第23話 帝国
「ついてくるが良い。」
横柄な『隊長』?の後について行くが、この時には既に僕はイングスタル帝国のためにとか、何かしてあげようとは思っていない。
訓練場のような場所に来ると、他に数十名の兵士の姿が見える。
「隊長!どうかされたんですか? その者たちは?」
「城門前で騒いでいた者達だ。お前達で話を聞いてやれ。多少手荒くても構わん。」
隊長と呼ばれた者は、そう言って僕達を示す。
「皇帝に確認するのではなかったのか? 皇帝からの要請を受けてきた、と言ったはずだが?」
どうせ、この隊長は確認する気も無いということは分かりきっていたが、一応言っておく。
隊長は、人を馬鹿にしたように嘲る。
「ふんっ! そんなことをする必要はない。お前達のような者に、皇帝陛下が何かを要請するものか! 女2人は兵士で歓迎してやっても良いが、貴様は兵士の訓練相手になってもらおうか。」
「やっぱり、こいつらは身の程を知らない。切って捨てる。」
「そうっすよ! 話ができないなら魔物畜生と変わらないっす! 師匠がやるなら自分もやるっす!」
隊長とやら、及び兵士たちがやろうとしているのは、リデル逹に対して性的なことをする、僕に対して殴る蹴るというか、危害を加えるということだろう?
やはり、救いようもない奴らだったようだ。
「そうだな。こいつらは帝国内部にいるだけの盗賊だったようだ。でもなければ、こんな底脳なやつらが城内にいるわけないからな。」
「もう一度言うが、こんな盗賊のような下品な奴らが城内にいるわけないからな。もしこいつらが兵士なら、イングスタル帝国は盗賊の国ということになってしまうな。」
僕も良い加減腹が立っていたので、精一杯に隊長や兵士らを煽る。
兵士らは、具体的に非の有る文言はないが、隊長とやらを制止する様子はないし日常的に行われていることなんだろう。
ふと、訓練場の片隅を見ると、10歳くらいの小さい男の子が横になり、さらに小さい女の子が傍らに跪いている。
「お兄ちゃん…!お兄ちゃん!…うぅ………ぐすっ!」
「……」
男の子は全身から血を流し、うつ伏せで倒れているが最早返事がない。
小さな、本当に小さな女の子が泣いている。
女の子は一生懸命に男の子に両手を添えている。
二人の周囲には淡い光が立ち上がる。
まさか、回復魔法か!?
回復魔法の使い手は極々少数かと思っていたんだが。
女の子は必死な様子で、兄と思われる男児に両手を添える。
僕はすぐに兄妹に近づき、男の子に対して全力の『回復魔法(極)』を使う。
この兄妹は、イングスタル帝国の兵士とは関係無いんだろう。
兄妹には、頭に犬のような耳がある。
そういえば、イングスタル帝国は人族至上主義と言っていたからな。
犬の獣人か何かの人種だろう。
首に首輪のようなものがあるし、事前に聞いていた奴隷か!?
「うっ!」
男の子の獣人から、うめき声がする。
「お兄ちゃん!」
男の子の傷が癒えたのを見て、女の子が声を上げる。
男の子は大丈夫だろう。
怪我は治った。
本気で、僕としては本気でむかついた。
我慢して、これ以上に無いくらいに譲歩したつもりだ。
もう良いだろう?
僕は、その場にいる帝国の隊長と兵士の全てを停めた。
文字通り、空間魔法の『固定』で、隊長以下の兵士数十名を固定した。
そして、その全ての者の両足を空間魔法『切断』で順次切断した。
さらに王城を、できるだけ派手に破壊した。
ここまでされて、言い訳もしないし帝国のために何かしてあげようとも思わない。
「な、何が!?」
「ぐっ、ぐわぁー!」
兵士達から悲鳴が上がる。
「何だ!? 何がおこった!?」
ほとんどの者が倒れ、うめき声しか聞こえなくなる。
イングスタル帝国の王城の、イングスタル帝国の皇帝が居る場所を、イブに聞いて確認しておく。
これから、イングスタル帝国の皇帝を無理やりでも、ココに連れてきてやろう。
さらに王城の奥から、兵士と思われるモノ達が押し寄せてくるが、イブに聞いた上で、とある一室に向けて転移した。




