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ゲームが全てを支配する世界ですが、今日も元気に配信します!  作者: ぬるぽガッ
プロローグ どうにも、彼女は全てを持っていた様に見える
9/42

嘘とは何か。それは変装した真実にすぎない

坂DOOONは、クラブマンの隠れ家に通された

そこは廃墟の地下室を改装して作られたもので、四方の壁と天井には所狭しと重火器がかけられている


「なんか飲むか?つっても、真水とウィスキーしかねえけど」


クラブマンはボロボロのタンスに並べられたウィスキーを一つとる


「い…いえ、僕一応未成年なので」


坂DOOONは遠慮した


「そうか」


クラブマンはウィスキー片手に、廃墟から拾ってきたオンボロベッドに座る


「大体察しはつくが一応聞いておこう。お前、こんなとこで何してるんだ?」


「コトリンさんを探しています。」


「俺もだ。もっとも、身を隠そうって思ったあいつを見つけ出すのは、まず不可能だと思うけどな」


「何かそう言う能力が?」


「ありゃ能力と言うか才能だな」


クラブマンは、ウィスキーを一瓶飲み干す


「まあ、何を行動するにしてもまずはネットが復旧してからだ。コトリンの事は心配しなくて良い、きっと今頃は、どこかで昼寝でもしてるさ」


クラブマンがウィスキーの瓶を放り投げると、瓶は壁に当たって割れた

破片などは、飛び散る前に光の粒子となって消えた


「少し外を見てくる。お前はどうする、坂DOOON」


「僕は、もう少しここにいます。髑髏と愉快な仲間達が動いてる事がノーブルスに知られれば流石に色々まずいので」


「そうか」


クラブマンはそう言い残し、地下室を後にした




(コトリンの家の前には張り込みがいるが…流石に捜索の手は退いたか)


クラブマンは、隠れ家の上にある廃墟から外の様子を伺う

外を徘徊していたノーブルスはもう居なくなっていた


(今なら外に出ても大丈夫だ。あいつに伝えに行こう)


クラブマンが地下室に向かおうとした時だった


ガタンッ


物音がする

かなり大きな動物が動いた時の様な


何か考えるよりも先に、クラブマンは音がした方に銃口を向けていた

初期装備でも銃は銃

正確に当てる事ができれば一撃だ


クラブマンは忍び足で音源に近付いていく


(この角を曲がった先か…)


角に背を付け、ゆっくりと曲がった先を覗き込む

そこには、壁に背を付けて眠っている地味コトリンが居た


この突飛な状況に、クラブマンは思わず「ふ…」という笑いが溢れた

銃を下ろし、上着でもかけてやろうと思って近付いたその時だった


クラブマンの、銃をさしている右腰がうずく


もし今コトリンを殺せば、彼女の持つ莫大なコインが全て手に入る

モニター騎士団を復活させ、全員の生活を再建してもお釣りが出るほどの額だ

おまけに今回の騒動も、一旦は収束させる事ができる


クラブマンはそうっとコトリンに近付き、震える手でゆっくりと銃口を持ち上げる

初期装備でも拳銃は拳銃

額を一発ぶち抜けば、流石のコトリンでも即死だ


「すぅ…すぅ…すぴぃ…」


荒くなる呼吸を必死で抑え、クラブマンは引き金に指をかける


(これで…決める!)


引き金が引かれ、弾丸が放たれる


銃痕は、壁にできた


「………」


首をかしげる様にして銃弾を回避したコトリンの、不満と怒りの篭った暗いジト目がクラブマンを睨む

クラブマンは銃を落とし、両手を挙げる


「申し開きの余地も無い」


「良いよ」


コトリンはピシャリと告げる


「俺はお前を殺そうと…」


「もう良いって」


コトリンはそのまま、気だるそうに窓枠に足をかけ、そのまま出て行った


「最悪…」


一言、そう言い残して




アジトに戻るや否や、クラブマンは坂DOOONから銃声の事を聞かれた


「何でもない…」


クラブマンは一言そう答えると、そのままふて寝してしまった


「今はノーブルスの連中は居ない。出てくなら今だぞ」


「あ…は…はい。そうですね」


坂DOOONは、恐る恐る出口に向かう


「あの…本当に大丈夫ですか?」


「良いから出てけ!」


「ひぃ!おおおお世話になりました!」


坂DOOONはそのまま、クラブマンの隠れ家から逃げ去った




(あの人…本当に大丈夫なのかな?)


