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第45話「動き出した作戦」

それを聞いたリッタは、「一撃……」と、吐き出すように言った。

その短い言葉には、覆しようのない現実の重さが滲んでいた。


だが、アリシアは即座に表情を切り替える。

「ええ。でも大丈夫! 策はあるの!」


不安を断ち切るような、あまりにも明るい声。

その声に引かれるように、場の空気がわずかに緩む。

しかし次の瞬間、アリシアは言葉を選ぶように一拍置いた。


「でも、森の中だと難しいから……」


そこまで聞いたリッタは、はっと息を呑んだ。

「あっ……」


思考が一気につながったのだろう。

リッタは顔を上げ、確信を込めて口にする。


「僕の、拳で穿つ空圧エア・バーストで、あいつを森の外にってこと?」


アリシアは言葉を返さず、ただ小さく、しかし迷いのない動きでこくりと頷いた。


「どこに飛ばす?」


間髪入れずに投げられた問い。

アリシアは一瞬だけ視線を泳がせ、思案する。


「近くに開けたところでもあればいいんだけど……」


その言葉を受け、リッタは「アルシェリア大森林の近くなら……」と呟き、少しだけ考え込んだ。

やがて、ひとつの地名に辿り着いたように、顔を上げる。


「ルミナス高原!」


そしてそのまま、状況を補足する。

「ルミナリアとセレスティアの間にあって、この森も隣接してる一番大きな高原だよ」


「ルミナス高原……そんなところが」


アリシアはその名を噛み締めるように繰り返し、ほんの一瞬思考を巡らせる。

だがすぐに、迷いを振り払うように、うん! と力強く首を縦に振った。


「そこならいけるかも!」


そして一歩踏み出し、真正面からリッタを見据える。

「リッタ。お願いできる?」


その問いに、リッタは一瞬だけ黙り込んだ。

だが次の瞬間には、覚悟を決めたように静かに答える。


「うん。そこならなんとか」


そしてついに、死神に勝利するための作戦が動き始めた。


「私がセリアに、今話したことを伝えるから、リッタはその隙に!」


「わかった!」と、リッタは迷いのない明るさで返す。


アリシアはその返答を聞くや否や、即座に動いた。

死神の猛攻をかろうじて掻い潜りながら退いていたセリアのもとへ、一気に距離を詰める。


次の瞬間。

アリシアは死神の眼前から、文字通り一瞬でセリアを抱き寄せ、そのまま戦線の外へと連れ出した。


セリアは突然の出来事にも動じることなく、アリシアの腕の中で小さく息を整える。

そして、どこか余裕を含んだ声で問いかけた。


「どう? 死神を倒す手段はなにか浮かんだのかしら?」


少しいじるような口調。

それに対し、アリシアは短く、しかし力強く答える。


「うん!」


近くにあった大木の幹へと着地すると、アリシアはセリアを下ろし、

「セリア、少しいい?」と声をかけた。


そう言うと、アリシアは一瞬だけ上を向き、目を閉じる。

次の瞬間、額の前に白く淡い光を放つ魔法陣が生成された。


一度だけ目を開き、セリアと視線を交わす。

そして再び目を閉じた。


その意図を察したセリアも、何も言わずに目を閉じる。

アリシアはゆっくりと身を寄せ、自分の額とセリアの額を合わせた。


すると――

先程、リッタと交わした作戦の内容が、記憶そのものとしてセリアの意識へと直接流れ込んでいく。


一瞬の沈黙。


やがてセリアは、自身の知らない魔法の感触に、わずかに驚いた様子で目を開いた。

だがそれも束の間。

すぐに状況を正確に把握し、アリシアの作戦を受け入れる。


その表情に、迷いはなかった。


死神は、そのまま狙っていたセリアから標的を切り替え、彼女を抱いているアリシアへと迫ってきていた。


だがその瞬間――

地で、拳で穿つ空圧エア・バーストを放とうと、手甲に力を込めるリッタの気配を、死神は確かに感じ取った。


宙で動きを止め、確認しようとした、その一瞬。


すでに遅い。


次の瞬間には、リッタは地を蹴っていた。

迷いも、躊躇もない。

踏み込むと同時に距離を詰め、死神の懐へと、一気に間合いに入る。


死神が反応する暇はなかった。

防ごうとする意思すら形になる前に――


「拳で穿つ空圧エア・バースト!」


リッタは拳を構えながら、技名を叫ぶ。

その声と同時に、圧縮された空気が解き放たれた。


放たれた一撃は、逃げ場を与えず、正確に死神へと命中する。

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