落下&すとっぷ
中学3年生15歳の天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
脚立をつかんでいた片手に重心を乗せていたため、バランスを崩す。
焦りで足を踏み外し、本を抱えたまま、脚立から落下した。
高さにすると、脚立全体の長さが約8メートル。
渚冬が足を踏み外した場所は、その脚立の真ん中より上くらいの場所。
結果、地上ーーというか床から約5メートルほど上の地点から渚冬は落下した。
全身を覆った束の間の浮遊感と、感じる己の重力による落下、近づく地面に思わず強く目を閉じた、その瞬間だった。
「わ、危ない危ない……大丈夫かな?」
突如として落下が止まる。恐る恐る目を開けると、
「ひ、」
地面追突まであと数センチのところで渚冬の体は重力に抗い落下をやめていた。
目を見開き、悲鳴をこらえる渚冬の全身を、淡い紫色の光が覆っている。
そして目の前に、
「こんなに小さい子があんなに高い脚立に登るなんて…………しかも、重たそうな本を抱えて………怪我はないかな?」
手が差し伸べられた。
渚冬はその手を差し出した主の顔をおずおずと見上げた。
色素の薄い瞳と、視線が交錯した。
優しそうな目元に黒縁のモノクルが知的な印象を与える。
何者にも染まらぬ純白の髪を肩ほどまで伸ばし、同じく潔白の着物をその身に纏っていた。
「………大丈夫、かい?」
固まったままの渚冬に、心配そうに、着物の男は問いかける。
「っ、あ、だ、大丈夫、です」
「それは良かった。ーーーーでは、」
男が指を一本振ると、渚冬の体を覆っていた紫の燐光が消える。
と同時に、ゆっくりと残り数センチよ距離を降下、丁寧に地面へと降ろされ渚冬は地面に座り込んだ状態になった。
「どこも怪我がなさそうで何よりだよ」
「は、はい、ありがとうございます」
差し出してもらった手を握り、体勢を立て直そうとする渚冬に、
「駄目じゃないか、あんな高い所で本を読んでいたら。危ないよ?」
「す、すみません、夢中になりすぎてました」
顔をしかめてみせた男に渚冬は片手に本を、片手に男の手を握りつつ恐縮した。




