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ゲームが全てを支配する世界ですが、今日も元気に配信します!  作者: ぬるぽガッ
プロローグ どうにも、彼女は全てを持っていた様に見える
5/42

天国と地獄。個々人の為の来世。人格神と言った宗教的な理念について、わずかな科学的証明さえ私は見た事が無い

「よーお前らー!昼振りだねぇ!」


ーーーーーー


おつー

待ってました

コトリンたや表彰おめでとう

まじ?

犯人以外の人的被害0で済んだから

よ!ヒーロー!


ーーーーーー


「あはははみんなそんな大げさだってぇ。うちはただ報酬が欲しかっただーけ。いやーレイドボスの報酬独り占め気持ちいいわぁ」


ーーーーーー


煩悩にまみれてら

ヒーローとは?

いつものコトリンで安心した

《チヒロ:50000コイン》

金の亡者過ぎて街を救った一般物欲の化身


ーーーーーー


「チヒロさんどうもー。そうだよ、うちが物欲の化身だよ」


コトリンは、一口でエナジー缶一本を飲み干す


「そんじゃ早速だけど、うち、お前らに相談があるんだ」


ーーーーーー


《がががが:100コイン》

どしたん?

《アホン:500コイン》

話聞こか?

《ユーミル@黄金神殿:1000コイン》

あーそりゃ彼氏が悪いわー

《人:ことりんくらぶプレミアムメンバー》

俺なら絶対そんな事しないね


ーーーーーー


「ちょ、まだ何も話して無いんだけど!ていうかお前らがたまに見せる謎の団結力怖いわ!んじゃ行くよ、今回の議題はずばり、スポンサー問題!」


ーーーーーー


やっとか

遅すぎるまである

漸く気付いたんだね


ーーーーーー


「いやいやいや、今回来たのは性質が違うんだって。お前ら、誠言聖社って知ってる?うちにスポンサー契約持ちかけてきたんだけどさぁ」


ーーーーーー


カルト?

聞いた事ない

検索しても公式ページっぽいのしか出てこない

よくある東系カルトだね


ーーーーーー


「これさぁ、うち受けるべきかなぁ?」


ーーーーーー


やばそうだったら切れば良いだけだし、受ければ良いんじゃない?

わいは辞めといた方が良い派

天地がひっくり返ってもコトリンさんは大丈夫そうですけど、他のスポンサーさんにどんな影響がでるかわかりませんね


ーーーーーー


「だよねぇ。どうしよっかこれ。一応社会科見学したんだけどね、お金持ちそうな普通のカルトだったよ」


ーーーーーー


あ…

ちょいやばいかも

こんな聞いた事も無いカルトが金持ちなのは不自然


ーーーーーー


「マジ?そういうものなのかと思ってたけど」


ーーーーーー


《ジーク@サラミ一味:ことりんくらぶプレミアムメンバー》

良い事思いついた。ジャーナル回ってどうよ?


ーーーーーー


「じゃーなるかい?」


ーーーーーー


《ジーク@サラミ一味:ことりんくらぶプレミアムメンバー》

その教団?にカメラ回して、配信でそれを発信するんだよ。コトリンちゃんは配信者、活動内容としては何にも不自然ないだろ?


ーーーーーー


「確かに…それ良いかも」


ーーーーーー


良いね

わいらにも見せてくれ

《キソゴンゾウ@✟ノーブルス✟:ことりんくらぶメンバー》

やばそうだったら動く


ノーブルス!?!?!?!?!?!?!?!?

本物!???!!!!???

ノーブルスにもファンおるんや!!!!!!!


