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ゲームが全てを支配する世界ですが、今日も元気に配信します!  作者: ぬるぽガッ
プロローグ どうにも、彼女は全てを持っていた様に見える
19/42

幸せな子供時代を送った人は、もっとも幸運な人だといえます

「このおおお!」


兵隊の一人が長銃を発破する

弾丸は、車線上に滑り込んできた爆御が受けた


「何だ!?」


ひときわ高い岩山の上

オーメントピアいちの目立ちたがり屋が、そこに登壇した


「レディース、エーンドジェントルメーン!初めましての人は初めましてー!そうでない人は、久し振りー!うちこそ、オーペントピア一番の超々大人気配信者!コトリンだぜーー!」


衣装に身を包んだコトリンが、声を張り上げて目一杯目立つ


「何だあいつ?」

「コトリン…?コトリンってあの!?」

「本物だ!」

「何だお前ら、知ってるのか?」


コトリンは少し勘違いをしている

自身の知名度の中心は、パラゴンの身元、全域にネット環境が整備された中央地区メトロポロスである

そこから外縁地区グレーランド、僻地区アンツールと、中央から離れていくに従いコトリンの知名度は薄まっていっていた

そしてメトロポリスで生を受けた幸運な者は、全人口の1%程度


コトリンを知る者は、ここには殆ど居なかった


「何なんですの貴女?一体どこからお湧きになられまして?」


アイレーアはコトリンに警戒する事無く前に出る


「うちはねぇ…夢と希望とコインのある場所には何処にだって現れるのだよ!」


「何ですの貴女。頭おかしいんじゃ無いんですの?」


「じゃあ君の頭は大丈夫って事で良いのかな?」


「はぁ?」


「ここはPVPだよ?周りを見てごらん?一体どうして、そんだけの“敵”に囲まれて堂々としてられるのかな?」


はっと、アイレーアは周囲を見回す

パラゴンゲームであれど、プレイヤーキルした際のコイン、アイテムの移動は発生する

アイレーアは、30人集団(現在は29人だが)の中では明らかな突出した強者

裏を返せば、彼女を倒しさえすれば兵達達の戦力差は他プレイヤーと同等

彼等にはまだ、ゲームへの復帰のチャンスが残されていたのだ


「君達、本当に弱者のままで良いの?ただ強者の言いなりになって、はした金貰って生きる人生は楽しいかい?」


「お前みたいなメトロポロス住みには分からないだろうけどな、それが社会ってもんなんだぞ。弱者には弱者なりの行き方ってもんがあるんだ。例えそれが死ぬほどつまらなくてもだ!」


兵隊の一人が反論する


「誰もがお前みたいに、親ガチャ地域ガチャに当たる訳じゃ無えんだよ。ガキが」


「………」


コトリンは睥睨する

皆、目に光が無い

アイレーアですら、どこか必死そうだ


コトリンにはそれが、たったの一片足りとも理解できなかった


「何でみんなそんな辛そうなの?」


コトリンの頭上を、翼竜が通過する


「空飛ぶドラゴン、溶岩の川、かっこいい武器に、元気な美少女♡

もっと周りを見てごらんよ!世界はこんなに楽しそうなのに、どうしてワクワクしないんだい?どうして歯を食いしばってるんだい?」


コトリンは両手をあげる


「気付いてないだけで、チャンスは目の前にある。誰も、自分ですら気付かないだけで、君達には才能がある。それに、みんな知らないの?」


火山が噴火し、火口から燃え盛る無数のドラゴンが解き放たれる


「これはゲームなんだよ?楽しまなくてどうするのさ?」


「…!」


全てを失いながら、動く手足で底辺に這い蹲り、平均以下の頭でコインの事だけ考えて暮らした日々

中卒と言うのも嘘で、本当はそもそも学校に行っていない

アンツールで野良犬の様に暮らし、グレーランドで身売り…はできなかったので薄給労働に従事し、身体を壊しながら辿り着いたのはメトロポリスの廃アパート


物乞いとゴミ漁り何でその日を食い繋ぎ、巡視者一体でダンジョンを回り、目が潰れた日にはモンスターの眼球を素人医学で無理矢理移植した。今ではオッドアイとして彼女のトレードマークの一つになっている。

