第21話 隣国へ
「イングスタル帝国ですか?」
僕は、グレンダ王に対して問い返す。
「そうだ。先程、イングスタル帝国からの使者が来てな。帝国の次期皇帝、今の皇帝の嫡男であるが、何でも原因不明の病にふせっているらしい。この次期皇帝を治療してもらえないか、という願いだ。どうやらルミエールの不治の病を癒やした『黄金の騎士』の噂を聞きつけできたようだ。」
回復魔法の使い手も、そんなに多くないようだしな。
不治の病を一瞬で完治させるほどの使い手は、もっと少ないだろう。
「イングスタル帝国とは、貿易など最低限の交流はあるが同盟国というわけではない。しかし、余も『黄金の騎士』に助けてもらった立場だ。皇帝の気持ちも分かる。可能であれば助けてやってほしい。」
なるほど。
グレンダ王は『黄金の騎士』ならば助けることができると判断したんだろう。
僕も助けることができるなら、行っても良いと思っている。
僕もいろいろな所に行ってみたいし、転移できる場所が増えるしな。
しかし、
「何故私達が選ばれたのでしょう? 「黄金の騎士」だけで良いのでは?」
ここには僕の他にリデルとモニカがいる。
この3人で行くのか?
「余は、カケルとリデルを読んだつもりだが。まあ体面もある。従者の一人も必要であろう? ちょうど良いから3人で向かってくれるか?」
モニカはイレギュラーってことか。
まあ、モニカはリデルの「私達を呼んでいる」という言葉についてきた感じだったからな。
しょうがない。
イブに聞いてみると、イングスタル帝国とは皇帝が支配し、グレンダ王国とは隣接している国のようだ。
早馬でも一週間はかかる距離らしいが。
人族至上主義で奴隷のほとんどが人族以外らしい。
人族の奴隷は犯罪奴隷しかいないようだ。
奴隷とか聞くと、日本人としては引いてしまうな。
理不尽な扱いをされていなければ良いけど。
王からの指示、及びイングスタル帝国への親書を受け取り、僕達は退室した。
「王に呼ばれて緊張したっす!」
モニカか開口一番に言う。
お前は呼ばれてなかったけどな。
「でも、『黄金の騎士』はどこにいるっすか? イングスタル帝国に向かう準備があるっすよね?」
見せたほうが早いか。
モニカのことだから、言葉で言っても信じてくれないというか、信じてくれても時間がかかりそうだ。
一瞬にして『黄金の騎士』のオリハルコンの全身鎧に換装する。
「ななっ!? めちゃくちゃ派手っす!」
そっちかよ!
僕はまた、グレンダ王国騎士団の制服に換装する。
「そういうわけで、イングスタル帝国に向かう準備をしよう。僕に考えがあるから野宿とかの準備は無くて良い。身の回りの物だけでな。」
「カケル。馬車は必要ない? 歩いて行くつもり?」
「まあ任せておけ。準備ができたら出発しよう。」
そう言って各自が旅支度をすることにした。
「準備は良いか?」
王都の門を出て、見晴らしの良いところで僕が2人に確認する。
「良いけど、これからどうする?」
「準備オーケーっす。どんな敵が現れても、自分の剣で倒してみせるっす!」
そういえば、モニカの未発現の魔法について、モニカには説明していなかったな。
どうするか、まあ、後で良いか。
せっかく今は本人がやる気になっているしな。
それよりも、
「2人の荷物を預かろう。身軽な方が良いだろう?」
僕がそう言うと、リデルは気にしたふうもなく「はい」って感じで手渡してくる。
逆にモニカは、
「ななっ!? この荷物には着替えや下着も入っているっす!恥ずかしいっす!」
そう言えばそうか。
「リデルは良いか? 僕が預かっても?」
「良い。カケルなら大丈夫。」
それならと、リデルの分の荷物を僕の空間魔法『アイテムボックス』に入れる。
「消えたっす!?」
「空間魔法の『アイテムボックス』だ。物を収納できる。リデル、あの山の頂上付近まで転移する。掴まってくれ。」
目測で10キロメートルはあるだろうか。
僕はそう言いながら、モニカの肩に手を置く。
リデルが抱きついてきたが、いい加減僕も抱きつかれたくらいでは何も言わなくなってきた。
まあ、リデルは婚約者の一人ではあるし。
リデルが抱きついてきたのを確認した後に、イングスタル帝国の方向に見える山の頂上付近に転移した。
「ここはどこっすか!? すごいっす!」
一瞬で転移したことでモニカが騒ぎ出す。
山の頂上付近で比較的開けている。
グレンダ王国の王都が見え、そこから続く道も小さく見える。
「こうやって、ちょっとずつ転移していく。時には移動しながらだが、今日中にはイングスタル帝国の近くまでは行けるだろう。」
そこから何度か転移していく。
道程の半分くらい来たところで、見晴らしの良いところを選んで一旦休憩をする。
休憩のため、椅子やテーブルを出す。
日本に戻った時に、キャンプグッズを購入してアイテムボックスに入れていたものだ。
紅茶とクッキーなどの菓子もついでに出しておく。
甘いものに目がないリデルが早速口にする。
「なんすか、これ! すごい、美味しいっす!」
「カケルの世界のお菓子。特にスイーツは至宝。」
本当はリデルはスイーツが食べたいんだろう。今はちょっと手の込んだスイーツは食べにくいな。
屋外だし。
「ところで、モニカ。お前には『回復魔法』の才能が有るようなんだが、どうする?」
「本当っすか!? じゃあ剣の才能も!?」
「いや、残念ながら。剣の才能は人並みじゃないか?」
落胆したようにモニカが肩を落とす。
まあ、こいつは剣で強くなりたいって言っていたからな。
リデルに憧れているみたいだし。
「そうっすかぁ。近衛騎士の首席にもなると、そんなことまで分かるんすね。回復魔法を使える人も少ないっすし、自分は剣と回復魔法を極めるっす! でも自分、魔力はそれほど無いっすよ?」
確かにモニカの魔力は人並だ。
ついでに身体能力も他の騎士と対して変わらない。
毎日頑張っているようだが、体格がな。
「それなら、ニホンにつれていけば良い。私達も身体能力と魔力が上がった。」
そう言えば、異世界転移すると上がるとイブが言っていたな。
試してみるか?
ちょっとだけ行ってみて、戻っきて効果があるかみるか。
「じゃあ、ちょっと日本に行ってくる。すぐ戻ってくるからな。リデル。」
そうして、僕はモニカの肩に手を触れ、日本に転移した。