ーーーーーー


「ゴンゾウさんありがとう!ノーブルスがついてくれるならうちも心強いよぉ」


ーーーーーー


《キソゴンゾウ@✟ノーブルス✟ことりんくらぶメンバー》

仲間にも周知しとく。誠言聖社はうちでもマークしてたんだ


ーーーーーー


「それじゃあ決まりだね!向こう方にも連絡しとくよ!…マーク?」


その日は、日付が変わるぎりぎりまで雑談配信が続いた


「ふわぁ…それじゃあ今日はこの辺で。じゃーねー!」


いつもの手順で配信切断を確認し、コトリンは漸く力を抜く

目から光を消し、笑顔と言う名の仮面を剥がし、抑え込んでいた負のオーラを開放する


「ふぅ…」


「いつもこんな時間まで起きてるのか?」


奥の部屋から現れたのはクラブマン

怪獣騒ぎで住んでた家が壊されたので、一日だけコトリンの家に泊まっていた


「…ごめんね。うるさかったかな?」


「別に。荒野に居た頃、どんな環境でも眠れる訓練を積んだんだ」


「そう」


コトリンは、今にも溶け落ちそうな体勢のまま床に敷いた布団に飛び込もうとして、クラブマンにベッドに放り込まれる


「お?」


少しだけ期待したコトリンだったが、クラブマンが床の布団に寝たのを見てがっかりした


「ここは俺が使う。世帯主が気を遣うんじゃない」


「そっか。ありがと」


その日コトリンは、衣装のまま眠った




次にコトリンが目を覚ましたのは昼頃

布団は片付けられていて、クラブマンはもう出て行った後だった


「やば…衣装しわになっちゃう…」


コトリンは直ぐに服を脱ぎ、シャワーを浴びてから地味モードに着替える

シャワーを浴びるのは、彼女なりの儀式だった

身に着けていた虚栄を洗い落とし、本当の自分に戻ると言うけじめ


「そうだ。メールしなきゃ」


コトリンは、誠言聖社に生配信のアポメールを送る

少しすると返信が帰って来た


『お世話になっております、寂聖です。上層部との調整がありますので、返信は暫く先になりそうです。お手数ですが、どうかご理解ください』


「私と契約したいって言ってた割には随分とクローズなんだなぁ」


暇なので、コトリンはパソコンを開きネットサーフィンを始めた


「うへぇ…ジャバズハッドグさん燃えちゃったんだぁ。明日は我が身だから気を付けないと」


これと言ってめぼしい記事は無かった

誠言聖社と検索しても、さっきの自分の話が載り出してるだけだった


『【悲報】仕事を選ばない事で有名な大箱配信者コトリン氏、怪しいカルトからのお誘いに流石に困惑』

『[スレッド]巷で話題の誠言聖社って何?』


「…今日一日は寝て過ごそう…」


変な時間に起きてしまった事もあり、その日のコトリンには何の気力も無かった


「…そうだ」


時間と能力を持て余した者はいつも、往々にして変な気を起こす

コトリンはベッドから起き上がり、外に出る

スニーカーを履き、機械獣は無しで、向かうは誠言聖社


「大丈夫。場所は覚えてる」




時折迷子になりつつも、コトリンはなんとか聖社に辿り着いた

宣教もしていないのにどうしてあんなに信者が多いのか、コトリンには少し興味があった


聖社のある建物を背に、うずくまる様に座る

これでもう、そこらの浮浪者と見分けは付かない


建物の中に磁界門を発生させ、ネズミ型の小型機械獣"巡視者(じゅんししゃ)"を建物内に放つ

巡視者は配管や壁裏に入り込んでいき、誰にも気付かれる事無くその建物を掌握した

巡視者の得た情報は全て、リアルタイムでコトリンにフィードバックされる


建物内は一貫して厳かな雰囲気だった

祈りや修行に励む信者に、ひたすら料理を作る信者

寂聖は最上階でスーツ姿の男と会談していた


(…?)


地下に潜って行った個体が、地下牢を見つけた

中には一般人と思しき人々が捉えられており、部屋中には読経の録音音声がエンドレスで流れている

光は無い

そこら中に件の香が焚かれていて、中がどんな環境かは想像に容易かった


(うっわ)


突如、コトリンの視界が真っ暗になる

彼女は頭に麻袋を被せられ、手足を荒縄で縛られたのだ


コトリンは体を持ち上げられ、そのまま建物内に連れ込まれる

既に巡視者は全て引き払っており、盗撮がバレた様子も無い

つまり、これが彼らの平常運転だった


(うっわ…)


コトリンはそのまま、読経響く例の地下室に運び込まれ、檻の中に放り込まれる


「っつ…」

(もうちょっと丁寧に扱ってよ…)


人がいなくなったのを見計らい、コトリンは一瞬だけ刃龍を召喚し縄を全て切断する

麻袋も取ってみたが、部屋は一切光が無く真っ暗だった


「う…げっほげっほっ!」

(凄い臭い…コンクリの中に閉じ込められてるんじゃないかってくらい息が出来ない…!)


部屋の外から声が聞こえる


「外壁に女が居たので、捕えて瞑想室に入れました」

「ご苦労。また一人、教理の道へと導くことができましたね」

「所で例の配信者の件ですが…」

「ネームバリューのある者を信者にすればより知名度を増せると思ったのだけれど、我が会の内情をまだ知られる訳には行かないわ。やっぱり断りましょう」

「かしこまりました」


(あいつら…私を利用しようとしてたんだね…許せない…)


今から配信を回してやろうかとも考えたが、あいにくこの服では無理である

機械獣で強行突破しようにも、コトリンの能力が知れ渡った今では身バレのリスクしか無い


(かくなる上は…)


壁の裏に磁界門を開き、巡視者を一匹出現させる


(洗濯中の衣装を取りに行く!)


