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僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です

数は嘘をつかない〜大宰相ホーネント、虚報を操り誤算を裁く〜


「今年の収穫量は・・・」


神聖ゴールド聖教国の宰相府。


挿絵(By みてみん)


多くの文官が大宰相様の指示のもと動いている。


魔王討伐で危機は去ったが、まだまだ問題が多く、民の不安を拭えない。


国の管理としては、まず食料が大事だ。


そして人々の安全を脅かす魔物討伐、この2つを至上命題として、今宰相府は動いている。


私はその文官の1人で、大宰相様に比較的近い位置にあるので、いつも

その姿を拝見する事は許されているのだ。


魔王討伐のために国の制度を組織化していく中で、国全体を大宰相様を中心とする中央集権化することに成功した。


これも大宰相様の功績と言えるだろう。


そして各地から食料、魔石、医療品等必要物資が続々と上がってくる。


これらを計算し再分配するのも我々の役目と言うわけだ。


「北方で疫病が流行った!第4文官室の者はすぐさま、考えられる被害予想と必要な物資を計算し輸送部隊を編成せよ。その輸送部隊にかかる食料の分も、すべてな」


災害はどうしようもない。


大宰相様は冷静に指示を出される。


それに並行して各地で勃発する。


魔物の大発生に対処しないといけない。


これらは聖教六武威様たちの出番である。


そうは言っても食べずに生きていけるわけではないので、やはり食料や出るなど必要な物資の計算が必要になってくるのだ。


「ふうう〜。やっと休憩できた。もう2日も帰ってないよ」


「俺なんて3日徹夜だぜ」


「泣き事言うなよ。大宰相様なんかいつ休まれてるのか.食事すらされてるのか?ずっと動き詰めだぞ」


たまの休み時間で、こんな会話しか交わされない。


こんな日々が数ヶ月続き、ようやく落ち着きを取り戻したそんな時、事件が起きたのだ。


公爵家が反乱を起こしたと言う報告が伝令兵よりもたらされた。


一瞬、宰相府は沈黙した。


公爵家。


言わずと知れた国の重鎮であり、広大な領土をもち豊富な物資を保持している。


抱えている兵士も最大規模である。


以前から宰相府の方針に異議を唱えていたが、不満が溜まったのかついに反乱を起こしたのだ。


公爵の家臣たちは、魔王討伐にも功績を挙げたつぶ揃いの名将が揃っていた。


六武威様たちは、ちょうど大規模な魔物の発生を討伐のために空けていたので、その隙を狙ったものと思われる。


完全に計画的な反乱だ。


どうするのだろう。


今国に残っているのは、2軍的な存在の将軍しかいない。


私たちが不安に思っていると、大宰相様は極めて冷静に指示を出された。


「動かす兵士はそうですね・・・・今国に残っている予備兵で充分です。すぐさまお触れを出しなさい」


予備兵ってあれか?


魔物たちにやられて動けなくなったり、年齢のため兵士として充分な動きができないから待機させていた兵士のことか?


そんな兵士を動かすだなんてだ大宰相様は何を考えているんだ。


もしや大宰相様は戦争をご存知ないのでは?


経験もおありでない様子だし。


と、失礼ながら私はそこまで考えていた。


しかし、戦争や戦略、そして兵站の重要性を知らなかったのは、私たち宰相府の方だった。


大宰相様の指示は的確だったが、首をかしげるようなものばかりだった。


数は4万の兵を動員するが、質は低いと言わざるを得ない。


ただ、食料は十分にある。


しかし兵士が弱くては負けてしまうのではという疑問が残った。


さらに不可解な指示が飛ぶ。


公爵領に向けて事実ではない偽の情報を次々と放ったのだ。


曰く、河川が反乱を起こして橋が使えなくなった。


曰く、魔物が大量発生して主要な道路が使えなくなった等である。


一体これがどう反乱鎮圧につながるのかわからなかった。


文官の一部の者が大宰相様とともに従軍することになった。


曰く、「この戦いを制するには、君たちの計算能力が必要だ」という。


計算でどう、反乱鎮圧が可能になるのかさっぱりわからないが、頼りにされることは嬉しいものだ。


私はそう考えながら、従軍をした。


ところが、大宰相様の率いる軍はさらに不可解な行動を極めたのだ。


大宰相様は率いる軍を、公爵領に向けてまっすぐ進むルートを通らず遠回りをするルートを選んだ。


情報では公爵軍は最初に1番大きな要塞を攻めようとしているのだが、そこへ救援に向かわずに、あえて遠回りをし、山を越えて、公爵領の領都に直接向かおうとしているらしい。


