禁じられた森
中学生3年生15歳の天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
何度かくしゃみをしながら進んでいく。
月華を見つけようと、奥へ奥へと向かう足取りが、寒さのせいか、疲労のせいか、次第におぼつかなくなっていく。
一体、何処にあるんだ。
霞がかったような脳を必死に動かしその問いを反芻する。
突然、渚冬は電流が流されたように止まった。
足元に、枯れかけた花を見出したから、ではなく。
その花が霜で覆われていたから、でもなく。
「っ、ぁ……」
いつしか渚冬の周りにある木々の枝には雪が積もっていた。
渚冬が今こうして踏みしめている大地も、凍っている。
渚冬の眼の前には、雪の降らない時雨夜では幻ともいえるほどの、白銀の雪景色が広がっていた。
どうして今まで気づかなかったのだろうか。
鈍る思考を動かし後ろを振り返れば、そこには何の変哲もない、雪も氷も存在しない森の姿がある。
ここが、境界のような場所なのだろうか。
もしかしたら、境界を超えた先、雪景色の中に月華は咲いているのかもしれない。
こちらの森に、ないのなら考えられるのは向こうの森だ。
そう確信し、一歩、雪景色へと踏み出したとき、耳元に夕星の声が蘇った。
『ーーーー渚冬。雪があるとこには行かないほうがいいってよ』
『ーーーーどうして?』
『俺のばーちゃんがそう言ってたから。何でも、氷鬼が住んでる森には、雪が降るらしいんだってさ』
『…………』
『あ、お前信じてないだろ』
『………本当なの?』
『あのなー、俺のことは信じなくていいけどよー、これはばーちゃんが言ってたことだぜ?
俺のばーちゃんのことは信じれるだろ?元”執行人“だったんだからさ』
ゆき。雪。雪景色。時雨夜では、有り得ないはずの。
その瞬間、渚冬の脳内で警鐘が鳴った。
引き返せ、戻れと叫んでいる。
ここは、紫乃宮は、氷鬼が住まう森だったのだ。
今ならまだ引き返せる。まだ、間に合う。まだ何も起きてない。無事だ。はやく、はやく戻らなければーーーー
「ーーーー見つけた」
「っ!!!!」
渚冬が踵を返して来た方向に戻ろうと駆け出した瞬間、森は一瞬にして白に染まっていた。
平地を駆けようと勢いよく出した足が氷へと姿を変えた地面を滑り、バランスを崩し、前のめりに転んだ。
渚冬は思い出す。何かあれば、名前を、呼ぶのだと。
あの場所は本来神の入っていい場所ではないと。
こういうことだったのかと今更その真意を噛み締めながら、凍った地面から素早く起き上がり、
「っ、京さん!京さん!お願いですっ!!助けてくださいっ!」
涙をこらえて叫ぶ。後ろに人の気配がする。
渚冬に向かって『見つけた』と、そういった人が。
耳にしたのはたったの一言。
しかし、その一言に魔力がこもっているかのような、言の葉で人を殺めてしまえるようなそんな印象を渚冬は抱く。
故に、名前を呼ぶ。助けを呼ぶ。何かあったら、と言っていた。
今はもうその何かが起こっている。




