威厳を
中学3年生15歳の天音雫です。
何かと、至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
それから数日の間、湊は人間界へ修行に行くための荷造りで忙しそうにしていた。
憧れと心配と期待と不安とがごちゃまぜになり、やや情緒不安定の湊を渚冬は心配しながら見守った。
母は、
「渚冬もあんな感じだったわよ?」
と笑っていたが、やはり渚冬は心配であった。
特に、関西という自分も知らない異界の地に行ってしまうことが、何より怖かった。
原因不明の病に侵され寝たきりの母、生まれて間もない桜、人間界に修行に行ってしまう湊。
すべてが、渚冬にとって心配でたまらなかった。
それでも、それを表に出すことはしなかった。兄の威厳を保ち、夕星に弱みを握られないようにするために。
(夕星は弱点があると、すぐにつけこんでくるからなぁ……)
あの悪戯っ子な笑みを思い出し、渚冬は嘆息した。
ついに、湊の出発は明日に迫っていた。
期限は半年間。半年、湊には会えない。
「…………だめだ、」
考えれば考えるほど気が滅入るので、渚冬は頭を、そして気持ちを切り替えることにした。
心配事の考えすぎで、鉛のように感じられる足を無理矢理動かし、部屋を出て、家の玄関へと向かう。
一瞬、行く先に迷う。
しかし、その時渚冬の頭にふと名案が浮かんだ。
「少し、出かけます。すぐに戻ります。ーーーー行ってきます、母上、湊、桜。」
玄関の扉を閉める前、誰にも聞こえない小声で、小さくそう呟き、渚冬はノロノロとした足取りで目的地へと歩んでいった。




