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前編 檻の中の姫
薄暗い地下室。小さな窓から射す光は弱く、昼なのか夜なのかもわからない。
君は床に座り、僕は皿を差し出す。
「……今日も食べて。君が弱ってしまったら、僕は生きていけない」
そう言うと、君は静かに頷いてパンを口に運ぶ。拒絶も、泣き声もない。ただ、微笑みだけがそこにある。
その目に、僕は救われる。
「外は危険だ。君は美しすぎるから、すぐに奪われてしまう。だからここにいるんだ。僕が守る」
言い訳のように、言葉を重ねる。
けれど――。
彼の声は震えていた。
私を閉じ込めているはずなのに、どうしてこんなにも弱々しく見えるのだろう。
鎖は確かに私の手首に絡んでいる。鉄の冷たさは、皮膚に沁みつくほどだ。
それでも、檻に縋りついているのは彼のほうに思えた。
「……あなたこそ、大丈夫?」
そう囁くと、彼は一瞬息を呑んだ。
鍵を握っているのは彼だ。
逃げられないのは私のほうのはずだ。
なのに、檻の中に閉じ込められている顔をしているのは、いつも彼の方――。