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絶望の2年間

中学3年生、15歳の天音雫です。


何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。

牢に入れられたまま、2年の時が過ぎた。


半年で再開できたはずの弟に、何も知らない桜に、癒えぬ病にかかった母上に、2年間、会えなかった。


ずっとずっと自分の犯したことを、自分の迂闊さを呪って、憎んで、夕星のことを考えては絶望に打ちのめされた。











牢に入れられて3日後、菜月が夕星の容態について説明してくれた。


治療士は全力を尽くしてくれた。


夕星を覆っていた氷は全て溶かし、呼吸も脈拍も全てが、正常に戻ったらしい。


ーーーーただ、意識だけを除いて。


意識だけが戻らない。


治療師は原因が分からず解決策もわからず、困惑しているのだという。


(あぁ、僕のせいだ)


何か少しでも変化があればすぐに教えてほしい、と菜月に頼み、ーーーーなんの報告もないままに過ぎた2年であった。


2年間、渚冬はずっと自分自身に押しつぶされていた。


あの日、辺り一帯を氷漬けにしてしまった時の周りの神々の、怯えた表情が、凍っていく夕星の最期の弱々しい笑みが、壊れた映写機のように何度も頭の中にフラッシュバックし、絶望の海に溺れた。


そんな、毎日を、送って。


日付感覚も曖昧になっていた。


菜月は、本来ならば1年で終わりのはずの執行人としての仕事を延長し、毎日渚冬の牢を訪問した。


そして、何をするでもなく、ただそばにいて悲しげな表情を浮かべていた。


渚冬は、それをいつも、夕星の良い報告が来ないものかと一縷の望みを持って見ていた。


しかし、それを願う資格は、渚冬には、なかった。


己の大罪を、運命は許してくれない。


2年がたったと、菜月に聞かされた翌日のことだった。


渚冬が閉じ込められている牢の遠くから怒号が聞こえてきたのは。


「何でやねん!!

入・れ・ろ・く・だ・さ・い!!!」


「こ、困ります……っ!」


「いい加減渚兄に会わせてくれへんか?!

俺2年も待ったやろ!」


「で、ですが……」


「ですが何やねん!今すぐそこどかないとこの扉木っ端微塵にしたるで?!」


「わっ、わかりました、わかりましたからどうかご勘弁をっ!」


ドタドタドタドタという荒い足音。

そして、


「渚にーーーーうぉおぁぁぁ!」


勢いよく走りすぎて止まれなくなりそのままの渚冬のいる牢の鉄格子に衝突する。


「いっだぁぁぁ!」


「みな、と…?」


ぶつけた頭をさすり涙目になっているのは、最愛の弟、湊だった。


湊は渚冬の声を聞くなりパアッと花が、咲くような笑みを浮かべ、


「渚兄!!ずっと会いたかったで!!」


「ほ、本当に湊かい………?

喋り方が違うような………」


「これなぁ、関西に修行に行ってきた時に方言?てのが移ってもうたねん。でも渚兄への愛は変わらへんで!!」


青髪、碧眼、太陽のような笑顔。


口調は違えど、そこにいるのは紛れもなく湊だった。


鉄格子の隙間から、思わず手を伸ばし、湊の髪に触れる。


蒼色。綺麗な、宙色。


伸び切った自分の、白髪とは違う。


「渚兄……死んだ魚の目ぇしとるで………」


「ふふ、ごめんごめん」


悲しげな笑みを浮かべた兄に湊は拳を固めた。


「待っててな、渚兄!!

明日にはこんな所出られるように俺が一肌脱ぐから期待しといてや!」


「ふふ、僕は大丈夫だよ、湊?」


張り切る湊に渚冬は笑いかける。


湊は優しいし、行動力もある。


しかし、自分の犯した罪の償いは、湊の東奔西走で変わるものではない。


そんな渚冬の思いとは裏腹に、


「今まで散々渚兄に助けてもらったんや!今度は俺が助けたる!」


その時、遠くから声が聞こえてきた。


「侵入者?一体誰がこんなに荒らしたの……?」


「も、申し訳ありません!

とてもとても強引なお方でして……」


「…………口説かれたの?」


「ち、違います!あの、ぶ、物理的に強引って意味で……」


「もう、私、怒りましたよ?プンプンですよ?」


「も、申し訳ありません!!」


会話を交わす二人の女の声が近づいてくる。


「やばっ!逃げへんと!

それじゃあ渚兄、また明日な!!」


さっと身を翻し去っていった弟を渚冬は複雑な感情で見つめていた。





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