第47話「終わらぬ戦い」
そして場面は、再びルミナス高原での決戦へと戻る。
金属音が激しく打ち鳴らされる。
刃と刃がぶつかり合い、弾き合うその一瞬――。
アリシアは、武器同士の反動によって生まれた僅かな隙を逃さなかった。
氷華に光のマナを纏わせ、身体ごと踏み込みながら、剣を突き出す。
「――集束され放たれる光の弾丸!」
剣先へと光のマナが一気に集束する。
凝縮された光は、やがて眩い光の玉となり、押し出されるように放たれた。
それは目にも止まらぬ速度で空間を切り裂き――
死神の腹部、その脇を正確に貫いた。
「ぐ、ぁ……っ……!」
死神は貫かれた腹部へと視線を落とす。
だが、回復を待つことすら許されない。
苦悶を噛み殺すように息を漏らすと、即座に反撃へと転じた。
大鎌を高く掲げ、そこへ禍々しい黒を纏わせる。
「――黒斬乱回」
低く告げると同時に、大鎌をアリシアへと投げ放つ。
大鎌は唸りを上げながら高速回転し、一直線に迫る。
アリシアは咄嗟に氷華を振るい、それを弾き返した。
弾かれた衝撃が腕に残る。
それでも、わずかに余裕を見せるように、アリシアは少し得意げな表情で死神へと視線を向けた。
――その瞬間。
死神は、何故か不気味な笑みを浮かべていた。
嫌な予感が、背筋を走る。
すると後方から――
「アリシアー!」
セリアの、危険を知らせる叫びが響き渡った。
その声に気づき、アリシアが咄嗟に背後を振り向く。
――次の瞬間、理解した。
死神の放った大鎌は、アリシシアに弾かれた後もなお勢いを失っていなかった。
高速回転を続けながら周囲を巡り、再び彼女の元へと戻って来ていたのだ。
アリシアは反射的に氷華を振るう。
金属音が弾け、大鎌は再び弾き飛ばされる――が、止まらない。
鎌は何度も、何度も周囲を巡る。
軌道は不規則でありながら、狙いだけは常に一つ。
――アリシア。
幾度弾いても、必ず戻ってくる。
逃がさないと言わんばかりに。
さらに死神は、手元に黒い闇を凝縮させる。
闇は形を成し、二本の手持ち鎌として生成された。
それを、躊躇なく投擲。
結果、大小三本の鎌が空間を支配する。
回転し、交差し、アリシアを取り囲むようにして一斉に襲いかかった。
それを見たリッタが、歯を噛みしめる。
「セリア、僕たちも行こう」
一言だけ告げると、セリアもすぐに応じた。
「そうね……アリシアにばかり、任せているわけにはいかないものね」
言い終えるや否や、セリアは一目散に死神の足元へと駆け寄る。
勢いそのままに跳躍し、上空から――
落下の力を乗せ、拳を叩きつけた。
轟音。
地面が割れ、砕け、隆起する。
盛り上がった大地の一部を、セリアはさらに全力で殴りつけた。
解き放たれた岩塊は、弾丸のように死神へと飛翔する。
死神は慌てて身を翻し、それを回避する。
――だが、それで終わりではない。
セリアは即座に風魔法を展開。
避けられた地面の断片を、空中で捉え、叩き返す。
想定外の連撃。
死神は反応しきれず――
直撃。
衝撃に身体を叩き伏せられ、そのまま地へと押し潰された。
同時に。
アリシアを追い詰めていた三つの鎌は、突如として力を失い、
回転を止め――
重力に従うように、地面へと落下していった。
するとアリシアは、ふっと肩の力を抜いたように二人を見る。
「さすがね! 二人とも」
素直な称賛を向けると、続けて小さく息を吐き、
「ちゃんと闇魔法の性質を理解して……全く、先が楽しみね」
それは、仲間としての信頼を滲ませた独り言だった。
――だが。
次の瞬間、その一瞬の安堵すら許さないかのように。
死神を押し潰したはずの岩塊に、複数の闇の斬撃が走る。
黒い閃光が縦横に刻み込み――
轟音と共に、岩は粉砕された。
破片が散る中、瓦礫の中心から、死神がよろよろと立ち上がる。
身体の傷は、既に癒えている。
だが、荒く上下する肩が、それが無傷ではないことを物語っていた。
呼吸は乱れ、確実に消耗している。
それを見据え、セリアが一歩前に出る。
「あなた、直接じゃない物理攻撃は効くんでしょ?」
冷静に、確信を込めて続ける。
「ダメージを与える分、あなたの力を増してしまうことになるけれど、
その分体力は削れるわ……違う?」
死神は、しばし黙したまま――
やがて、口角を吊り上げ、にやけた笑みを浮かべた。
「それを理解したところで、君らに何が出来るってわけ?」
嘲るような声音。
だが、その問いに、即座に返答があった。
「僕たちも戦える」
リッタの声は、迷いなく、真っ直ぐだった。
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