なるほど、直接対決をさけ、相手の弱点である領都をつこうというわけか。


それなら納得だ。敵はさぞや驚くだろう。


大宰相様の戦略が明確になれば私たち文官がすることははっきりしてくる。


4万の兵を、そのルート上で飢えさせないようにするための兵糧の計算をすればいい。


その計算は、私たち、宰相府の者が受け負っている。


そして、驚くべきことに大宰相様は、公爵軍の動きをリアルタイムで入手していた。


神聖ゴールド聖教国の全土に、大宰相様が敷き詰めた諜報網が張り巡らされている。


それによれば、公爵軍はこちらの軍の意図に気づいたのか、慌てて軍を引きかえそうとしていた。


ところが偽の情報によって大回りをさせられていたのだ。


本来なら通れるはずの橋が偽の情報で通れないと勘違いしたり、だ。


なるほど。こうやって相手の軍を疲れさせようと言う策略だったのか。


私は感心して話を聞いていた。


ところが、それが狙いではなかったのだ。


大宰相様の軍が出発して、10日余り。


公爵軍はさらに日数を経過して、公爵領の近くの平原へ向かっていた。


私は、平原近くにまでくると、不安が増大した。


相手の軍を疲れさせるのはいいが、こちらは数は多くても兵士としての質は使い物にならないぐらい低いのだ。


大宰相様はそのことをどうお考えなのだろう。


まさか、文官である私も槍をもって戦わないといけないのだろうか。


たしかに私には少し獣人族の血が流れているので戦えないことも無いが・・・・


私はずっとそう心配していたが、さらにあり得ないことが起きたのだ。


大宰相様は、4万の軍を5つに分け、それぞれに的確な指示を与え、軍を自由自在に操った。


「西側ルートの軍五千は3日で駆け抜けよ。南の谷側ルート三千は2日だ。東側の川沿いルートは・・・・・」


「私の指示通り、目的地へ時間までにたどり着くのだ、そうすれば必ず勝つ!」


大宰相様のその言葉通り、駆け抜けた先の砦に、我が軍が姿を見せただけで相手は大いに動揺した。


公爵領に点在するいくつもの砦は、偽の情報に踊らされ次々と降伏していくのである。


そんななかでも、「なに?このルートはどうしても5日かかるのか。ふうむ。確か、与えていた食糧は4日分だったな」



他の文官が「それぐらい構わないでしょう。強引にいかせましょう」


という意見を無視して大宰相様は別ルートを検討するのだ。


決して兵士に無理強いをしない。


進軍にかかる日数と、食料の数を考慮して戦略を決めていく。



最終的に公爵領都にたどり着いたときには、既に反乱軍が全滅したと言う偽の情報でパニック状態だった。


大宰相様の軍が公爵領は、軍がたどり着く前にに降伏した。


つまり、大宰相様は戦わずして、軍の数と偽の情報だけで勝利を治めたといえる。


ちなみに、3万の反乱軍の兵士がどうなったか。その顛末を述べておこう。


公爵率いる反乱軍3万の軍は、思いもよらぬ遠回りのルートを歩かされたため、用意していた食料がなくなってしまった。


その結果、軍の規律は緩み、兵たちは略奪に走り、暴動が起きたり、内乱が起きたりしてしまい、3万の兵は消えてしまったと言う。


反乱軍の大将である公爵もその時に殺されてしまった。


大宰相様はその後、


「公爵領の収穫量、備蓄数、そして3万の兵士が軍事行動をとるに必要な日数、これらを計算すればどれほどの食糧が必要かわかる。それをいかに減らしていくかが肝要だったのだ」


と静かに語られた。


大宰相様の指示を間近で聞いていた私としては、このたびの戦いについて、まるで兵士をチェスの駒を動かすようであった。


自在に軍をあやつり、精強を誇る公爵軍の兵士と優秀な指揮官を相手に一兵も傷つけることなく、気付けば勝っていた。そんな感想である。


さらには、六武威を1人も使わずに、だ。


こんな戦略があるのかと後で報告を聞いた大臣以下政府の人間は感嘆していたと言う。


最後に大宰相様はこうおっしゃられた。


「今度の戦いを喜劇としたら、演出が私で相手役は公爵。そして舞台を演じ切ったのは、あなたたち宰相府の文官よ」


私は戦争を1つの劇に例えた宰相様に感激すると同時に、私たち文官がこの反乱鎮圧の戦争に貢献したと言う事実に打ち震えたのだ。





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