東奔西走・現の証明
中学3年生、15歳の天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
投稿のスピードがカタツムリで本当にすみません。
定期テストが終わって少し一段落したのでまた少しずつ投稿していこうと思います。
受験も近いですが、受験勉強とちゃんと並行して頑張っていきたいと思います。
いつも読んでくださっている方、本当にありがとうございます。とても励みになっています。
これからもよろしくお願いします。
「く、そ……あいつ、何処にいるんだよ……!」
今は亡き祖母の約束を思い出し、焦燥感に駆られた夕星は今、ひたすら渚冬の家へと走っていた。
祐月叉から渚冬の家まではそう遠くない。
はずなのに、はしっても走っても辿り着かないような気がして、もどかしさに夕星は唇を噛んだ。
夢であってくれ、と祈る。
久遠書架に、行ったのも、渚冬とはぐれたのも、白髪の男に、氷鬼に会ったのも、全て全て、くだらない夢であってくれ。
ただ自分がふらっと立ち寄った祐月叉でそのまま寝落ちしてしまって、渚冬のことを思いながら寝たから、夢に出てきてしまっただけだ。きっと、きっとそうだ。
氷鬼も、転移も、現実にあるはずがない。
夢だ。きっと、夢だ。夢の、はず、だ。
震える手足を動かし、その思いにすがり、夕星は走る。
夢か否か、その真意を確かめるには渚冬の家に行くしか無かった。
もし渚冬の家に押しかけ、その名を怒鳴るように呼んで、困惑顔で渚冬が出てきたら、あれは夢だ。
でも逆に、渚冬が出てこなかったら。家に不在だったら。
ーーーーあれは、紛れもない現実である。
そして、渚冬が家に戻っていないということは、現実をさらに悪くさせることにしかならない。
最悪の可能性が頭をよぎり強く振りかぶる。
大丈夫だ。きっと夢だ。渚冬が出てくる夢なんて、今まで死ぬほど見た。
「っ、着いた」
”稲荷“の表札が掲げられている立派なお屋敷。
夕星がこの敷居を跨いだことは、数少ない。
いつも、祐月叉で会っているだけで、お互いの家に行くことは滅多に無かった。
病気の母と生まれたばかりの娘がいる家に押しかける罪悪感に苛まれつつ、大切なことを確かめるために、怒鳴りたい気持ちを抑え、
「っ、、渚、冬……?いる、か?」
震える声で呼びかける。情けない声は小さく反響して響いていった、ような気がした。
すぐに、階段を駆け下りてくる足音が聞こえた。
夕星は安堵した。やはり、夢だったのだ。ガラガラ、と音を立てて玄関扉が横に開き、
「えっと、どなた様、ですか…?」
「っ、」
そこに立っている人物を目にした瞬間夕星は言葉を失った。
扉から半分顔を出して不安そうにしているのは、渚冬にそっくりの青髪、碧眼の少年。
しかし、遥かに渚冬よりも幼く見え、何よりーーーーーー
「あ、もしかして渚冬兄の……庵家の、方ですか……?
すみません、渚冬兄は今不在で………」
呆然と立ち尽くす夕星を前にしてしどろもどろに言葉を継ぎつつ、扉を開いて渚冬と瓜二つなその全身を現す。
「きっと、もう少ししたら戻ると思うので、どうぞ上がってお待ち下さい。もうすぐ時雨時ですから……」
眉を下げて小さく手招く少年こそ、渚冬がいつも自慢げに話をする弟、湊であった。
渚冬がまだ、帰ってきてないなら。夢では、ない。
「っ、急に押しかけてごめんな!渚冬は俺が連れ戻すから!!」
「えっ」
顔の前でパンっと手を合わせ頭を下げる夕星に呆気にとられる湊。
二人の頭上の空が一瞬にして黒い雲に覆われていく。
「待ってろ弟君!不甲斐ない兄ちゃんは俺がビシッと叱っといてやるから!」
「え、あ、ちょ、ちょっと、待っーーーー」
「わざわざ出てくれてありがとう!またな!」
まさに、光の速さで夕星は渚冬の敷地の外へと駆け出し、その足で今度は己の家を目指していた。




