第15話 日本にファンタジー
行方不明だった西園寺財閥の一人娘、西園寺麗華が一週間振りに発見されたことで、大々的に報道された。
西園寺麗華の誘拐説もあったからだ。
さすがに異世界に行っていたとは報じられなかったが、彼女を助けたのが『黄金の騎士』であることが判明し、さらに話題となった。
西園寺夫妻との話を終え、一波乱あったものの、麗華を社長とした会社『ダンジョン・サーチ』を設立することにした。
僕は名ばかりの会長ということで表には出ない。
麗華には申し訳ないと思ったが、まだ『黄金の騎士』の影響力は予想できない。
『ダンジョン』がある以上、その不思議な力に『黄金の騎士』の存在を隠すことはできないだろう。
『黄金の騎士』が僕であることはまだ伏せておきたい。
会社の従業員は、西園寺財閥から人員を少し融通してもらう予定だが、西園寺静香、つまり麗華の母親も手伝ってくれるらしい。
社員は募集予定だが、危険人物に不思議な力を与えるわけにはいかないので、その人選は慎重にするつもりだ。
少なくとも犯罪歴のある者は採用したくない。
金貨を処分することで、数百億円の予算を確保できた。
西園寺財閥の財力を持ってすれば、予算に問題は無いのかもしれないが、自分でできることはやりたい。
ただでさえ西園寺財閥には世話になっているからな。
会社の場所は、広めの郊外の土地を確保した。
会社の方針として、ダンジョンにモンスターや罠がある以上、どんなに安全管理に配慮しても危険が有るとして一般への開放はしないことにした。
あくまで社員として探索し、資源を確保、利益を上げることが目的で、社員は手に入れた物を自分の物を会社に申告し、問題無い物は自分の物にして良いし、買取に出しても良いことになる。
まあ危険な物は手持ちにできないということだ。
手に入れた物によっては、かなりの大金を得ることができるだろう。
社員証というか、探索の許可証として冒険者カードを作る。
ダンジョンは僕が『最古のダンジョン』を置くだけで良いが、会社や社員寮、その他の施設の建設工事を急ピッチですすめられている。
広大な土地は、専門家の意見を参考に空間魔法の『切断』や『アイテムボックス』を使い、だいぶ工期を短縮できた。
〜〜とある掲示板〜〜
『西園寺財閥の一人娘、西園寺麗華だっけ?見つかったらしいよ。』
『確か誘拐じゃないかって言われてなかった?』
『それ、本当なん? っていうか一週間だっけ? どこに居たん?』
『さあ?でも、噂の「黄金の騎士」に助けられたって噂だぞ。』
『誰?「黄金の騎士」って?』
『ニュース見ろ。いろんなとこでもバズってる。』
『黄金の全身鎧を身につけてる。』
『突然消えたり、光ったり?』
『怪我人を治したり癌を直したとか。』
『何それ?作り話?漫画の見すぎ。』
『いや、目撃者も多く、テレビにも出てた。』
『魔法使い?空にも浮いてた。』
『おい!大変だぞ!』
『どした?落ち着け。』
『西園寺麗華が会社を設立するらしい!』
『それが?西園寺財閥なら有り得るだろ?』
『普通の会社なら、こんなとこで言うか! 「ダンジョン・サーチ」っていう会社だぞ!』
『あっ本当だ。ネットに載ってる。』
『何だと!?不思議アイテムや魔法が使えるようになるかも!?』
『新しいアミューズメントパークみたいなもの?』
『どうやら一般の人は「ダンジョン」には入れないみたいだ。社員のみらしい。』
『それで利益が出るのか?』
『何かすごいものも手に入るとか?それを一般にも販売できるものは販売するみたい。』
『ついに来た!異世界ものの時代が!』
『っていうかこれ、絶対に「黄金の騎士」絡んでるだろう?だって魔法だぞ?』
『噂では「黄金の騎士」が会社のトップみたいだぞ?』
『まだ会社はできてないみたいだけど、もう少ししたら募集があるみたいだぞ。』
『俺、応募するわ。それで一攫千金を狙う。』
『確かに夢があるよな。でもいきなりは少し恐いけど。』
〜〜都内、カケル〜〜
アイリス達3人を連れて都内で買い物をする。
今は3人とも目立たない私服を着ているから、一緒に街中を歩いているが、3人共が絶世の美女でスタイルが良いからすれ違う人が皆振り向く。
『あの3人すっごい美人よ!?』
『見たこと無いけど、アイドルか!?』
『一緒にいる男は誰だ?』
やはりすごい目立つなぁ。
日用品と、他にも衣類を購入して帰ろう。
「カケル。私はこの世界の美味しいものが食べたい。」
「良いですね。私も興味があります!」
リデルに続き、フードを被ったティエルがそんなことを言う。
アイリスも頷いているが、二人が密着してくるのは勘弁してほしい。
まあ、金貨の買取でお金には余裕があるからな。
どこかで食事でもするか。
『マスター。その道の先に新庄一太、近藤彩美がいます。』
おっ?あの二人と外で会うのは珍しいな。
それにしても二人一緒とは、デートか?
