歳月と神の事情
中学3年生、15歳の天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
“稲荷”と書かれた表札の前に立ち、玄関の引き戸の前に立ち深呼吸する。
何度か手の震えを押し殺し、渚冬はスッと引き戸を開けた。見慣れたいつもの景色が渚冬を迎い入れる。
「ただいま戻りました」
渚冬はそう声をかけ、草履を脱ぐ。
そうして家内へ一歩踏み入れた瞬間、
「渚冬兄!!!帰ってきたの?!」
ドタドタドタ、と音を立てて階段から弟の湊が降りてきた。
思わず動きが停止してしまった渚冬の目の前に湊が駆け寄り渚冬を抱きしめた。
「どこ行ってたの、渚冬兄!!
迷子になっちゃったんじゃないかと思ってたよ?!」
「ご、ご、ごめん。」
きつく抱きつき離れない湊に渚冬はたじたじになりながら頭を撫でた。
子供らしいその言動は、大人びた雰囲気を纏う渚冬とは正反対だった。
「母上と、桜は大丈夫だったかな?」
「桜は寝てるよ。母上は、ーー」
問いかけに、袴の袖に顔をうずめ言葉を途切れさせてしまった湊に渚冬は優しく笑いかけた。
「そうか。ありがとう、湊。さすがお兄ちゃんの弟だな。」
「へへっ、任せといてよ!!あ、あとねあとね!!」
はちきれんばかりの笑顔で湊は、
「俺も人間界に修行に行くことになったんだ!!」
「もう、かい?」
驚愕に渚冬は目を見開いた。
渚冬は一年前、修行に行ったが湊はその時は同行せず権能を極めてから行くという事が決まっていた。
あれから一年、もう湊が修行に行く日が来るとは。
月日の流れの速さを感じる。
「でも、桜もまだ小さいし、母上もーー」
「桜と母上のことは心配しなくて大丈夫だよ。お兄ちゃんに任せな。湊は修行に専念するといいよ。人生のうちの一回しかない、貴重な経験だからね。」




