表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/42

あたしだって人間だよ。それも割と不誠実な部類の

地面が赤熱し、マグマが如く融解を始める

地の底から機械と紅蓮を纏った大腕が大地を掴む

右腕を頼りに這い出てきたのは、機械の鎧を纏った炎の巨獣の頭


ダガーの様な歯

炎の様に靡く鬣

全身は高温に煌めき、其れの熱をエネルギーに駆動する機械鎧の無数のモータ音が不気味に響く


"うお…うおっ…?"


顕現したのは頭と右腕だけだったが、それでも人型ドジョウの全長よりも大きかった

其れを中心に発生した熱場が次第に広がって行き、そこは閑静な住宅街から火口の中の様な煉獄へと変わった


"グガオオオオオオオオオオ!!!"


其れは咆哮と共に、纏う熱を更に高める


"うおおおおお!"


ドジョウが逃げ出す

だがもう遅い


神炎浄滅(しんえんじょうめつ)


其れを中心に炎の大爆発が起こった

魔物や建物の遍くが融解し、そこは熱気立ち昇る橙色の平地となった


役目を終えた其れは、再び地の底へと沈んで行く

鋼の後輪もまた閉じ消えて行く

後に残ったのはドジョウの丸焼きと、


「これ、食べれるかな」


それを物珍しそうに見つめるジュピターだけだった




ドジョウの肉を腹いっぱいになるまで食べた後、ジュピターはその場を後にした

少し歩くとまた住宅街が始まる

まるで、先程の戦闘が幻覚か何かに思える程静かだ


ジュピターが四辻に差し掛かった頃


「おい!」


不意に、ジュピターは声を掛けられる

快活な少女の声だ


「他の誰かだ…じゃあ、配信は落とすね」


「何一人でぶつぶつ言ってんだよ!」


左の角から現れたのは、桃色の髪を脛まで伸ばした青い瞳の少女

上は灰色の男物のジャケット

下はショートパンツに黒のニーハイ、靴は橙とオレンジのスニーカーを互い違いに履いていた

背はジュピターの胸下までしか無い


汚川入道(おがわにゅうどう)はうちらの獲物だったんだ!何横取りしてんだよ!」


「ごめん…」


「な…す…素直に謝るんじゃねえ!やりにくくなっちまうだろ!」


「ごめん…」


「だーもう!」


少女の手の中に光球が現れ、直ぐにそれは釘バットに変わった


「悪いが、ドロップアイテムは全部うちらが貰ってく。恨むなよ、姉ちゃん」


「ごめん…」


少女が、ジュピターの頭めがけて釘バットを振る

ジュピターはしゃがんでそれを躱し、人差し指と中指でバットに刺さった釘を三本引き抜く


「…!?」


振り終えた少女の小手にジュピターの蹴りが入り、バットが手放される

ジュピターは体勢を崩した少女の首を掴み、そのまま地面に叩き付ける


「がっは!?こんの…」


起き上がろうとしたその時にはもう、少女の瞳の数ミリ手前に釘の先があった


「な………」


激痛に備えて少女は身構えたが、いつまでたってもそれはやってこない

釘は、ジュピターが親指と中指でつまんで先を向けていただけであった


「あんまり大人を舐めないほうが良いよ。まあ、あたしもまだまだ子供だけどね」


ジュピターは釘を捨てて身を起こす

次の瞬間、目の前から光が迫って来るのが見えたので、彼女は体を右に逸らしてそれをかわした


「う…うそ!?何で反応できるの!?」


「狼狽えるな!」


ピン髪とは別に二人分の声が聞こえてくる

光線が晴れた先から、銀色に閃く刃がジュピターに向かってくる


ジュピターはそれを、人差し指と中指で白羽取りした


「く…ここまでか…」


正面の道の闇の奥から、大杖を背負い両手をあげた三人目が出てくる

栗色のショートボブの髪。星の髪留め

鳶色の瞳

肩には白い小竜

ミニスカセーラー服が黄色く派手に魔改造されたようなその衣装は、アニメに出てくる魔法少女を彷彿とさせる

背は、足元に伏しているピン髪と同じくらいだ


「あ、こらシータ出てくんじゃねえ!」


「もう無理だよゼルちゃん…シータ達じゃ勝てないよ…」


メイン火力が降参したので、刃の主も武器を持つ手から力を抜く


後ろで縛られた、長い長い紺寄りの黒髪

真っ直ぐな黒い瞳

上はサラシ一枚を胸に巻き

下は長ジーパン一枚。ベルトはしておらず、ブロングループには代わりに長い鞘が縫い付けられていた

足は、靴も靴下も履いていない裸足だ

ジュピターよりも背が高い


「私の事は好きにしていい。だからどうか二人は見逃してやって欲しい」


「アザミてめえ何勝手な事してやがる!」


「頼む、後生故」


ジュピターは困惑した

まるで自分が悪役だ


不意に、足元に伏していたピン髪、ゼルの腹の虫が鳴る


「…何だよ」


「ドジョウの丸焼きならあるよ」




ジュピターはその三人娘を先程の現場に連れて行き、まだあつあつの汚川入道を食わせてやった


「ふいー食った食ったー!」

「ちゃんとした食べ物なんて3週間ぶりだよー」

「良き人よ、先程は突然襲って済まなかった」


ジュピターは一瞬地熱を心配したが、裸足のアザミが無事だったので一安心した


「っと、自己紹介がまだだったな!うちはゼル、そこのなよっちいのがシータで、こっちがアザミ(ねえ)だ」


「あたしはジュピター」


そう呟くジュピターの視線は、ゼルの靴に集中していた


「何だよ。あ、靴か?こいつはなぁ、うちの憧れの人とのお揃いなんだぜ」


「それってもしかして、コトリン?」


「おお!おめーも知ってんのか!?」


「うん、まあね」


よく見ると、ゼルの格好はそこはかとなくコトリンを彷彿とさせる

まさかあの格好を普段着にする人が居るとは

ジュピターは何となく恥ずかしくなった


「あーあ、早く帰ってこねーかなーコトリン」


「その人、居なくなったの?」


「ああ。配信者なんだがダンジョンで失敗しちまったらしい。でもよ、そのうち絶対戻って来る。あの人は色んなとこテキトーだけど、約束はぜってー守る人なんだ」


正直な所、ジュピターはコトリンに戻るつもりなど無かった

だから全てのやり残しを片付けてからメトロポリスを出たのだ


「その人もただの人間だよ。配信を辞めたのも、きっと嫌になったからで…」


ジュピターは小さな手で襟を掴まれ持ち上げる


「テメェ…ウチの前であの人を悪く言うのは許さねえかんな!」


「ごめん…」


ジュピターは安心を覚えた

アカウントを変えたのは正しい選択だったらしいと

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