「おーい。一太、彩ちゃん先輩!」
僕の呼びかけに二人が振り返る。
「翔君!?」
「翔!?」
二人は驚いたようだ。
「こんな所でどうしたんだ? 二人共?」
「それはこっちのセリフだよ。翔。そちらの女性達は?」
一太達がアイリス達に目を向ける。
さすがに気づくよな。
三人共美人だし、何故か僕に密着しているし。
「あぁ、この人達は…」
「私達は、カケル様の妻ですわ!」
僕の言葉にアイリスが答える。
アイリスの言葉を聞いて、若干引き気味の様子だ。
「ハーレム!?」
「翔。それはどうかと思うよ?」
いやいや信じるなよ。二人共。
「ははっ。彼女のアメリカン・ジョークだよ! 三人は海外出身だから。」
「そうなの? 確かに綺麗な金髪や銀髪ね? でも日本語がすごく上手なのね?」
二人共、食事がまだらしいので高級レストランに移動する。
「翔。ここ高いんじゃないの? 大丈夫?」
心配して一太がそんなことを言う。
「まあ、たまには良いだろう? ここは奢らせてくれ。丁度臨時収入があったからな。」
二人から話を聞くと、どうやら転職を考えているらしい。
うちの会社は、ほぼブラック企業だからな。
気持ちは分かる。
「それで?どうするんだ?二人共。」
「それを翔とも相談したかったんだよ。今の会社にいても先行き不安だし、何よりやりがいを感じないんだよね。」
僕も、今の会社を退職して「ダンジョン・サーチ」に専念したいと思っていた。
二人を誘うだけ誘ってみるか?
二人なら秘密を漏らすようなことは無いだろう。
「僕も、今の会社は退職して会社を設立しようと思っている。転職を考えているなら、僕が推薦しようか? と言ってもまだ会社はできてないけど。」
二人は顔を見合わせ、僕に先を促す。
二人に「ダンジョン・サーチ」という会社を設立予定であること。
今後社員を募集予定であること。
ダンジョン探索を主に、不思議なアイテムなどを入手、利益を得る予定であることを二人に説明する。
当然、秘密であることを付け加えてな。
「ち、ちょっと待ってくれない?翔君?」
「そうだよ!? 『ダンジョン・サーチ』と言えば、西園寺財閥の令嬢が社長を勤める予定だって話だよね? ネットやニュースで大騒ぎしてるよね?」
「しかも、あの会社。実はあの『黄金の騎士』が最高責任者だって噂があるわよね。何でも、会社の設立費用を個人資産で支払ったっていう噂もあるくらい。まさか?」
さすがに気づくよな。
まあ、詳細は追々でよいだろう。
「それで? 二人は『ダンジョン・サーチ』に就職するのか? それと、就職するならどんな仕事がしたい?」
「僕は探索をしたいけど、買取とか会社の運営もしたいかな。可能なら就職したい。」
「私も探索と、不思議なアイテムとか開発に興味があるわ。私も雇ってくれる?」
二人は『ダンジョン・サーチ』への就職に前向きのようだ。
これで、『ダンジョン・サーチ』のメンバーで確定しているのは、僕と麗華、アイリス達3人に一太、彩ちゃん先輩かな。
いきなり大所帯にする必要はないし、会社施設の維持管理を含めておいおい採用していこう。




