表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/49

第31話「黒き闇を払う蒼き龍」

死神は、再び不気味な笑みを浮かべた。


そして――

「いいねー、その威勢」

愉しげにそう告げると、間を置かず、不気味に言葉を継ぐ。

「守れるものなら……守ってみなよ」


――なんて殺気なの……。


アリシアは、喉の奥がひくりと引きつるのを感じながら、心の中でそう呟いた。


次の瞬間だった。

死神の姿が、空中で掻き消えたかと思うほどの速度で加速し、そのまま一直線にアリシアへと迫る。


アリシアは反射的に剣を構え、迎え撃つ。


再び、激しい金属音が夜気を切り裂いた。

キン! キン! ガギィン!


火花が散り、衝撃が腕を痺れさせる。


だが次の刹那、死神はふっと距離を取り、後方へと間合いを外した。

そして、滑るような動作で素早く大鎌を構える。


その刃に、黒いもやのようなものが、じわりと絡みついた。


不吉な気配が、空気そのものを歪ませる。


次の瞬間――

死神は、それを払うように、大鎌をアリシアへ向かって振り抜いた。


大鎌に纏われていた黒いものは、形を変え、鋭利な斬撃となって解き放たれる。


黒の斬撃が、一直線に、アリシアへと迫ってきた。


アリシアは「闇魔法!?」と驚きの声を上げながら、咄嗟に反応した。


迫り来る黒の斬撃に対し、氷華を交えて抑え込もうとする。

だが、その威力は想像を遥かに超えていた。


衝突の瞬間、圧倒的な力が全身を押し潰し、アリシアの身体は空中から地へと叩き落とされる。

着地と同時に足が地面を削り、抵抗する間もなく、そのまま後退させられた。


地を引きずる音が、森に鈍く響く。


その光景を見て、死神はニヤリと笑った。

そして、その一瞬の隙を逃さず、逃げ延びた二人の後を追うべく、迷いなく進路を変え、飛翔する。


――行かせない。


アリシアは歯を食いしばり、力を振り絞る。


何とか斬撃の威力を殺し、氷華で切り裂き、完全に打ち消した。

霧散する黒の残滓が、冷たい空気の中へ消えていく。


だが、顔を上げた瞬間、アリシアは異変に気づいた。


――いない。


つい先ほどまで、目の前に存在していた死神の姿が、消えていた。


理解するよりも早く、答えはひとつしかなかった。

二人の後を追ったのだ。


アリシアは即座に視線を走らせる。

死神が向かった方向――二人が逃げた方向へ。


剣を構えた、その刹那。


淡い氷のような光が、剣身を包み込む。


アリシアは、空を切るかのように、迷いなく一振りした。


次の瞬間、剣を包んでいた淡い光は、形を変え、追従する砲弾のように二発、連続して解き放たれる。


一直線に、死神へと向かって。


――――


森の中。

空中を飛翔し、二人を追っていた死神は、背後から迫ってくる何かの気配を察知した。


振り向いた、その時には――

すでに遅い。


アリシアの放ったそれは、死神の真後ろまで迫っていた。


一瞬の焦りが、その動きを鈍らせる。


死神は咄嗟に大鎌を構え、守りの姿勢を取った。


直後――

構えた大鎌へと、二つの氷光が、容赦なく直撃した。


しかし、その威力はなおも衰えなかった。


死神は、背後から押し返される圧倒的な力に抗い、歯を食いしばるようにして何とか踏みとどまっていた。

だが――アリシアが放った攻撃は、一発ではない。


一瞬の遅れを伴って、二発目が到達する。


すでに死神と押し合いを演じていた一発目へ、加勢するように交わり――

二つの氷光は、互いを喰らうように融合した。


次の瞬間。

二発は一つとなり、急激に膨れ上がる。


氷の砲弾は巨大な塊へと変貌し、威力を倍加させ、そのまま死神を押し退けた。


抗う間もなく、死神の身体は後方へ弾き飛ばされる。


――ドォンッ。


森の大木へ、押し潰されるように叩きつけられ、アリシアの攻撃を正面から受けた。


衝突点を中心に、大木は大きく円状にひび割れ、深く凹んでいる。

大鎌と、それを握っていた腕は、氷結したまま完全に動きを止めていた。


冷気が白く立ち上り、死神は、すぐには身動きが取れずにいる。


その上空――

アリシアは、空中を飛行し、一直線に向かってきた。


距離が詰まる。


死神は、アリシアが目の前まで迫ったところで、閉じていた目をゆっくりと開いた。


まず視線を落とし、凍りついた自身の腕を見る。

そして、そのまま静かに顔を上げ、アリシアを見据える。


沈黙の後、死神は、落ち着いた声で語り始めた。


