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ゲームが全てを支配する世界ですが、今日も元気に配信します!  作者: ぬるぽガッ
プロローグ どうにも、彼女は全てを持っていた様に見える
7/42

人間には裏切ってやろうとたくらんだ裏切りより、心弱き故の裏切りの方が多い

早朝


「いよっしゃああああああああ!」


コトリンの自室に、彼女の歓喜の声が響き渡る


ーーーーーー


おめでとう

やりやがった…マジでやりやがったよこの子…

おめでとー!

3徹もしたらまあこうなるわな

プラチナクラスもダイヤクラスも超えた先、選ばれた0.01%だけが辿り着ける頂き…!

目の前でモンスターランクの誕生を見届けてしまった

おめでとー!

《白い箱:20000コイン》

おめでとおおおおおおおお!わいの一ヶ月分のダンジョン収入じゃ受け取れええええええ!

《パルハン@イージス修道会:ことりんくらぶプレミアムメンバー》

私達の事は良いから今すぐ寝てください!!!


ーーーーーー


「あああああ眠いいいいい頭いってええええええ!」


ーーーーーー


間違い無くエナドリの飲み過ぎ

三日三晩エナドリしか飲んでねーじゃん

《ムルト:7000コイン》

お願いだからこれでなんかまともな食べ物買って


ーーーーーー


「みんあありがとー…流石に今夜は配信無理そうだから…今日はみんな早く寝な…うう…目を閉じるだけでフルカスタムマシンガンの射撃音が聞こえる…」


ーーーーーー


まぢお疲れ

はよ寝ろ

《けげんおばけ:ことりんくらぶメンバー》

うおおおおおおフル視聴出来たああああ眠いいいいいい!


ーーーーーー


「ふわぁ…そんじゃみんあぁ…お休…」


ーーーーーー


《[匿名]:90000コイン》

突然のスパチャ失礼します。ただ街中ですれ違った人に一目惚れしてしまいました。どうしたら良いでしょうか


はい???

何こいつ???

ky乙wwwww

少なくとも今じゃ無いし相談相手も違う


ーーーーーー


「ふわぁ…何々…一目惚れ…?」


ーーーーーー


相手しなくて良い

はよ寝ろ下さい

早く休んで!マジで死んじまうよ!


ーーーーーー


「別にぃ…アタックしときゃ良いんじゃない…?難易度高杉で成就しない前提だけど…少なくとも君の気持ちはスッキリさせた方が良いよ…ふあぁ…」


ーーーーーー


マジ聖人

いいから早く寝て!

おやすみなさい良い夢を(威圧)

《ペケパカCEO:99999コイン》

寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ寝ろ


ーーーーーー


「あーごめんごめん…そんじゃそろそろ切るね…おやすみ〜…」


コトリンは配信を消したと思い込み、そのまま机に突っ伏して眠った


ーーーーーー


あれ?

あのー…

寝息ASMR助かる

切り忘れて寝てるのめっちゃ可愛い

おやすみ^^


ーーーーーー


「すぴー…すぴー…」


コトリンの寝息ASMRが始まった

この事は瞬く間にインターネットで拡散され、朝ということもあり、作業用BGMにしようと沢山の同接が集まった

もっとも、今のコトリンがそれを知る術は無いが






「此処か」


黒いローブに身を包んだ二人の男が、コトリンの住むアパートの前で立っている


「ゴンゾウの報告によれば、ターゲットはまだ住居内に居るらしい。きっと今頃は眠っているんだとよ」


「ッチ…良い御身分だな全く」


二人の暗部は音も無く駆け出し、コトリンの住むアパートへと消えて行った






「ぐー…すぴー…ゴロゴロ…すぴー…」


ーーーーーー


初見です

これ何?

ASMRのライブ配信とか斬新

こちら、配信切り忘れてそのまま寝ちゃった人です

コメ欄フリーチャットになってて草

《オンコト:500コイン》

初見です。なんだかよく判りませんが作業が捗る音声ありがとうございます


ーーーーーー


コトリンの元に、音も無く影が忍び寄る

散乱する空ペットボトルも一切踏まずに、呼吸の音も鼓動の音も悟られぬように、一片の気配も発さずに影たちはターゲットを間合いに収める


ーーーーーー


何???

アサシン!!!1!!!!!1

演出?

