どうしても
中学3年生15歳の天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
稲荷ぐるみ3をこの氷華の絆編と同時進行で投稿しようと思っていたのですが、受験勉強との両立と時間不足により難しくなってしまいました。ごめんなさい。
受験が終わって落ち着いたら稲荷ぐるみ3を投稿していこうと思っているので、気長に待っていただけるととても嬉しいです。いつも読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。受験を乗り越える原動力になっています。これからも頑張ります。
「どんな病も治せると言われる、満月の晩に咲く花、”月華“だよ」
「どんな、病も……?」
渚冬の目に希望の光が、宿る。
それを見て、男は頷き、
「その、森……紫乃宮は、どこにあるんですか…?」
その問いに、男は満足気に目を細める。
一振りしたその指に、紫色の光が宿る。
「お望みならば、ーーーー転移してあげよう。君が行きたいと願う、紫乃宮まで。」
頭に片手を、もう片手に紫光を宿す男に、
「っ、お願いしますお願いしますお願いします!!
僕を、その紫乃宮に転移してください!!その花を!!
必ず母上に、届けたいんですっ!!」
「そ、そこまでしなくても……」
「本当に、絶対に、届けたいんです……寝たきりの苦しそうな母上を助けたいんですっ……!」
土下座をしだした渚冬に目を見開き驚きながらも、淡く光るその手を渚冬の背中に当てたのは、その真剣さが届いたからで。
転移の呪文を唱えるのは親切心からで。
「因みに、紫乃宮ではここと時間がずれてる。今は夕方頃だ。ーーーー今日は運良く満月の晩だ。
ーーーー君がその花を見つけられることを祈っている。」
励ますような、願うような、その声色は、真に渚冬の激情に胸を打たれたからで。
「そうだ、最後に。私の名前は京。綾羽 京だ。紫乃宮で何かあったら私の名を叫ぶんだ。
ーーーーあの場所は、本来神の入って良い場所じゃないからね」
そんな忠告をしてくれるのも、きっと、渚冬のことを、幻の花探しを、母の治療を、助けたいと思ってくれているからで。
このときの渚冬は、そう信じて決して疑わなかった。
久遠書架が紫色の光で満たされる。
本棚にずらりと並んだその一冊一冊が、燐光に照らされ、転移の様子を見守る。
そして、ーーーー
光が、爆発的に膨れ上がったと思った瞬間、久遠書架のなかを風が吹き抜け、光が、音もなく、一瞬で弾けて消える。
そして、渚冬の姿も。
残された男、京は、
「ーーーさて、どうなるかな。
稲荷家の長男、稲荷 渚冬。」
口元に着物の袖をあて、無意識につり上がった口角をそっと隠すのだった。