坂DOOONは物思いに耽りながら、人気の無い通りを歩いていた

そこで彼は、とある少女とすれ違った


「おや?」


坂DOOONは振り返る

白いパーカーにショートパンツ、間違い無く先ほど路地裏で会った少女だ


「また会いましたね」


坂DOOONが呼び止めると、彼女も立ち止まり振り返った


「…どうも…」


少女はそれだけ呟くと、再び歩み出す


「あのあと、何かと戦ったんですか?」


「…なんで?」


「焦げと、粗悪品の硝煙の香りがしました」


「…貴方には関係無いでしょう…」


「随分と不機嫌そうですね。何か嫌な事でも会ったんですか?」


「だから…関係無いって言ってるでしょ!」


そっぽを向いて帰ろうとする少女

意を決して、坂DOOONはその名前を呼ぶ


「コトリンさん」


コトリンの放つ負のオーラが。全て威圧に転化される

既に、人狼型自立機械“蛮浪(ばんろう)“の大剣が坂DOOONの首筋にピタリとくっつけられている


「…何で…?」


コトリンは、忿怒と呪怨に満ちた表情で坂DOOONを睨む


坂DOOONは冷や汗をかきつつも、必死に平静を装いながら弁明を始めた


「クラブマンさんに会ったんですよ。彼もコトリンさんを探していると言っていたんですが、帰ってきた途端、急に不機嫌になっていましてね。丁度貴女もそんな感じだっので、カマをかけてみたんです」


「…あんたも…私を殺す気…?」


「いいえそんな滅相も無い!」


坂DOOONは、コトリンに手を差し伸べる


「我々、髑髏と愉快な仲間達と一緒に戦争を起こしませんか?ノーブルスを相手取った革命戦争です!」


蛮浪が、コトリンの怒りと共に消えて行く


「私にメリットは…」


「我々の戦力と貴女の財力があれば、このノーブルスの歪んだ統治を終わらせられます!」


「結局金目当てかよ…」


コトリンは再び帰ろうとする


「うちのリーダーはノーブルスに殺されました。復活は170年後になるそうです」


「………」


「僕らはリーダーの仇をとりたい。でも、僕らがノーブルスを相手取るには、リーダーと同格でありながら、ノーブルスの暗殺を唯一逃れたあなたが必要なんです!」


コトリンは少しの間考えた後、結論を出す


「いいよ。手伝ってあげる。どうせノーブルスがいる限り、まとまに活動再開できないし

ただし、私の頼みも一つ聞いて貰うよ」


コトリンは、自宅アパートのある方を指差す


「うちの衣装を取ってきてくれないかな。部屋番号は2016。鍵の暗証番号は0215。ベッドの上に黒いナップザックがあるから、それを持ってきてくれれば良い」


「その程度お安い御用…と言いたい所ですが、コトリンさんの家の前にはまだ、沢山のノーブルスが張り込んでおりまして…」


「その剣は飾りなの?」


「え…?」


「協力するとは言ったけど、戦えない人達を擁護し続けるつもりは無いからね」


「ええええ!?」




かくして二人は、ノーブルス張り込むコトリン宅まで戻っていった

今は、手頃な物陰からアパートの様子をうかがっている


「も…勿論、コトリンさんも戦うんですよね…?」


「な訳無いでしょ。あいつらの狙いは私なんだから」


「ですよねー」


坂DOOONは勇気を振り絞り、剣は抜かずに出撃した


坂DOOONがアパートに入ろうとすると、張り込んでいた二人のノーブルスに呼び止められた


「ん?おいお前、止まれ」


「はい!?な…何でしょうか…」


「この建物に何の用だ」


「僕はここの入居者でして…」


「そうか」


二人のノーブルスは、それぞれ剣とアサルトライフルを構える


「ここの入居者に、髑髏と愉快な仲間達が住んでいるとの情報は無いが?」


(速攻でバレたーーーー!!!)