釣り?ガチ?

コトリン危ない!

ギルドの残党の差し金か!?

《ぺけぱかCEO:99999コイン》

起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ


ーーーーーー


最も、コトリンのうっかりミスによって彼らの努力は水泡に帰したが


「おいこれ、カメラ付いてねえか?」


一人がそう言った瞬間だった

コトリンが指をくいと動かし、招喚された屠猿の両腕が暗殺者2人を叩き潰した


"ドサリッ"


「…虫にしては手ごたえが…って、うわあ何じゃこりゃあ!?」


ーーーーーー


良かった

無事で良かったコトリいいいいん!!!

なにこれ釣り?

釣りなのかガチな奴なのか正直に答えてくれ


ーーーーーー


「ごめんみんな。うちも何が何だかさっぱり…って、なんで配信付いてるの?」


ーーーーーー


《ヤズ:700コイン》

寝息ASMRサンキュー

《無いコイル:1000コイン》

寝言かわいかった

《サンド:200コイン》

配信切り忘れには注意しろよな!


ーーーーーー


「うそ!?でも思い返してみれば、確かに切った記憶ない…ていうか最後どんなふうに終わったっけ。覚えてないや」


ーーーーーー


ガチだとしたら普通に怖いわ

金持ちの宿命

明日は我が身か…

コトリンにボコられたギルドの誰かが逆恨みしたんだろうよきっと

本当に危なかった。てかよく反応できたな


ーーーーーー


「えっと…これつけっぱの方が良いかな?」


ーーーーーー


オネシャス

ワンチャンネットニュースにできる

まずそいつらが誰か調べて。念のためカーテンは閉めた方が良い


ーーーーーー


コメントに従い、コトリンは匍匐(ほふく)前進で窓まで行ってカーテンを閉める


「そ…それじゃあ早速、ドロップアイテム開封配信していきたいと思いまーす!」


コトリンは、暗殺者の持っていた物をカメラの前に並べ始める


とあるイベントの上位10名にのみ配布された、譲渡不能の限定装備のダガー2本

ポーション5本

19362000コイン

隠密のエンチャントが付与されたローブ


ーーーーーー


ランカーで草

一気に特定範囲狭めれるわね

ポーション少なくね?

コイン多!

アサシンはそもそも持久戦が考慮されたステータスじゃ無いからこのポーションの数は妥当

可哀そうに…また丸腰から再スタートか…

第四次じゃないだけマシ

せめて持ち家はありますように


ーーーーーー


死亡により失うものは主に二種類

ゲームに直接的な影響を及ぼせる装備やアイテム

オーメントピアの共通電子通貨コイン

第四次役職のみ、蓄積された能力もリセットされる


家や家財までは失われない


ーーーーーー


確かそのナイフって、こないだの二人一組PVEイベントの奴じゃない?

確か、隠密スキル陰キャ戦法で2位まで上がったチームあったよな

確定やん

なんでそんな奴らが?

犯人は粗方特定できた

ん?待てよ?


ーーーーーー


「きっと、お前らが心を込めて送ってくれた沢山のスパチャコインが欲しくなっちゃったんだろうね」


金持ちを狙った暗殺者騒ぎは、この世界では決して珍しい事では無い

この出来事もそんな与田話の一つとして落着する筈だった


ーーーーーー


待ってそいつらノーブルスやん

え?

は?

何?

まじで?

ランキング履歴見てきたけどマジじゃん

なんで?

コトリン…お前なんかやった…?


