まあ、いつかこんな日が来るとは思ってた
結界を出てゲームを抜けたジュピターは、その足で件の公園に戻って来た
「誰も居ない。当然ね」
ジュピターが公園を出ようとした時だった
木陰の闇の向こうから極太の光線
ジュピターは数歩右にずれて回避する
まだ光線が止まぬうちに、その下を潜る様にして現れたゼルによるアッパーが、ジュピターに、直撃した
「…!?」
「っしゃあ!」
吹っ飛ばされるジュピター
銀色の光が空を掛け、ジュピターの上に現れたのはアザミ
「基刀流…」
「パターン変えてきたね」
「一閃!」
振るわれるアザミの剣
ジュピターは、刀が振るわれると同時にその剣を踏み台にし、光線の射手が要るであろう場所へと飛んだ
「なデタラメな…」
ジュピターは木陰に突っ込み、隠れていたシータの首を掴もうとする
「居ない?」
直後、背後からゼルに抱きすくめられる
正面からはシータの光線
「マジ?」
「おおマジだぜ!師匠!」
放たれる光線
ジュピターはゼルの足を蹴って浮かせ回避しようとしたが、ゼルの体幹が強く完全には動けなかった
光線が、ジュピターの左腕とゼルの胴体に直撃する
「っ…!」
ジュピターはジュピターの名に変わってから初めての重傷を負う
だがゼルの怪我の方が酷く、胴体の大部分が重度の火傷を負っていた
逆に言えば、火傷程度で済む様に光線の威力が調整されていたのだ
「…だあああ!」
なおも、ゼルはジュピターを留め続ける
再びの光線の気配
「く…」
ジュピターは弱ったゼルを振り払い、光線発射スレスレのところで跳躍してかわす
「…まず」
光線がゼルに直撃する
ジュピターが、ゼルごと跳ばなかった事を後悔した時だった
銀の光がコトリンの下に滑り込み、実体化する
「ゼル!」
アザミが呼ぶと、光線の中から傷が治ったゼルが飛び出してきた
「うらあああああああ!」
アザミがトスの要領でゼルを上に飛ばす
ゼルはコトリンの上を取ると、両の拳を結び、ジュピターに向けて思い切り叩き付けて墜落させた
「…マジ?」
地面に叩きつけられるジュピター
すぐに立ち直ろうとしたが、その頃にはもう、彼女の額に魔法の杖が突きつけられていた
「ご…御用だ〜!」
不安げなシータがジュピターの顔を覗き込む
二人が降りてきて、ゼルはジュピターの首を掴んて押さえ込み、アザミの刀がジュピターの胴体に当てられる
暫しの沈黙
「…参った」
ジュピターがそう告げた瞬間、3人の顔が目に見えて明るくなった
「「いやったあああああ!」」
「うっしゃらあああああああああ!!!」
抱き合いながら飛び跳ねる3人を見ながら、ジュピターはよろよろと立ち上がる
破れたゼルの服の奥からは、痛々しく赤く焼けた肌が覗いている
(捨て石役が居ながら、互いの信頼に一切の揺らぎが無いのは本当に凄い。心からお互いを信じあってるんだ。良いなー)
しんみりしているジュピターの前にゼルがやってくる
「久し振りだな!師匠!」
ジュピターが案内されたのは、比較的状態の良い廃墟だった
そこは元豪邸、広さは充分
アザミ曰く、ジュピターと別れてから、この辺りで住めそうな場所を3人でずっと探していたんだとか
今はジュピター、ゼルの二人がリビングにいる
「なあなあ、ニュータウンはどうだった?酷い場所だったろ?」
「うん。なんて言うか、みんなが本能で生きてるって感じ」
「分かるわー。どいつももいつも節操無くて…」
不意に、ゼルに良いアイデアが舞い降りてきた
「そうだ。せっかくうちが勝ったんだしさ、なんかご褒美くれよ」
「え…?この話の流れで言い出すってことは…」
「そうだ!なあジュピター、うちとデートしてくれよ!ちょっと、二人きりで話したい事があるんだ」
「………」
アンツールに、そんなロマンチックなスポットは無い
せいぜい普段行かない場所を散歩するくらいだ
(参ったなぁ…あたしノンケなんだよなぁ…まあゼルちゃん可愛いし、いざとなったら全然許容できるけど…)
特に話す事も無く、二人は骨組みだけになった建物群の街を歩く
不意にゼルが口を開く
「見たんだ。さっきの戦いで抱きついた時に」
「何を?」
「耳」
その言葉は、ジュピターを焦りで震え上がらせた
「疑ってみた瞬間、直ぐに解ったよ。ピンクの髪。オッドアイ。曲芸みてーな回避技能」
ゼルはジュピターの前に出ると、彼女と向き合うべく振り返る
「あなたなんだろ。コトリン」




