記憶_追憶
「此処は…きっと蜜実のいた世界とはまったく違う世界です…。」
イヴェーリオは悲しく微笑んだ。
蜜実はその笑みで自分は元の世界、麻子や他の友達がいる世界にもう帰れないのだろうと悟った。
「そ…んな。」
蜜実は事態が飲み込めなく茫然としている。
「此処には蜜実がいた国はありません。あと…残念ながら人間は居ません…。」
「へ?」
あまりの訳のわからなさに蜜実は素っ頓狂な声を上げた。
「動物しか居ないって事??」
「いえ、この世界にいるのは大半が魔法使いや魔女、妖精や精霊、それと獣、魔獣、半獣です。」
「じ‥っじゃああたしは何で‥?!!?」
「それはいずれ判るでしょう。誰か来る、私は人に姿を見られてはいけない存在。それでは蜜実、またいつか会いましょう。」
答えになっていない答えを告げると、大きな一角獣は宙を蹴り何処かへ消えていった。
「あたしは一体どうすればいいのよう〜ι(泣」
あーもう!等と言いながら蜜実は制服のまましゃがみこみ、湖を眺めた。
視線を自分の手をついている所に向けると、黒薔薇の指輪が無くなっている事に気付く。
「っあ!!!何処何処何処何処何処?!!?」
蜜実は辺りを見回すが見つからない。
「ねぇ…本当に…あれはひぃおばぁちゃんの…」
蜜実は這いつくばり指輪を探す。
制服が汚れようが気にしない。
「……あった!!!!」
指輪は少しピンク色の水に浸かる程度の湖の浅いところに落ちていた。
“ちゃぽ…”
「よかった‥ぁ…。」
蜜実はピンク色の水に恐る恐る手を浸けて指輪を取った。
“とんとんっ”
誰かに肩を叩かれる。
「ほぇ…誰…?」
振り返った蜜実の目に入ってきたのは、青年だった。
端正な整った顔、色白まではいかないが透き通った肌、すらりと伸びたシルエット、蜜実と同じ様な闇をまじえた黒髪、女でもあまりいない程の長い睫毛。
…何から何までもが美しかった。
けれど蜜実の瞳はある一点で止まった。
――――――ヒキコマレル
血 の様 な
深紅 の瞳 。
青年が口を開いた。
「…きみ、貴方は誰?」
怪訝な顔を笑顔に変えた。
「あたし?…あたし‥は‥蜜実。吉畑 蜜実。」
蜜実は青年の美しさに放心気味だった。
「貴方は誰?」
青年はニコリと笑って言った。
「僕は咲人。」
青年は未だ指輪をとる為に座ったままだった蜜実に手を差し出した。
「[行こう]?」
その時、青年が言い放った瞬間蜜実の中に映像が流れ込んできた。
『だって…!!!あたしは‥?!?!』
『君は だ。』
『ちが…う…。あたしは…だって…あの人の…』
『行こう。
僕の 。』
蜜実は涙を流しながら意識を失った。
青年は倒れた蜜実をただジッと見つめて言った。
「 。」
この『 。』が多くてごめんなさいι この空白はいずれ物語中で証されるので。笑