いつ死んでもおかしくない極限の日々

コトリンはそんな生活が、ただ楽しかった


どん底に生まれた自分が成り上がっていく

まるで世界に復讐しているようで、運命に抗えてるようで、ただ楽しかった


だから、もう一生遊んで暮らせるにも関わらず、また危険な戦場に立つのだ


「絶対に勝てないゲームなんて無いのよ。今はまだ三日目、半分経ってない。3日もお姫様を守れた君達なら頑張れるって!」


「…だよな」

「やってやる…やってやるんだ…!」


今度は兵隊全員が武器を取る

全員が30回の攻撃無効

とても一人では捌き切れない数だ


「ふ…ふん!良いですわ!重巡じゃ無い兵士に生かしておく価値はありませんわ!」


アイレーアは一人、反乱軍に立ち向かう


「さあ、掛かってきてくださいまし!」


その声は。震えていた




反乱騒ぎに乗じてまんまと逃げ果せた二人

先程のコトリンの大声で、アイレーア達の元に沢山のプレイヤーが集まってきた

だが彼等はコトリンを探す前に、目の前で巻き起こっている大乱闘に気を取られるだろう


「ふいー!危なかったねー!」


コトリン達は今、新たに湧き出た大量のドラゴンを目当てに火山の方に向かっている


「…なあお前、本当にコトリンか?」


「そだよ。むしろ今のうちの姿こそ、コトリンって言葉から思い浮かべるであろう姿なのだよ!」


「いやいやいや!じゃあ夜の墓場みたいに暗いさっきの嬢さんはどこ行ったんだよ!?」


「うーん何て言うかー、オンとオフ、的な?」


目の前でプレイヤー同士の戦い

事が収まるまで、二人は岩山に座ってやり過ごす事にした


「そー言えば、君はどこから来たの?グレーランド?それとも…」


「アンツール。北の果ての方にあるドルグワインドって集落だ。夏でも冬でもずっと雪が積もってて、作物が殆ど育たねーもんだから、俺達の集落では獣を狩って暮らしてる」


「へぇ。大変そーだねー」


アンツール

コトリンがその言葉と共に思い浮かべるのは、赤い夜空と廃墟の街

幼少の頃をそこで過ごした

ネズミを捕まえ、雨水を啜り、寄生虫に左目を


「うっぷ…」


追憶に嗚咽を漏らすが、コトリンはそれを配信者生活で培ったスキルによって完璧に隠匿した


「アンツールは本当に大変だぜ。お前みたいなメトロポリス産まれにゃ判らねえさ」


「そだねー」


「だけどよ、スッゲー良い場所でもあるんだ」


「?」


「冬山の狩を終えて、三日振りにギルドに帰った時のあの暖かさ。ゼンばーちゃんの柔らかくてあったけー料理を食って、冷えた身体が芯からあったまってくあの感覚。雪の降る夜、狩仲間みんなで浸かる露天風呂。

間違い無く、あれはドルグワインドに生まれてなきゃぜってー味わえなかった至福だと思うぜ」


「!」


コトリンは確信した

彼も、かつての自分と同じだと

苦難以外の何一つが満たされない、現状を目一杯楽しんでいるのだと


「君が羨ましいよ」


美しき闘争の日々

満たせる感覚を知ってしまった今ではもう、二度と取り戻せない


「へへ、そうだろ?あ、じゃあ今度俺の集落に来てみろよ。パラゴンの配給食なんかとは比べ物にならねーほどうめー食い物を」


コトリンは条件反射的に身を伏せる


突如、デイガンドの台詞が途切れる

頭を銃弾が通過し、彼は絶命した


コトリンはすぐさま岩山の陰に隠れ、射手の様子を伺う

もう姿が見えない


「まさか、こんな所で再会する事になるなんてな」


「!」


コトリンの正面に男が一人

ジャヴァだった


「…あんたも来てたんだね」


「やはり、この程度の搦め手では当たらないか」


今の彼の雰囲気は、コトリンの良く知るジャヴァだった

心無く、冷たく、恐ろしい


「てっきり本当に改心したのかと思った」


「お前と同じだ。俺も色々背負う物が増えたんだよ」


ジャヴァは、コトリンの頭をぽんぽんと撫でる

嫌悪しつつも、彼女は特に抵抗しない


「偽りの自分を演じるのが上手いのは、どうやら俺譲りだったらしい」


日付が変わる


『三日目が終了しました。現在のランキング上位を発表します

一位 恐怖の大王

二位 白ナマコ

三位 ぺけぱかCEO

これより一時間、以上3名の位置情報が開示されます』


「お前の事だから、どうせ終盤に特化するだろうと思った」


三体の黒い銃王が、コトリンを取り囲んでいる


「ならば今、ここで潰す」


そう語るジャヴァの目からは、いつか見せた我が子への慈愛は毛ほども感じられなかった

我が子を捨てた事を悔い改めて改心した優しい父親は、ジャヴァの演じる偽りの姿だった


「安心しろ。コトリン。お前の知るジャヴァは何も変わっていないさ」

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