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第48話「終局へ」

光のマナは、アリシアが自身の魔力を分け与えることで、他者にも纏わせることができる。

だがそれは、彼女が後方にいる間に限られた、あくまで補助的な力だった。


アリシアが前線へと戻ったことで、その役目を終えた光は、

セリアとリッタの身体から、静かに――まるで名残を残すこともなく消えていく。


それでも二人は、再びアリシア一人にすべてを任せるつもりはなかった。


彼岸の臨界。

闇のマナを必要以上に全身へ纏いきった、死神の暴走状態。

その性質を、二人はすでに理解している。


彼岸の臨界にある死神には、直接的な物理攻撃は通じない。

剣も拳も、触れる直前で止まり、攻撃に込められた質量と力だけが吸い取られる。

そして吸収された力は、逆に死神自身の力として還元されてしまう。


一般的な魔法攻撃も同様だ。

放たれた魔力は闇に呑み込まれ、抗うことなく、その糧とされる。


しかし――完全無欠というわけではない。

 魔法によらない、自然由来の間接的な物理現象だけは例外だった。


 リッタの拳で穿つ空圧エア・バーストは、その典型だ。

 拳で空気そのものを殴り、その反動によって生じた風圧で相手を打つ技。

 生み出された風は魔法ではなく、純粋な物理現象であるがゆえに、死神にも通じる。

 地面を砕き、飛び散った破片を投擲する攻撃も、同じ理屈だった。


 そして、もう一つの性質。

 闇とは対極にある光のマナを纏えば、物理攻撃も魔法攻撃も、死神に直接ダメージを与えることが出来る。

 だがその代わり、受けたダメージに応じて死神の力はさらに増幅され、負った傷も闇の魔力によって即座に修復されてしまう。


 もっとも、それも無限ではない。

 回復には体力を消費する。

 体力が尽きれば、闇の魔力を制御出来ず自滅するか、あるいは普通に死を迎える。


 セリアとリッタが選んだのは、その性質を逆手に取る道だった。

 あえて攻撃を重ね、力を与える代わりに体力を削り続ける。


 強化された死神に先に屠られるか。

 それとも、回復の代償によって体力を使い果たした死神が先に倒れるか。


 これは、互いの限界を賭けた消耗戦。

 逃げ場のない、命を削る選択だった。


「ふっ……ふっふっふっ……」


 喉の奥で絡むような笑い声が、闇の中に滲んだ。


「そうだね。確かに――体力の限界は、僕自身ですら知らない」


 愉しむように、死神は肩を揺らす。


「それでも……やれる?」


 細められたその瞳が、二人を射抜いた。


「君たちに――」


「セリア、リッタ……!」


 いつの間にか二人の後ろに来ていたアリシアは息を整える間もなく、二人を見据えた。


「もう少し……もう少しだけ」

「三人で――死神の体力を削りたい!」


 その声には、焦りよりも確かな覚悟が宿っていた。


「……うん」


 短く頷いたリッタは、視線を逸らさず続けた。


「でも、もし死神の体力が予想以上だったら……」

「その時は、僕たちの負けだ」


 張り詰めた沈黙が、一瞬だけ落ちる。


「あー!」

 セリアは肩をすくめて、苦笑混じりに言った。


「リッタはまた、すぐそういうこと言って」


しかし次の瞬間、死神が体勢を立て直した。


そのわずかな変化を、アリシアは見逃さない。

「来るよ、二人とも」

そう告げながら二人の肩に触れると、一度は消えていた光のマナが、再び彼女たちの身体を包み込んだ。


驚く暇はなかった。

アリシアの言葉通り、死神が踏み込んでくる。


次の瞬間、リッタが地を蹴った。


光のマナを纏ったリッタは、死神と真正面からぶつかる。

振り下ろされる大鎌を弾き、間髪入れずに一撃、さらに一撃と叩き込んでいく。


だが、死神の攻撃は大鎌だけではない。

蹴りを織り交ぜ、刃ではない柄の部分でも容赦なく打ち据えてくる。


リッタは何度も弾き飛ばされる。

それでも地に倒れ伏すことなく、すぐさま体勢を立て直し、再び距離を詰めて反撃を叩き込んだ。


その間に、セリアが動く。


彼女は空中から杖を召喚すると、それをくるくると数回転させ、しっかりと握った。

そして杖の先に、赤い魔法陣を複数、同時に展開する。


リッタが弾き飛ばされ、死神が狙いを定めた――その瞬間。


すべての魔法陣から、セリアの声が重なった。


「――微弱なる火球ファイアーボール


リッタの前衛。

そして、そのリッタに危険が迫る瞬間、あるいは距離が開き、巻き添えの心配がない刹那を逃さない――セリアの後衛からの追撃。


三人の連携は、すでに迷いなく噛み合っていた。


その様子を見て、アリシアは安堵したように、ふっと口角を上げる。

そして次の瞬間、自らも戦列へと踏み込んだ。


迫るアリシアとリッタ。

剣と手甲が同時に襲いかかる。


死神はそれらを弾き、二人を別々に吹き飛ばし、追撃に移ろうとする。

だが、その動きに合わせるように――


セリアから、火の玉が飛ぶ。


キィンッ!

ガギィンッ!!

ギャリン、ギャギィンッ!!


金属音が重なり合い、激しい二対一の乱闘が繰り広げられる。

弾かれ、飛ばされ、それでもなお二人は立ち上がり、幾度も死神へと向かっていった。


そして、アリシアもまた――

リッタとセリアの参戦によって、わずかではあるが体力を温存できている。息も、先ほどまでのように上がらない。


そしてついに


死神の正面へと踏み込み、渾身の一撃を叩き込む。

確かな手応えとともにダメージを与えると、アリシアはすぐさま距離を取り、少し離れた地面へと飛び退いた。


そして――

光の大魔法の準備を、静かに始める。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。


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