ーーーーーー


「え…うちなんかやった…?」


コトリンの顔が目に見えて青ざめていく


ーーーーーー


もちつけ。なんかやってるんだったら逮捕状が届くはず


ーーーーーー


「だよね!ちょっとポスト見てくる!」


コトリンはスマホ、パソコンのメールボックス全てを確認した後、玄関に奪取し空の郵便ポストを穴が開くほど見つめてから戻って来る


「届いてなかった!」


ーーーーーー


コトリン犯罪者じゃ無くてよかった

囚人服コトリン…閃いた

通報した

お前がノーブルスに裁かれろwww


ーーーーーー


「良かったぁ…割とグレーな生き方だけど、法にだけは触れないように努力した甲斐があったよぉ」


ーーーーーー


これにて一件落着

なわけあるかwww

コトリンが潔白だとしたら大分やばいことが起こってるぞ

暗殺はゲームのルール上許されてるだけで立派な犯罪

末端の腐敗か組織ぐるみか…そこが問題だ

ちょっと拡散してくるわ

さて、向こうはどう出るか


ーーーーーー


「ちょっち、一旦気持ち整理する時間が欲しいから、今日はもう落ちるね!もしうちの死亡記事が出たら…まあ、察してね!」


ーーーーーー


おつ

もう切り忘れないでね

そういや三鉄明けだったわこの人

おつぴ

んじゃな


ーーーーーー


コトリンは、今度はきちんと配信を切ってからベッドにダイブした


久々に間近まで迫ってきた死の恐怖は、コトリンの鼓動を早鐘の様に加速させる


(やばい…三徹明けなのに全然寝れない!)


"ゴンゴンゴン"


「ひう!」


突然のノック音に驚くコトリン

彼女は念の為、ドアの覗き穴に巡視者を向かわせた


来客はケラだった


巡視者は器用にドアの鍵を開けると、そのまま磁界門に消えた


「大丈夫ですか!?」


部屋に入るなり駆け寄ってくるケラ


「うん。何とか…」


出迎えの為に、コトリンがベッドから降りた直後だった


「………へ?」


ケラの手によって、コトリンの腹にナイフが深々と突き刺さった


「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…!」


ナイフを手放し、ケラはそのまま部屋を出て行った


(…裏切…られた…?)


コトリンは、力無く床にへたり込む


(そう…)


大きめの磁界門から、鋼の牡鹿が現れる

鹿がコトリンに寄り添うように座ると、そこを中心に緑色の光のエフェクトが発生する

ナイフを引き抜くと、コトリンの傷はみるみるうちに癒えていった


(良いよ…私はもう、許す気は無いから…)


鹿は消え、コトリンは立ち上がる


(君にそんな事をさせた誰かを、私は絶対に許さないから!)


コトリンは、ケラを信じる事にした






コトリンの家から大分離れた場所


「言われたとおり、コトリンを殺したわ」


ケラは、軍服姿の青年と相対していた


「ほら、わたくしも戦えるって証明したわよ!だからお願い…わたくしを見捨てないで…」


「…証拠は?」


「え?」


「コトリンが死んだっていう証拠だよ。生首、莫大なコイン、機械の動物の残骸、何でもあるだろ!」


ケラは確認する

コインの所持数は、全く変わらぬ0のままだった


「嘘…」


「………」


男は何も言わずに、ただケラに背を向ける


「違うの!これは…」


「あいつに攻撃は当たった。だがお前は、奴の死もろくに確認せずに逃げてきたんだろ!」


「…!」


「もう良い。お前が何一つ変わってないって事がよく分かった。…ッチ、あいつからの信頼って言う最高の切り札を無駄にしやがって」


男はそれだけ吐き捨てると、ケラの元から去っていった


「待って!お願い!行かないで!」


ケラの悲痛な叫びももう、彼に届く事は無かった


「う…うう…」


ケラは懐からもう一本ナイフを取り出し、自らの喉笛に突き立てる


「わたくしは…戦えない…戦えないから…この世界じゃやってけない!」


ナイフを握る手に力がこもった時だった


「どうしたの、メンヘラお姉さん。また嫌な事でもあったの?」


「!?」


ケラはナイフを落とし慌てて振り返る

白パーカーにショートパンツ姿のコトリンが、両手をポケットに突っ込みながら気だるそうに立っていた


「ああ…貴女でしたか…」


ケラは両手を広げる


「抵抗はしません。どうかこの裏切り者を、気が済むまでめいっぱい痛めつけて下さい」


「良いよ」


コトリンはケラの元に歩くと、デコピンを一発食らわせた


「?」


「これで気が済んだ」


「???」


コトリンは、男が去っていった方を眺める


「あの人が元カレ?」


「え…ええ…そうですけど…」


「ノーブルス?」


「な…何故それを!?」


「はぁ…ノーブルス相手にするのもだるいし、何が起こったか突き止めるのも面倒。ほんと嫌になっちゃうよ。私はただ、日銭稼いで適当に生きてたいだけなのに」


磁界門が開き、鋼の大蛇、“戒世大帝(かいせたいてい)顕現する


「でもまあ、友達の為なら仕方ないか」

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