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第7話 (異世界で)初めてのおつかい




翌朝、ラフな格好に着替えて異世界に転移することにした。

そう言えば、空間魔法のアイテムボックスを隠すためにも巾着袋を用意した。

イブに聞いたら、この世界には魔法の収納袋が有るらしい。

その容量は様々でダンジョンで見つかることもあるらしいが貴重品とのこと。

この巾着袋なら、取り出しておいた硬貨を入れることができるし、収納袋に偽装できるだろう。

あとは隠蔽の指輪だけを身につけることにした。





異世界の『最古のダンジョン』の跡地に転移した。

前回とは違って、こちらの様子をうかがってくるような視線はない。

まあ服装から、多少は見られることもある。

予定通り、装備品を購入するために街中を散策することとした。

お金がいっぱいあるにしても、冒険者どころかこの世界に不慣れな僕としては基本というか、初心者が身につけるような物が良いだろう。

あまり良い物だと目立ちそうだし。



キョロキョロと町並みを見ながら歩いていると、やはりいろいろな種族の者がいるようだ。

服装も、普通の町民のような格好から装備品を身につけている冒険者のような人、身なりの良い人など様々だ。

それほど行かないうちに、木造の建物で剣や盾の絵が描いてある看板が軒先に吊るされている店を見つけた。

店頭には武器などが置かれているので、装備品を売っている店に間違いないだろう。



店に入ると、そんなに数はないが、種類ごとに整然と装備品が並べられているのが分かる。



「いらっしゃい! 武器防具屋『ドワーフの親方』にようこそ! 何をお求めですか?」



大きな声で声をかけてきたのは、地球で見かける白人のように見える二十歳くらいの若い男性だ。

店員だろうか。



「『ドワーフの親方』が店の名前なのか? あなたはドワーフには見えないが。」



「いやあ。そうですよね? 店名の通り、親方がドワーフ何ですよ。やっぱり物作りはドワーフが優れていますから。『分かりやすい方が良い』とのことで、こんな店の名前何ですよ。あっ、私は店員の『アイデン』と言います。親方は『エイガス』という名前です。」



「べらべらと人の名前まで紹介してんじゃねぇよ、アイデン。仕事しろや。」



無愛想にアイデンに声をかけていたのは、店の奥から出てきたと思われる背の低い男性だった。

髭もじゃの見るからにドワーフだ。

そのドワーフ、エイガスが僕をジロジロ見ると、



「ふぅん? 変わった雰囲気の奴だな。服装も変わっているが、強いのに鍛えている様子が無い。何故だ?」



不思議そうにエイガスが僕を見る。

そんなことを言われても、僕にも分からない。



『それは、マスターには強そうな雰囲気があるのに平凡な顔をしているので、…』

イブ! それは悪口か!? しれっとディスってくるなよ。



「そんなことを言われても分からないな。冒険者の駆出しが使えるような装備を購入したい。武器と防具だ。」



僕が申し出ると、エイガスが、



「それなら、そこのアイデンに頼め。お前が本当にできる奴なら、そのうち俺が見繕ってやる。」



そう言ってエイガスが店の奥に引っ込む。

どうやら、僕はまだエイガスには認められていないのか?



「親方があんなことを言うなんて珍しいですよ。お客さん、親方に気に入られたんじゃないですか?」



アイデンがそんなことを言う。

あれで? まあ気に入られたのなら、そのうち相手をしてくれるだろう。

実を言うと、そこまですごい装備が欲しい、というわけじゃないからな。

アイデンに装備の相談をし、何の素材か分からないが皮の鎧と鉄剣、鉄棍、鉄のナイフを購入した。

剣はやっぱり、格好良いというかロマンというか、買ってみたかったんだよ。

見てたら欲しくなった。

でもアイデンから、初心者に剣は簡単では無いと言われた。

何でも剣で切る時に刃を立てるとか、研ぐなどのメンテナンスが必要とかいろいろあるみたいだ。

で、アイデンと相談した結果、頑丈でメンテナンスがそれほど必要ない鉄棍が主な武器になったという訳だ。

アイテムボックスに入れればすぐに装換できるけど、アイデンや人の目があるから、アイデンに手伝ってもらい、皮の鎧を装着した。

ちなみに鉄のナイフは、冒険者なら素材の採取などで使うから、とアイデンに言われて購入を決めた。

代金を支払い腰に鉄剣、背中に鉄棍を背負い、店を出た。

ついでに冒険者ギルドの場所も聞いておいた。

店から離れると、人の目が無いところで鉄剣だけをアイテムボックスに入れた。

腰には鉄のナイフだ。

あれこれ持ってても邪魔になるからな。



さて、装備も購入したし、これで僕も駆けだしの冒険者に見えるか?

アイデンに聞いた冒険者ギルドに到着した。

外から見た感じ、石造りで飾り気の無い建物だ。

しかし王都というだけあるのか、周囲の建物よりも立派な感じだ。

ギルド内に入ると正面に複数のカウンターがあり、それぞれに人が並んでいた。

あれが受付か?



『マスター。向かって正面が依頼の受注、右が依頼の完了報告、左が素材の買取依頼のカウンターのようです。ギルドの登録は正面のカウンターです。』



よく分かるな。イブ。



『カウンターのそれぞれに案内板がありますので』



あっ、本当だ。

言葉だけじゃなくて文字も読めるんだな。

これも『異世界人』の称号のおかげか。

僕が正面のカウンターの列に並ぼうとしたところ、女性の声で呼び止められた。



「ちょっと良いですか?」



その声は凛としていて、意志の強さを感じさせるような声に僕には聞こえた。





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