第17話 近衛騎士の首席
「カケル様。一度グレンダ王国に戻りませんか?」
会社の建設は急ピッチで進んでいるが、それでもまだ時間がかかる。
アイリスやリデル、ティエルの3人もだいぶ日本に慣れてきたようだ。
その分、彼女達の整った容姿から街中に出るたびに、その辺のアイドルより注目を集め人気がある。
「そうだな。アイリス達もこっちに居たままというわけにも行かないだろうし、しかし、何か向こうで用事でも有るのか?」
元々、アイリス達は向こうの住人だしやることは当然あるだろう。
アイリスは第一王女という立場だしな。
「そうですね。私達は冒険者をしていましたが、その他に立場というものがあります。私は王女ですが、リデルは近衛騎士の序列2位、ティエルは序列5位です。一度、陛下に報告に戻りたいのです。」
何でもグレンダ王国には、軍を束ねる近衛騎士が序列7位までいるらしい。
近衛騎士は強いことで有名で、それが他国からの侵略の抑止力になっているそうだ。
だから、あまり不在にするのも問題があると。
しかし、リデルとティエルが近衛騎士ねぇ。
初めて聞いた。
リデルは『神速』のスキルの使い手、ティエルは『精霊魔法』の使い手とのこと。
「分かった。グレンダ王国に一度戻ろう。麗華に一言言ってから出るから準備をしておいてくれ。」
「分かりました。ありがとうございます。あとニホンの調味料を持って帰っても良いですか? 」
ティエルが僕にそう聞いてくる。
そう言えばティエルは調味料を大量買いしていたな。
日本の調味料は、グレンダ王国を含む異世界の物より種類が豊富で質が良いとか。技術の差か?
「私はスイーツ。あれは至宝。ぜひ持って帰る。」
リデルは日本のスイーツにハマったらしい。
だからスイーツを買い漁り、時間経過の無い僕の『アイテムボックス』には大量のスイーツを保管するようリデルに頼まれている。
どれくらいあるかって?
僕にも分からんよ。一店舗や二店舗どころの量じゃないことは確かだ。
ちなみにティエルから頼まれた調味料も入っている。
「私は、ニホンの電化製品という物が欲しかったのですが。電気というものが無いと使えないのでしょう? 魔力を転用できれば良いのですが。」
その辺は、今後の会社の研究開発部門の課題だな。
魔石や魔力をエネルギー資源として活用できれば、日本と異世界のお互いのためになるだろう。
もちろん悪用しなければ、だが。
電化製品と言っていたアイリスも、ちゃっかり日用品を購入している。
シャンプーやリンス、石鹸、化粧品類などだ。
「カケル様、移動先は私の妹のルミエールの部屋でお願いします。カケル様のことは知られていませんので、そこでカケル様は少しの間、お待ちくださいますか?」
「分かった。準備ができたら行こう。」
そう言った僕に、正面からアイリス、左右にリデルとティエルが抱きついてくる。
「いや、前から言おうと思っていたんだが、手で触れるとか手を繋ぐでも良くないか?」
「準備万端です!」
「早く行く。」
「さあ、行きましょう!」
僕はため息をつき、アイリス達と共に『グレンダ王国』に転移した。
僕達は、グレンダ王国のルミエールの部屋に来たが、室内には誰もいない。
ちょっと待てよ? ルミエールの部屋に僕が一人でいるのは問題じゃないか? 誰か知らない人が来た時に困る。
姿を見られても良いように、やはり『黄金の騎士』になっておくか。
一応『黄金の騎士』の姿になっておくと、しばらくしてアイリス達が戻ってきた。
「ただ今戻りました。カケル様。父がお会いしたいそうで、部屋を設けています。妹を治療してくださったお礼がしたいそうです。会っていただけませんか?」
礼などいらないが、アイリス達には世話になっているからな。
こちらも何も挨拶しないのは失礼だろう。
『分かった。お邪魔しよう。』
アイリス達に着いていき、城の一室に通される。
そこは華美ではないが、落ち着いた雰囲気の部屋だ。
グレンダ王の執務室だろうか?
部屋の中に、40歳くらい、いや三十代か?の男女がいる。
身なりが良いしグレンダ王夫妻だろうか?随分若いな。
男性の方が立ち上がり、僕に歩み寄る。
「よく来てくれた。余がグレンダ王国の王、アーク・グレンダという。こちらが妻のマリアンヌだ。まずは私達の娘、ルミエールを治療してもらったこと、本当に感謝している。」
そう言って僕に握手を求めてくる。
一国の王にしては腰が低い。
自分の娘のを助けてくれたことに対し、本当に喜んでいるのだろう。
僕としては好感が持てる。
「助けることができる命がある。なら助けたい、そう思ったから助けたまでです。」
僕は思ったことを言う。
いつまでも『黄金の騎士』の格好では失礼だな。
グレンダ王は、娘を助けた僕に真摯な態度で接してきているからな。
そう思い『黄金の騎士』の装備から私服に換装する。
「ふむ。思ったよりも若く、可愛らしい顔をしているのだな。」
グレンダ王の言いように、マリアンヌ王妃が「あなた。」とたしなめる。
「おっと、男に対し『可愛らしい』は失礼だったな。すまない。しかし、貴殿は年はいくつなのだ? アイリスと同じくらいであるか?」
やはり、日本人は若く見られるのか?
僕は23歳だが?
さすがにアイリスと同じくらいに見られるとは思わなかった。
だってアイリスは18歳だぞ?
「僕は23歳です。それと、先程も言ったように礼は不要ですよ? アイリス達にはいつも世話になっていますので。」
「アイリスから話は聞いている。しかし王侯貴族として、御に対して何も無しでは示しがつかないのだ。だから礼だけはしたい。分かってほしい。」
「分かりました。しかし最低限の礼で良いですよ? あなた方の体面が保てる程度で結構です。絶対に文句は言いませんので。」
僕がそう言うと、グレンダ王が『にこり』としか表現できないような満面の笑顔を見せる。
ちょっと、嫌な予感がする。
「そうかそうか。では、我々が対面を保てる程度の礼をさせていただこう。では、アイリスとリデル、ティエルの3人を娶っていただきたい。」
そうきたかぁ。
アイリス、リデル、ティエルは美人でスタイルも良い。
僕には勿体ない女性ばかりだ。
僕で良いのか? というのと、まだ僕たちが若くて踏ん切りがつかない、と思っているだけだ。
つまり僕の覚悟が足りないってことだ。
「カケル殿。いや、カケル。迷うことはないのではないか? アイリス達が望むことであるし、裕福な生活ができる程度の甲斐性が有れば、何も問題無い。」
僕も覚悟を決めるか。
実際に会社のことで、アイリス達にはいろいろ世話になったしな。
これからも一緒に頑張っていきたい。
「分かりました。僕で良ければお受けします。僕だけでなく、彼女達の幸せのためにも頑張ります。」
僕の言葉にアイリス達は三者三様、嬉しそうな態度を示してくれる。
「カケル。すまないな、無理を言って。しかし、アイリス達との結婚はアイリス達の希望でもある。これではカケルへの礼にはならんだろう。」
いやいや、十分だろ?
これ以上を望んだら罰が当たる。
「そこで、カケルを我が国の近衛騎士の首席に迎えたい。」
どうやら、まだグレンダ王の無茶振りは終わらないらしい。




