救えぬ歳月
中学3年生15歳の天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
再びゆっくりと寝台に、横になる母親の姿を見て、渚冬と湊は思わず不安そうに顔を見合わせた。
母は隠すのが上手だった。
どんなに体調が悪いときも平常運転ですよ、という風に振る舞い、それを兄弟は見抜くことが出来なかった。
今回も、本当に物凄く調子が悪いのか、それとも本当に心配させたくないからなのか、それが見分けられなかった。
「湊が人間界に修行に行くって聞いて凄くびっくりしたわ。しかも、関西だなんて。
たこ焼きとか、お好み焼きとか、美味しいものが沢山あるみたいよ?」
「「関西??」」
初めて聞いた地名に二人揃って首を傾げたのを横目に見て、凛は優しく微笑む。
「そうよ。面白いものが沢山あると思うから、修行も頑張って欲しいけど、人間界の文化とか生活とかを知るってことも大切だから、そういう面でも、観光も楽しんできてね、湊。」
「は、はいっ、母上!頑張ります!」
「関西、か……僕は“関東”だったから、少し羨ましいな……」
張り切って拳を握りしめた湊と、関西がどんな場所か想像をふくらませる渚冬。
それを優しく見守る母親、凛。
その3人を気にも止めず幸せな夢の中をさまよい続ける桜。
それは、稲荷家の、幸せな家族風景だった。
ーーーー例え、その母親が、寝台に横たわったままの生活が5年間続いているのだとしても。