アサルトライフルが連射される

坂DOOONは大急ぎで、路上放置車の陰に隠れた


(た…助けて下さいコトリンさあああん!)


坂DOOONは、物陰から様子を伺っているコトリンに目をやる

彼女は一つ、グッドサインだけを返した


(ダメだこりゃー!)


リロードのため、弾幕が一度止む

坂DOOONはその隙に遮蔽から抜け、銃手に駆け出す


「おっと」


銃手に向けた斬撃は、剣士に阻まれた


「ぐ…」

(二体一とか絶対無理だってええええええ!)


コトリンの方を向くが、居ない

坂DOOONが戦っている間に、彼女は悠々とアパートの中に入って行っていっていた


「な!?」


「余所見すんなよ。やる気あんのか?」


剣士は、坂DOOONを押し飛ばす


「悪いね。こっちも任務なんで」


リロードを終えた銃手が、再び銃口を獲物に向ける


(まさかコトリンさん、最初から僕を囮にするつもりで…だったら話は早い!)


アサルトライフルが再び火を噴く

坂DOOONは今度は、それを走り続ける事で回避した


(逃げ続ける事に関してだけは、コトリンさんにも負けない自信があるんだ!)




「また戦ってるわよ?」

「最近物騒ねぇ…」


おばさま達の世間話を流し聞きながら、コトリンは自室のドアの前に辿り着く

暗証番号を押し、ドアを開け、


「どうして君がここに居るんだい?」


部屋の前を見張っていたノーブルス、キソゴンゾウに呼び止められた


「ここはコトリンの家の筈だ。その筈なのに、どうして君が暗証番号まで知っているんだい?」


「………」


ふとゴンゾウは、外で戦闘が発生している事に気付く

見張りの二人が、見知らぬ剣士と戦っているようだ


「もしかして、君が」


ゴンゾウの真横に磁界門が開き、巨大な腕が彼めがけて伸びて行く


「!」


ゴンゾウは腕と自分の間を結界で遮り、その隙にコトリンを抱きすくめ彼女の部屋に転がり込む


「ちょっと、何するの?」


「しっっ!」


ゴンゾウはすぐにドアを締め、施錠しチェーンまでかける


「これで一先ずは安全だろう」


コトリンはよろよろと立ち上がる

彼の行動原理は謎だが、一先ず敵意が無い事は確認できたので、彼女は攻撃行動を辞めた


「落ち着いて聞いて欲しい、コトリン。君は今、ノーブルスに命を狙われているんだ!」


「知ってる」


「え?」


「間引きの事も、他のトッププレイヤーがやられた事も、全部」


コトリンは携帯を取り出し、キソゴンゾウに画面を見せる

そこには、巡視者が記録した無数のデータが次々と表示された


「これは…!」


「ネットの凍結が解消されたら、これを私のアカウントで流す」


「そんな事をすれば、刃を抜く前にノーブルスは終わりだな」


コトリンは部屋の奥に進んで行く

ベッドの上には空のナップザックしか無かったので、彼女はそこに、干してあった衣装一式を詰め込もうとして


(あ、ここで着替えりゃ良いじゃん)


ゴンゾウがいる事も意に介さずに、コトリンはその場で変身を果たした


「それじゃあ行こっか!…はれ?」


ゴンゾウは、顔から蒸気を吐き出しながら倒れていた

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