※ 交通事故現場での奇跡
私は、都内の公園で息子と遊ぶため、息子の手を引いて歩いていました。
息子は5歳になったばかりのやんちゃ盛りです。
手がかかって大変なときもありますが、私には可愛くて仕方ありません。
今日は天気が良く、公園に行くには良い陽気です。
息子は、私と手を繋いでいる反対側の手に、最近お気に入りの仮○ライダーの人形を握りしめています。
「今日は天気が良くてよかったね。ママ!」
満面の笑顔で私を見上げてきます。
その笑顔を見ていると、自然と私も笑顔になります。
「そうね。勇ちゃんは公園が好き?」
私が、息子にそう聞くと、
「うん!好き!でも仮○ライダーの方が好き!」
息子が、手に持った仮○ライダーの人形を、私に見えるようにかざしてきます。
本当に仮○ライダーとかヒーローが好きなのよね。勇ちゃんは。
そうして、公園まであと僅かというところで、私と息子の後ろから車のエンジン音が聞こえてきました。
後ろを振り返ると、黒色のセダンタイプの車が猛スピードで迫ってきます。
こんな道で、あんなにスピードを出すなんて!避けられない!
私はせめて勇ちゃんを庇おうと、勇ちゃんを抱えようとした瞬間、
『ドンっ!』
と、車に跳ね飛ばされました。
い、痛い!何でこんなことになったのか分かりませんでしたが、慌てて勇ちゃんを探します。
体重の軽い勇ちゃんは、私よりも跳ね飛ばされていました。
「勇ちゃん!」
勇ちゃんに駆け寄ると、頭から血を流してぐったりし、私の呼びかけに返事をしてくれません。
そんな!勇ちゃんが動かない。何で!お願い!勇ちゃん目を開けて!
感覚で、勇ちゃんはただ気絶しているのでは無く、非常にまずい状況であると分かります。
まるで勇ちゃんの命が、両手からこぼれ落ちて行くような、そんな絶望感が私を襲います。
勇ちゃんが死んじゃう!
私達夫婦の大事な息子、やんちゃをすることもありますが、笑顔のかわいいかけがえのない子なのに!
「勇ちゃん!しっかりして!誰か、助けてください!」
「どうして!?何でこんなことに。誰か!神様!」
次第に、騒ぎを聞きつけてきたのか、人だかりができています。
私が勇ちゃんを抱えていると、いつの間にか金色の鎧を着た人が目の前にいました。
金色の仮○ライダー?
その場の雰囲気にそぐわない、その人が私達に向けて片手をかざしてきました。
そうすると、鎧の人と私達が淡い光に包まれていました。
暖かく、何故か安心感のある光です。
抱えている勇ちゃんが、私の懐で身動ぎしたのが分かりました。
まさか!?勇ちゃんはまだ生きてる!
勇ちゃんの顔に、みるみる生気が戻ってきました。
私は、何が起こっているのか分からず、鎧の人と勇ちゃんを交互に見てしまいました。
私は何故か、鎧の人がどこかに行ってしまうと思い、思わず、
「あ、あのっ!あなたが何かしてくださったんでしょうか?」
と尋ねていました。
抱えていた勇ちゃんが自分で立っているのを見て、信じられませんでした。
あんなに瀕死の状態だったのに、今は目を輝かせて鎧の人を見上げているのです。
「うわぁ。ヒーロー?格好良い!」
金色の鎧の人は一度頷くと、勇ちゃんの頭を優しく撫で、手を離したと思ったら目の前から消えてしまいました。
えぇ!?マジックかしら!?
どこにも、あの目立つ金色の鎧の人の姿が見えません。
鎧の人が消えたことで、周囲の人も騒ぎ出します。
「消えた!?どこに行ったんだ?あの金色の鎧を着たやつ。」
「何なの?光ったり、姿が消えたり。あの親子の怪我も治ってるみたいよ?」
騒いでいる人達に、勇ちゃんが、
「ヒーローだよ!金色のヒーロー!僕やママを助けてくれたんだ!」
確かに勇ちゃんが言うように、勇ちゃんにはもう、怪我をしている様子はありません。というか、元気いっぱいに見えます。
本当に良かった。
勇ちゃんは、どこかにとばされてしまった仮○ライダーの人形を見つけて、大事そうに抱えています。
「勇ちゃん。一応病院で怪我が無いか、みてもらいましょうね。」
「えぇ。僕もう大丈夫だよ!仮○ライダーが助けてくれたもん!」
勇ちゃんが、そんなことを言います。
でも、ちゃんと診てもらわないとママは心配なのよ。
「ちゃんと元気じゃないと、また仮○ライダーに会えないわよ。勇ちゃんもまた会いたいでしょう?」
「会いたい!また会えるかな?ママ!」
勇ちゃんは、手に持っている仮○ライダーの人形を見ながら、
「ママ、さっき会えた仮○ライダーの人形ある?欲しいなぁ。また会いたいな。」
だそうです。
「ママも会いたいわ。人形は探してみましょうね。」
こうして私達は助かりました。
不思議な力で私達を助けてくれたヒーロー。
突然消えてしまいましたが、あの人は私や勇ちゃんの恩人です。
今度会えたら、きちんとお礼が言いたいです。
『あなたのおかげで、私達の大事な「宝もの」勇ちゃんは元気です。本当に感謝しています。』と。