別れの色
中学3年生、15歳の天音雫です。
何かといたらない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
受検受かりました!!
しばらく投稿止まっていてすみません。
また投稿していこうと思っていますので、読んでいただけると嬉しいです!!
「ーーーーじゃあ、気をつけるんだよ。………着替えは持った?シャンプーは?歯磨きコップは?」
「大丈夫、全部持ったよ。
…………もう10回も確認してるよ?」
「念には念をっていうからね」
「成程、たしかに……
歯磨きコップって、10回も確認するほど重要なの?」
「重要だよ、多分。ほら、虫歯になったら大変だろう?」
稲荷家の玄関の前、渚冬と湊は他愛ない会話を交わし合っていた。
これから会えない半年間を思うと渚冬は心が締め付けられるような思いだった。
大人の半年間は短いかもしれないが、子どもの半年は長いものだ。
「ーーーー母上と桜は任せて。
湊、関西、楽しいところたくさんあるみたいだから、あんまり頑張りすぎずに頑張ってね。」
早く行かないと狼車が待ってるかもしれないね?と笑いかける兄の姿に悲しげな表情を浮かべながらも、
「うん、ありがとう、渚冬兄。」
そう返事をして大きな鞄を抱え直し、一歩、後ろへ下がる。
「ーーーーそうだ、最後に聞きたいことがあるんだけど、いいかな、渚冬兄?」
小首をかしげた兄に湊は自分の髪を、つまんだ。
「渚冬兄、どうして急に黒髪にしたの?」
着物にも黒が付いてるし……と不思議そうな顔をする湊に、
「そ、それは、き、昨日湊の無事を祈願して、習字をしたんだ。その、しゅ、習字に合わせて髪も黒くしたほうが縁起がいいと聞いてね…、」
「そうなの?!」
わざわざ俺のために?!と目を丸くする湊に渚冬は言葉を重ねた。
「そ、それで昨日、墨とか染髪剤買ったりしにいってたんだけど、途中で夕星に捕まって、帰ってくるのが遅くなっちゃったんだ」
必死で説明する渚冬を瞠目しながら見つめる湊の表情から、普段の明るさが消えたように思えた。
訝しく思った渚冬だが、その答えはすぐに得られた。
「渚冬兄とおそろいの髪色、好きだったんだけどな……」
いつもとは裏腹に悲しげな表情を浮かべる湊に渚冬は胸が鈍く疼くのを感じた。
そこまで髪色が同じであることを好いてくれているとは思っていなかった。
いくら自己防衛のためとはいえ、考えが浅かったのだ。
渚冬は自分の考えの浅さを呪った。
少し考えれば、わかること、なのに。今回のことも、
…………書架での、ことも。
長男ならば、もっと物事を冷静に考えられるようににならなければいけない。
人の気持ちを。あらゆるリスクを。自分の行動が他の神に、どんな影響を及ぼしてしまうのかを。
やめておけ、と心が叫ぶ。
出来ないことを約束するなと、お前はそんな約束破りの神になりたいのかと、まっすぐに糾弾する。
しかし、目に寂寥感を宿す湊に、渚冬は思わず声を出していた。
「………湊が無事に帰ってきたら、お祝いとして髪色を元の青色に戻そうと思ってるんだ」
「ほんと?!」
希望に満ちた目で、湊はガシッと渚冬の両手を掴んだ。
「俺、絶対いっぱい学んで無事に帰って来るから、半年間待っててね、渚冬兄!
渚冬兄、俺のために髪染めてくれたりしてくれるのは、凄い、嬉しい。けど、……」
寂しそうに、眉尻を下げる。
「…………けど、やっぱり俺は、黒より青が渚冬兄にしっくりくるし、何より、」
こんなに凄い渚冬兄と兄弟でいることの証みたいで、嬉しいんだ。
破顔して、そう小さく零す湊に、渚冬は言葉が何も出てこなくなった。そこへ、
「ーーーー別れに水を差してしまったようで申し訳ありません。出発の準備が整ったため、迎えに上がりました。」




