操られた魔女
中学3年生、15歳の天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
「夕星、外が……何か、暗くなってきてる気がする」
「ーーーーマジで?」
「うん、マジで」
「おかしい、よね」
「ああ、おかしい。何もかも」
あたまに手をやり考え込む夕星と向かい合って座る渚冬は恐怖を押し殺し気丈に、冷静に振る舞おうとしていた。
先程泣いたせいで失った威厳を、なんとかして取り返そうとむきになっていた。
「まだ時雨時の時間じゃないし、何よりーーーー」
「何より、暗くなり方が、全く違う」
あとを引き継ぎ、夕星は立ち上がり窓の外を覗き込む。
「渚冬。………俺、お前と親友で本当に良かった」
「き、急に何?!もうすぐ死んじゃう時みたいなこと言わないでよ……!」
窓の外に目を向けたまま沈んだ声を出す夕星に、思わず不安になり、立ち上がり窓へと駆け寄る。
「何が、あった、の、って、ーーーーえ、」
言いかけ口を噤む。
辺りは漆黒だった。
何も見えない。
まるでトンネルの中にいるようだった。
「ーーーー渚冬。俺、わかっちゃったかもしれない」
「え、」
「俺達が避難しなきゃいけなかった原因」
息を呑む。夕星の目に光がなかった。
その目には渚冬は写っていない。
遠い昔のナニカを写している。
「俺、こんな風になるの、見たことあるんだよな。すげえ小さい時だけど。衝撃的過ぎて、怖すぎて、今も鮮明に記憶に残ってる」
窓枠を強く握りしめ、窓の外を見つめる夕星の声が震えている気がした。恐怖がこみ上げる。
抑えきれない恐怖が渚冬の理性を破壊しようと迫りくる。
「ーー昔、俺のばあちゃんがまだ若いとき一人の女の子が時雨夜に迷い込んだらしい」
「っえ、う、うん」
突然語りだした夕星に狼狽しながらも相槌を打つ。
激しく揺れる狼車の中、夕星の声だけが響き渡る。
「その女の子は神じゃなかったから、神としての権能は使えなかった。
だけど、権能みたいなーーいわゆる“魔法”ってやつを、使えたらしい。
だから、その女の子は、”星彩の魔女“って呼ばれた。
その子の金髪が星みたいだったから、それになぞらえて。」
一際大きく狼車が揺れる。
立っているのが危険なのではないかと思うほどの揺れ。
不安げに夕星を見つめるが夕星は座る素振りを微塵も見せない。
「その子は、長い事うまくこの世界で暮らしてた。
だけど、突然おかしくなった。
ーーーー俺が生まれて一年たったときだったらしい」
遠くで地鳴りのような音が聞こえる。
狼車が加速する。
ーーーー何者かから逃げているかのように。
「何もかも破壊して、神を殺し始めたんだ。
ーーーー乗っ取られたんだよ。
突然、誰か、邪悪な意図を持ったやつに」
また耳鳴りが聞こえる。先程よりも大きく、長く。
地鳴りのような音が近いてきているような気がする。
「だから、ーー封印した。氷鬼みたいに。
俺のばあちゃんはそん時に怪我を負った。
大勢の神が犠牲になりながら封印した。
俺はその時の空の暗さを、母さんの腕の中でみてた。」
ようやく、夕星は窓から目を離し渚冬に、目を向けた。
「多分俺達が避難してるのはその”星彩の魔女“の封印が解かれて、ーーーーまた誰かに操られてるからだと思う」
「そんなっ……!」
「多分、」
愕然とした渚冬に夕星は諦めたような、目を向け、言葉を重ねた。
「多分、”星彩の魔女“を操ってる奴は、お前を狙ってる」
その真意を理解した瞬間、全身をぶん殴られるような衝撃、そして、
ワオォォォォォオォォォォン!!!!
狼の遠吠えと何かが破裂するような音が聞こえーーーー、
突然の浮遊感、そして次の瞬間には渚冬は狼車の床に勢いよく叩きつけられ意識を飛ばした。