巡視者は壁裏を駆けあがり、そのまま外に出る

そこで巡視者をビーコンに新たな磁界門を開き、小型鳥型機械獣銀翼(ぎんよく)が出現する

銀翼が現れた門の中に巡視者が飛び込むと、磁界は消えた


銀翼はそのまま翼を広げ、コトリンの家に向けて飛び立った


地下室の戸が開き、髪を全て剃り落とした信者が入って来る


「飯だ」


持ってきたのは肉料理とコップに入った飲み物

料理の乗ったプレートをコトリンの前に置くと、信者はまた出て行った

コトリンがじっとしていたので、拘束が解けている事はバレなかった


(よくこんな環境で顔色一つ変えずに居られるねぇ)


そう思いつつ、コトリンは肉料理を食べてみる

それはとても辛い味付けになっていた


(良いね。私好み)


肉に変な物は何も入っていなかったので、コトリンは完食した

次いで飲料を手に取ってみる

キンキンに冷えていたが、こちらからは明らかに危険な甘ったるい臭いがした

試しに小指の先に付けて舐めてみると、一瞬意識が朦朧として暫くめまいに見舞われた

辛さに耐え切れずこの飲料を飲み干したが最後、もう二度と普通には戻れない


(あくどいねぇ)


コトリンは飲料を全部床にぶちまけると、壁を背に昼寝する事にした


一方その頃コトリン宅では

衣装一式を詰めたナップザックを咥えた銀翼が、磁界門の中に消えて行った

こういう時の為に、彼女の部屋の窓はいつも開いていた


(そんなに知名度が欲しいなら、お望み通り宣伝してあげますよーだ!)




入信の儀式の為、寂聖は10名の信者と共に、地下室へと向かう

扉が開かれ、この建物の中で最も強力な香が漂ってくる

それと同時に、暗闇の中に電子広告が浮かび上がっているのにも気が付いた


「ん?」


喋り声が聞こえる


「えーマジ―?うちつるっぱげ似合うかなー?」


コトリンの声だった


ーーーーーー


美人は丸坊主でも美人ってよく言うじゃん

ていうかコトリン拉致るとか相手も度胸あるよなー

なんで捕まったの?昼寝でもしてたの?


ーーーーーー


「いやーね、ぼーっとしてたら麻袋被せられたから、こりゃネタになると思ってそのまま連れ込まれたって訳。お、来たみたい!」


撮影用ドローンが、地下室に入って来た信者たちを写す


「こちら、一般市民を誘拐、洗脳しては信者を増やしている悪徳カルト教団、誠言聖社の皆さんでーす!」


「な…今すぐ撮影を止めなさい!」


「何で?だって、配信者のうちと契約しようって言ったのは貴女達でしょ?うちのファンのみんなにも、うちのスポンサー候補がどんなとこか紹介しなくっちゃだもんね!」


慌てた様子の信者が一人、更に地下室に入って来る


「大変です!建物がノーブルスに包囲されています!」


「何ですって!?」


ノーブルスは、このオーメントピアの秩序を維持する最強のギルドだ

この世界の実質的な政府で、まず逆らえない


「もう着いたの?ノーブルスは仕事が早いねぇ。流石」


コトリンの入る檻の奥から大きな拳が突き出てきて、鉄格子を吹き飛ばす


「なんかノーブルス密着24時みたいになっちゃったけど、これはこれでジャーナルっぽいよね!」


いつものご機嫌な足取りで、彼女は檻から出る


「良いよ!解体されるまでの間だけ、誠言聖社はうちのスポンサーね!」


「おのれ…おのれえええええええ!!!」


寂聖の怒号と共に、信者たちや捕らえられていた人々が彼女に引き寄せられていく

寂聖は彼らとくっつき、融合し、肥大化していく


「わお!」


コトリンは地下室から逃げ出す

コトリンが建物の外に出た瞬間、貸しビルは内側から破壊され、巨大な寂聖が現れた


ーーーーーー


なんじゃあこりゃあ

巨大化は負けフラグですよネ

やっちゃえコトリン!負けるなコトリン!


ーーーーーー


「よーし、うち頑張っちゃうからねー!」


磁界門が開きかけた瞬間だった

四方八方から放たれた無数の魔弾やミサイルが、寂聖に集中砲火された


「ぐああああああ!おのれええ小癪なあああああ!」


髑髏が砕けるエフェクトと共に、寂聖の拳に紫色のオーラが発生する


「神の意志に反せし愚者共があああ!」


寂聖が地面を殴ると、紫色の波動が広がった

だがそれも、寂聖を取り囲むように発生した結界によって全て阻まれた


「消費すりゃ良いってもんじゃ無い」


コトリンのすぐ隣に、結界術師の青年が立っている


 「第四次役職としてやってくには、状況を見て、機会を伺って、やっと消費するかどうかの判断をしないとだよな」


結界術師はコトリンの方を向く


「君もそう思うだろ?」


「え?うち?でもうちの場合はそもそも出さないと始まらないと言うかなんと言うか…」


「あのヤマタノオロチもう直ってるんだろ?どうして出さなかったんだ?」


「へ?それは…その、出すまでも無いと言うか…」


「そう言うことだよ。もっとも、第四次としての立ち回りが骨身にまで染み付いている君に言っても仕方ないと思うけどね」


結界術師はそう言うと、コトリンの元を離れていった


ーーーーーー


なんあれ?

厨二病?

いやでも一応はノーブルスだし

イキっちゃったのか

まあコトリンの恩人って事で今回は見逃してやろうか


ーーーーーー


一方その頃、件の結界術師キソゴンゾウは


(やった!やったぞ!コトリンちゃんと会話が成立したぞ!)


内心、大層喜んでいた

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