるだろうよ。

 今作の放射火炎だが、普通に青い火炎放射でした、ええ。威力的にも弱くはないけど……というようなかなり微妙性能。初代デッドスペースのフレイムスロワーを思い出す。だったらかなり弱いじゃねえか、と思うかもしれないが、あの核兵器でも死なない化け物にちょっとでもダメージを与えるのだから、人類の兵器の基準からしたら強いに決まっているだろ! それに通称ゲロ袋、ムートーの口に直接火炎放射を撃ちこむのだが、ここの描写で威力的には強そうに見える。ただ、もっと派手に建物とか破壊するのが火炎放射の醍醐味だと思うので、次回作ではもっと威力上げて欲しい。幸い、ゴジラのエネルギー源である放射能とか核とか一杯摂取したし、次ではパワーアップしているはず。それかインテル入れるんだ。

 総評として全体的に満足できる映画だった。何より怪獣映画の良さをよく理解して、それを潰さないようにしているのがよく分かった。今、ハリウッドに正式にゴジラが降臨したのだ。続編も決まっているそうだが、是非ともこの路線で行って欲しい。ただし、次回作はもっとゴジラの出番を増やしてほしい。さすがにこれは引っ張りすぎだ。それと、人間は同じように無能でお願いします。


補足……小林よしのり氏も今回のギャレゴジを見たらしい。全体的に好意的な評価で、漫画家らしい視点からのレビューだった。ただ一つ気になったのが、「アメリカ人がゴジラは自然の脅威の象徴と言うことを理解してくれたということが嬉しい」と言っているが、自然災害映画とかハリウッドでときどきやっているし、むしろアメリカ人の方が自然の脅威に対して理解と言うか、興味があるように思うぞ。「欧米人=自然を科学でねじ伏せられると思っている」という見方自体、ちょっと古いのでは? むしろ日本人こそ自然は友達、みたいに思ってそうだ。日本でもどんどん自然がレジャー感覚になっているが、毎年夏になると川でDQN流しが行われ、それがニュースになるのだから、やはり自然は人間の友人でも何でもないのだ。スズメバチに追いかけられてもまだ「自然は偉大だ」と言えるのだろうか。ゴキブリは殺しても、殺虫剤は手放さない。そんな人類に自然がどうこう言う資格はあるのだろうか。自然との調和なんて、それこそ自然を人間に都合のいいようにしか見てない人間の言うことだと思うぞ。

 あと、反核とかやたらとイデオロギー的な見方をこの映画に対して行う人もいるが、たかが怪獣映画でそこまで穿った見方をするのは、ただ単に映画にイチャモンつけてるだけだと思うぞ。反核という見方もできるし、実際にその通りだが、やっぱり根本は見て楽しむ映画になっている。小林よしのりも「原発推進派はこのことが分かってない」なんて言うが、映画に政治の話を持ち込むんじゃない! 政治は2ちゃんでやってくれ!


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