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Monstella Online(仮題)  作者: 豆乳ドーナッツ焼かれてる
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スキルセット

「スキルセットしろよ」


 戦利品の清算を停止する。

 商人NPC(名前も知らない)からの売却の確認を放置して、コジロウは声へと顔を向ける。


 ジャラジャラと装飾が音を鳴らす。大きな身体を支える杖を手にした魔術師。

 トカゲ頭の竜人(ドラゴニアン)が不思議そうな顔で隣に並んでくる。


 幻想世界においてなお目立つ。

 いつだったか漏れ出ていた炎の息吹は、毒々しい色味へと変化している。

 曲者ビルドと呼んでよいのか。邪竜と呼んでふさわしい容貌を持ったフレンドである。


 小脇に抱えた本は肌色の皮を素材としている。しっとりとした質感に忌避感を覚えた。


「死霊使いか、いかついな」

「邪法だと罵られたよ」


 街にいていい格好ではない。百歩譲って刃物は仕方ないとしても、明らかに罪人寄りだ。

 導入通り、犯罪者でも受け入れるということか。街中のNPCは比較的まともだが、経歴は見えたものではない。

 神官と死霊術師は、そりゃあ気が合わないだろう(RPとして、茶番であることはもちろんだが)。


 コジロウは一先ず、精算を完了して向き直る。ゲーム内ゆえ、街中だと認識を緩めればプレイヤーの姿は薄まるし、ぶつかる心配もない。

 フレンドには当たり判定が搭載されているようで、大きいギルドとなると顔をしかめることになりそうだ。


 鍛冶屋へと足を向けるか迷い、広場のベンチへと腰を下ろした。


 先んじて人が座っていたが、ぶつからなければ問題はない。


「うおお、ちょいちょいちょい」

「ええ、割り切りすぎだろ」


「黙らんかい、ゲームやぞ」


 ニッコリと笑いながらコジロウは主張を跳ね除けた。頭が重なって視界の邪魔になるが、腰を落ち着ける誘惑を払い除けるほどではない。


「「やべーやつだ……」」


 どっかりと音を立てながら、どこで買ってきたのか焼き串を頬張っている。

 口が大きいからか、噛みちぎって仕舞えば喉奥に流し込むといわんばかり、喉が大きく波打って飲み込んだ。


「ノリノリでゴブリンをしばくのはいいけどよ、スキル付けた方が楽だろうに」

「試してんだよ、武器ごとで調子を見てんだ」


 槍か刀か、目下のところの悩みは尽きない。刀にする利点として、長くしようとも刀は大剣カテゴリに変化しないことが面白い。

 《物干し竿》が欲しいものだが、大ぶりになってしまう分、型が大雑把になる事は頭を悩ませている。


「テンプレはどうなってる」

「安定だと《武器》《攻撃》《加護》《体力増加》《回復増加》だね。複合はもう少し先になるかな」

「存在してんのか?」

「βテストで一種類だけ見つかったらしい、SNS情報だけど」


 五つまでのスキル欄にセットする。スキルの熟練度は使うだけ成長する。固有スキルは別枠で一つ。

 人間(プライマリーヒューマン)だと《英雄の一撃》だが、アクションスキルに大きくダメージ補正が乗る。


 複合する場合は、一定以上の熟練度とクエストで解放……と噂だけ流れている。


 《武器》スキルの複合は意味があるのか怪しいが。《弓術》か《刀術》で絞るのが、真っ当に強くなっていけると予想できる。

 《流派》も考えれば、特化しないままでいる利点は薄い。状況分けとしては便利でも、火力に伸び悩むことになる。


「二刀流はロマンだよね」

「……双剣とは別なのか?」

「ごっちゃになるけどね、双剣は二つで一つらしいから。刀でもあったね。姥切だったかな。優遇されてるよね。ぺっ」


 進んで少数派にいく悪癖のツケだろうとコジロウは思うに留めた。オーバーキルだ。

 運営だってキワモノの武器が環境トップになっては堪ったものではないだろう。


 かつて傘を武器として選択していた記憶が蘇る。そのくせ大傘は強いのだから、微妙に悲しかった思い出も。

 拘りがあるからモチベが続く。一方で、拘りすぎれば勝利を逃す。

 見極めは、本人次第としか言えない。


「固有スキルは強いんだから、それで矛を収めるといい」

「へへん、人間なんか使ってるからだよ。竜人(ドラゴニアン)になりたまえ」

「ぜってーやだ、口臭いぞ」

息吹対策(ブレスケア)は必要なのはそっちだから」


 ソーマは最後の一つの肉片を飲み込むと、その辺に串を放り投げる。地面を汚すこともなく、粒子となって存在を消した。


「ソーマのスキル構成はどんなよ」

「えーと……《死霊魔術》《杖術》《詠唱効率》《精神力増加》《魔力解放》だね。とりあえずDPS追求してる」


 《魔力効率》は詠唱時間の短縮、《魔力解放》は単純に威力増加だが、その分だけ精神力消費も大きくなる。

 防御方面はまるで手をつけていないが、火力で押し切ろうとする当たり、結構雑なトカゲだった。


「固有で《毒息吹(ポイズンブレス)》も入れてるから、死霊でタゲとって毒ハメ戦法も出来るぞい」

「うわえぐ……耐久型殺しかよ」

「《解毒(キュア)》で対策は出来るけど、対人で回復はメタ過ぎるしね。このゲームだと上手くやらない限り、スキル枠の無駄遣いになりかねない」

「集団戦では回復専門(ヒーラー)置かれたらきついか。回復封じのデバフとかあるか?」


 状態異常はゲームによって強弱がはっきり分かれる。MOでは割合ダメージでそれなりに強くはあるものの、抵抗値もあって相手によっては完全無効までありえる。

 運営とのメタ合戦でしかないか。

 願わくば、トップ対策で環境が回り続けるくらいがコジロウの好むところだ。

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