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最期の約束

中学3年生15歳の天音雫です。

何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。

「っ、は」


気付けば夕星は、夕暮れの祐月叉に一人で立っていた。


夕星の髪色と同じ、橙色の太陽の光が祐月叉に咲き誇る花々を優しげに照らしている。


空は朱色と紺色のグラデーションになっており、その風景は実に幻想的、なのだが、


「どういう、ことだよ……」


そんな風景に目をやっている暇も余裕も、今の夕星には存在しなかった。


再び吹き出した冷や汗が背中を伝うのを感じる。


おかしい。確実に自分はさっきまで、久遠書架にいたはずだ。


あれだけ夢中になって本を読んでいた時間が、渚冬と、交わした言葉一つ一つが、鮮明に覚えているのに夢であるはずがない。


駄々をこねた夕星を見つめるあの困ったような笑い顔もこの目にしっかりと記憶している。


いや、それは渚冬は自分が何か言うたびいつもそんなふうな顔をしているから記憶しているだけかもしれないが。


それはそれとして、だとしたら時間が経過しすぎだ。


久遠書架に連れて行ってもらったのはまだ太陽が、真上に登りきって間もないとき。


自分が何時間もこの誰もいない時祐月叉で眠りほうけていたとは思い難かった。


………こう見えて、夕星の眠りはいつも浅いほうなのだ。


「なら、やっぱり、」


乱雑な思考が一つにまとまる。


瞼の裏に、衝突しかけた白髪の男の姿が浮かび上がる。


長い白髪で、白い着物、の………


「ちょっと待てよ」


思わず口を抑えた。そんなはずはない。

でも、もしかしたら。


その可能性に思い当たり夕星の顔が青ざめる。



『夕星。お主はそそっかしいところがあるからのう。もう一度、行っておくぞ。”氷鬼“には気をつけるのじゃ』


記憶の中で、亡き祖母の言葉が、蘇る。


亡くなる直前まで、夕星にそう、忠告していた。


『奴は、長い白髪に白い着物を身に纏い、全てを氷に包み、この土地を永久凍土へと変貌させるのじゃ』




『そんな悪い奴がいるの?

しっこーにんさんは、その神のことやっつけてくれないの?』



『ならぬ。あやつには何人たりとも近づくべきでないのじゃ。あやつは遠く離れた森に潜んでおる。

こちらから突かなければあちらも無闇矢鱈と危害をくわえることは恐らく無いだろう。

なにせ、封印があるからのう』



『そーなの?なら安心だね!』


『わしが何のためにこの話をしてるのかわかってないようじゃのう。……………夕星。』


『なあに?』


『あやつの封印はいつ解けるかわからない。何か封印の抜け道を見つけてしまうかもしれない。もう一度封印をかけるには、わしはもう弱りすぎた。いつ、こちらに来るか、わからない』


『俺、どうすればいいの?

そいつのこと、燃やせば良い?』


『…………命が危険な時は、な。』


『わかった!』


『しかし、夕星よ。

あの氷鬼が住んでる森には絶対に行くな。誰かのうまい言葉にたぶらかされることのないようにな。事実、あやつの住んでる森はちと幻想的すぎることがある』



『そーなんだーー!

俺、いつか行ってみたいなー!』


『だから、行ってはならぬと……まぁ、良い。とにかく、』












『”紫乃宮“には絶対に近づかないようにな。これは、わしとの、…………最後の約束じゃ』


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