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第39話「闇を纏う者への対抗策」

アリシアは、これ以上切り込めないと悟った瞬間、迷いなく後方へ跳び退いた。

氷華を引き戻し、間合いを切る。


対する死神は、追撃する素振りすら見せない。

静かに――まるで獲物の出方を待つかのように、大鎌を横一文字に構え、重心を落とした低い姿勢を取る。


次の瞬間だった。


アリシアが再び踏み込み、氷華を振るうのと同時に、鋭い金属音が空気を切り裂いた。


キィン――ッ!

キン!

キィン!


甲高い剣戟音が、連続して戦場に響き渡る。


セリアたちは反射的に身体を前へ出しかけたが、その激しさを目の当たりにし、踏みとどまる。

今この領域に割り込むのは、かえって足を引っ張るだけだ――そう直感してしまうほど、二人の攻防は異質だった。


黒い靄が、あっちへ、こっちへと空中を縦横無尽に飛び回る。

それを追うように、重なり合うように、金属音が絶え間なく鳴り続ける。


まるで、姿なき何かと刃がぶつかり合っているかのような光景。


その只中で、アリシアの表情に、僅かな変化が生じた。


――届いていない。


確かに剣は当たっている。

斬撃は死神の位置を正確に捉えている。

だが、そこにあるはずの感触がない。


肉を裂く手応えも、骨を断つ抵抗もない。

傷を与えているという確かな実感が、どこにもなかった。


違和感が、焦りへと変わる。


そして、ふと――アリシアは気づく。


死神の身体を纏う、その黒い靄。

それこそが、斬撃を受け止めているのだと。


氷華が触れた瞬間、剣先は確かに死神へ向かう。

だが、本体に届く前に、周囲を漂う靄がそれを呑み込み、吸収する。


刃は、死神に触れていない。


見えない壁。

意志を持った防壁。


アリシアは、死神に対し、明確な焦りを抱いていた。


アリシアは、一瞬だけ距離を取ると、戦場の中心から身を引いた。


思考に費やせる時間は、ほんの刹那。

だが、それで十分だった。


――先程、わざわざ死神の方から投げかけてきた言葉。


「光魔法は使えるのか」


その問いが、脳裏で反芻される。


導き出される答えは、あまりにも明確だった。

闇の靄が斬撃を吸収するのなら――それに対抗し得るのは、同じく相反する力。


光。


闇魔法に対抗できる光魔法であれば、何らかの突破口になるはずだ。


死神が闇の靄を纏うというのなら。

ならば、自分は――光を纏えばいい。


そう結論づけた瞬間、アリシアは氷華を構え直し、僅かに息を整えた。

光の、靄のような。

マナそのものを身体に纏わせるため、一瞬の“溜”を作る。


だが――


その刹那を、死神が見逃すはずもなかった。


死神は、構えていた大鎌を、その場の地面へと突き刺す。

次の瞬間、地を蹴る音すら置き去りにし、一気に距離を詰めた。


速い。

反応する暇すら与えない、異常な加速。


隙を突かれたアリシアの腹部へ、死神の手がかざされる。


――間。


ほんの一瞬の、静止したかのような時間。


直後、衝撃が炸裂した。


アリシアの身体は、抵抗する間もなく後方へと吹き飛ばされる。

何が起きたのか理解する前に、視界が反転し、景色が流れ去った。


気づけば、セリアたちの後方へ。


勢いのまま、二人の背後を通り過ぎる、その瞬間――


「二人ともごめん!少し耐えてー!」


叫ぶと同時に、アリシアは両手を振るう。

放たれたのは、二つの光の玉。


それは弧を描くように飛び、迷いなくセリアとリッタへと向かった。


光の玉が触れた瞬間。


先程、アリシア自身が纏おうとしていた状態が、二人の身体に再現される。

柔らかく、しかし確かな力を伴った光のマナが、全身を包み込むように広がっていった。


淡い光が揺らめき、二人の輪郭を際立たせる。


戦場に、新たな光が灯る。


その状態は、身体一体が淡く黄色い光に包まれたかのようなものだった。

輪郭は柔らかく発光し、空気そのものが揺らめいて見える。

戦場の只中にありながら、どこか神秘的で、清浄な雰囲気を漂わせている。


突然訪れた変化に、二人は戸惑いを隠せない。

セリアもリッタも、自分の身体へと視線を泳がせ、腕や指先、胸元へと確かめるように目を落とした。


その光は、確かに自分たちを包んでいる。


やがて、リッタが小さく息を呑み、セリアへと視線を向けた。


「これって......」


問いかけるようなその声に、セリアは静かに頷く。

光のマナを纏った自身の腕を見つめながら、確かめるように言った。


「ええ、光魔法ね......とても暖かい。まるで羽毛の掛け布に巻かれている気分だわ......」


その言葉通り、身体を包む光には、敵意や重さは感じられなかった。

むしろ、守られているという確かな安心感がある。


リッタは、ゆっくりと拳を握る。

光が指の隙間から零れるように揺れ、その感触を確かめるように力を込めた。


「何はともあれ、これなら触れられるってことだよね」


その言葉に、セリアは即座に応える。


「ええ、闇魔法に唯一対抗出来る光魔法だもの」


確信に満ちたその声に、リッタは一度セリアの顔を見てから、死神の方へと向き直る。

そして、ほんの少しだけ笑みを浮かべ、振り返って言った。


「なら僕たちはやれる。アリシアが戻ってくるまで、また時間を稼ごう」


その言葉を受け、セリアは明るく頷く。


「ええ」


こうして二人は、再び前へ出る。


淡い光を身に纏い、死神と対峙する。

それは、ほんの一時の間かもしれない。

だが確かに――アリシアが戻るまでの時間を繋ぐ、重要な役割だった。

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