「認めるよ……。僕を相手にその威勢。相応の実力はあるみたいだね」


アリシアは返す言葉を探した――が、喉が音を拒んだ。


息だけが浅く入り、胸の奥で冷たいものが膨らんでいく。

目の前の存在が、先ほどまでとは別の“段階”へ踏み込もうとしているのがわかる。


死神の口元が、ゆっくりと形を変えた。

笑みと呼ぶには粘つきがあり、慈しみの欠片もない。


その瞬間、温度が落ちたように感じた。

肌が粟立ち、指先が痺れる。森の空気そのものが、殺意の重さに沈んでいく。


死神は静かに言葉を継ぐ。


「久しぶりに本気で遊べそうだ......壊れるまで遊んであげるよ」


次の瞬間だった。


死神は、凍りついた腕に力を集める。

ほんの一拍、筋が浮くほどに力ませたかと思うと――


パキィン!と響き渡る破断音。


氷がひび割れ、砕け、白い破片が弾け飛ぶ。

同時に死神は、背の大木を踏み台にして跳ねた。空を蹴るような加速で、距離を消し去ってくる。


振り上げられた大鎌が、弧を描く。

速度を落とさぬまま、刃が重力ごと叩きつけられる。


だが、アリシアも遅れない。


氷華を立て、真正面から受け止めた。


衝撃が腕から肩へ、骨へと突き抜ける。

刃と刃が噛み合い、鋭い金属音が跳ねた。


押される。――押し返す。

火花と冷気が同じ高さで散り、二人の間に白い息が絡む。


武器が拮抗したまま、距離は限界まで詰まっていた。

アリシアは、真正面で死神と視線を交わす。


大鎌の圧力は容赦がない。

全身で受け止めるアリシアに対し、死神は、余裕のまま口角をわずかに持ち上げていた。


死神は、勢いよく背後へと跳躍した。


宙を翻るその身体は、アリシアのわずか上空で静止する。

同時に大鎌を構え直すと、刃の周囲に、先ほどと同質の黒い靄が絡みついた。


濃く、重く、光を拒むような気配。


次の瞬間――

死神はそれを振るう。


一度ではない。

連続して、五度。


大鎌の軌跡に呼応するように、五条の斬撃が空を裂き、時間差もなくアリシアへと降り注ぐ。


だが、アリシアの表情は揺れなかった。


剣を腰の位置へと静かに構える。

踏み込みと同時に、視界が一瞬、白く閃いた。


氷華が走る。


刹那のうちに放たれた剣閃は、迫る斬撃を正確に捉え――断ち切った。


黒の斬撃は、ふたつに分断される。

その切断面を包んだのは、闇とは正反対の、白い光だった。


光はすぐに崩れ、黒い塵のようになって散り、森の空気に溶けて消えていく。


死神は、自身の斬撃が通じていないことを理解し、思わず目を見開いた。


――その一瞬。


アリシアは、間合いを詰める。


淡く水色に輝く氷華を携え、死神へと切り込んだ。


死神は咄嗟に防御へ移る。

だが、アリシアの剣技は速い。


一太刀では終わらない。

間断なく、無数の斬撃が連なり、休む間を与えずに襲いかかる。


押されるのは、死神のほうだった。


ここに至り、アリシアもまた、本気を解き放っている。


二人の猛撃が正面からぶつかり合い、

激しく、連続した金属音が、どこまでも深い森の中へと響き渡った。


二人の戦いは、次第に熱を帯びていく。


押し合い、離れ、再び詰める。

後退から追撃へ、追撃から迎撃へ――攻防は絶え間なく入れ替わり、空中では水色の光と黒い闇の軌跡が、交わってはほどけ、ほどけては再び衝突した。


激突のたび、光と影が線となって走り、森の上空に幾重もの残像を刻む。


その光景は、もはや剣戟ではない。

蒼き龍と、黒き闇そのものが、互いの存在を削り合っているかのようだった。


――と、その時。


死神が、唐突に攻撃の手を止めた。


宙に留まり、頭を抱えるようにして、苛立ちを隠そうともせず声を荒げる。


「さっきから思ってたんだけど......おかしいよなァ!?」


荒い息を整える間もなく、アリシアはそれを聞く。

胸が上下し、はぁ、はぁ、と小さく空気を吸い込む音だけが漏れた。


死神は続ける。


「なんで僕の斬撃は闇魔法なのに、君なんかに切れるわけ!?」


言葉が宙に残る。

そして一拍――わずかな沈黙。


死神は、探るように、怪しげな声音へと落とした。


「もしかして君って......光魔法でも使えんの?」と。

お読みいただきありがとうございます!

まだまだ激しい戦闘は続きます、アリシアにも今の本気を出してもらおうかなと考えています!


次回もお楽しみいただければ幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