桜の花びら
中学生3年生、15歳、天音雫です。
物語の時系列がおかしいとは思いますが、渚冬の過去編(番外編)を投稿していこうと思います。
稲荷ぐるみ3と同時進行でゆっくり投稿していく予定です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
テストが、近かったり受験勉強があったりするので投稿頻度がかなり不安定です。すみません。
それでも読んでいただける方がいると本当に嬉しいです。勉強も頑張りつつ夢も諦めず進んでいきます。
よろしくお願いします。
ふわりと春の暖かな風が渚冬の鼻をくすぐった。
桐ヶ谷の赤い鳥居の上に、片足を立てて座る渚冬は静かに瞬きをした。
外からは結界で何も見えていないが、もし結界がなければ、通行人が見れば白昼夢だと思うであろう。
そんな非現実的な風景を生み出す彼は鳥居の上から、先程から何時間も街を見下ろしていた。
激動の神代事件からはや2ヶ月、季節はすでに春へと移ろっていた。
渚冬の目の前を、桜の花びらが1枚、ゆっくりと舞い落ちる。
それを何気なく、渚冬は手に取った。桜の花びらを見ると、渚冬はいつも、同じ名を宿す最愛の妹、桜を思い出す。
しかし、同時に悪い記憶をも思い出しそうになる。
渚冬は複雑な思いで手に取った桜の花びらを眺めた。
今まで封じ込めてきた記憶が、見ないでいた現実が、邪神との望まぬ出会いによって強制的に突きつけられる。
記憶の中で誰かが自分の名を呼んでいた。
それは確か、夕日のような明るい橙色の髪をした少年だったはずだ。
封じ込めてきた記憶が半端に蘇り、渚冬はその過去へと引きずり込まれた。