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Monstella Online(仮題)  作者: 豆乳ドーナッツ焼かれてる
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小鬼の招待

 目が覚めると、そこは薄暗い洞窟だった。

 背中は案外痛くない……のは痛覚がカットされてるからだとして、ベットで寝かされていたらしい。壺やら干された食べ物やらがあって、妙に生活感が強いところに移動していた。


 カリカリと物音がするとおもえば、隣ではメアリーが羊皮紙へとなにやら描き込んでいる。


「あ、ようやく起きた」

「……なにやってんの?」


「内職だよ。置いていくのも悪いし……突然寝るとは思わなかったんですけど?」

「そりゃすまんことをした、この通りだ」


「寝そべってる寝そべってる。謝る態度じゃないんだよね」

「え!?」


「え」

「え!?」


「いやいや。え?」

「ああ。……で、今はどんな状況?」


「え、終わり!? どういうこと?」

「確かゴブリンに毒を盛られたんだよな。どこ行ったんだあいつ」


 イベントストーリーがスキップされたような状態だった。そもそもここ小鬼の洞窟じゃねえか。店から移動されとなれば、ここの妙な生活感にも納得がいく。

 あの体格で持ち上げるとか出来るのかは謎が残るところだが、コジロウはゲームだからと一人で納得する。


「て、なんじゃこりゃ。女神像か?」

「おい無視するなぁ! 街中じゃないから武器だって取り出せるんだぞぉ!」


 コジロウが寝かされていた部屋からさらに奥まったスペース。女性を象った石像が置かれていて、その手前には食べ物や貨幣が備えられている。

 足跡からして一人や二人ではない。大きさからして小鬼とプレイヤーのものが混在している。


 イベントスペースか。似たような流れでここに辿り着いたものだろう。


「女神像なぁ。俺らの街の女神像とは別だよな」

「神殿にあるやつ? うーん、石像の顔なんてどれも同じに見えるんだよね」


「それもそうよな。見分けなんてつかん。ポーズが違うことと……帽子の有無くらいか」

「こんな巻き髪だっけ?」


 それ言い出したらキリないだろう。とはいえ、小鬼がわざわざ人間と同じ神を信奉するのかという疑問と、そうでなくとも人間を模したであろう女神像が置かれていることに違和感を覚える。

 人の言葉を覚えて、街中で店を構えるような小鬼だ。最初からこんな個体がいたか、小鬼の洞窟がこんな迷宮じみてるとは知らなかった。


「それハ、あっしが生まれた頃より置いてあったものでス」

「あんたらで作ったもんじゃないのか」


 調理服を着た小鬼が話しかけてくる。いや、小鬼の迷宮へと場所が変わったことで意味合いが少し変わった。あれは薬師の服だ。


「そうかもしれませン。そうじゃないかもしれませン。ただあんまりにも綺麗だかラ、無碍にはできなかったと聞いてまス」

「……それで? なんで俺たちは薬を盛られて連れてこられたんだ」


 物騒な連れてこられ方をしたわりに、コジロウの身体は拘束もない。さらに武具を没収もされていないことには、敵対の意思があるとも思えない。


「エウレア様の寛大な御心デ、一部の小鬼は市民権を得ることができましタ。とはいえ、いつ覆るか分からぬ故に、同胞が来店した時はこうして安寧の場所があることを伝えているのでス」


 薬師の顔には、そう言って幽霊娘の方をチラ見した。コジロウは人間だし、その女もお前らの同胞を殺しまくってる訳だが……と思ったところでハッとした。

 これ、ファストトラベル地点フラグか。Monstella側の防衛拠点だ。


「私って小鬼側の方なんだ?」

「それはあなたの好きにすればいイ。頼ることも出来るってだけの話ですヨ」


「でもそれなら、一声かけて連れてくればいいだけじゃあ……」

「道を覚えちまえば、最初からここを狙うっちゅうことを防ぐためじゃろ。言うほど信用もしちょらん」

「申し訳ございませン。我らにも守るものはあるということを、ご理解いただきたイ」


「コジロウはすーぐ殺したがるから、案内されなかったんじゃない?」

「なんぞ文句でもあるんか、ぶちくらすぞ」

「……女神の御前ではやめて欲しイ」


 とりあえず、背景だなんだを考察するのはルノアに任せておけばいい。逃げる場所があるなら、選択肢が増える。逃げる敵が増えると、前線のラインを保つのが難しくなるのは確かだ。


 防衛拠点ともなれば簡易的に戦闘準備や補給も出来るか。少し先はもう少し広い空間がある。そこで話せる小鬼が商売をする形式になるのだろう。

 いざ戦闘となってここまで踏み込まれたらほとんどアウトじゃないか。逃げ場はあるのか。女神像の裏、あるいは下へと続く隠し通路の可能性……。一時間で攻略できるような場所なのかどうか。


 ぎょろぎょろと忙しなく目を動かし始めた侍を見て、メアリーは化け物を引き入れてしまったと小鬼と視線が合う。小鬼はただ頷いた。


「我らの血ガ、勇者を呼び起こしタ。同胞はたくさん犠牲となりましたガ……それで市民権を得られたのも事実。あなたを含めて、同胞たちも浮かばれていル」

「いや、私はあいつのせいで消失(ロスト)したとは今でも思っているんだけどね。口を開けば殺すばかり……」


 自分は普通ですみたいな顔をしているのがコジロウとしては気に入らないが、これ以上の情報を落とすつもりもない。

 内職内容が一時的に霊体に攻撃できるようになる符呪を生産しているマッチポンプ幽霊娘め。


 コジロウのMonstellaのときには防衛拠点だなんて話は聞かされていない。これは攻め込まれたときを想定して作られた拠点だ。

 逃げ先があるということはつまり、侵攻される可能性があると想定されるべきだ。


 消失(ロスト)を怖がるべきであればログアウトすればいい。コジロウならそうする。運営がそれを想定していないとも思えない。ログアウト不能になったらそれこそデスゲームが始まるだろう。キルが推奨されるSAOってアリスゼーションじゃねえか。


 かくして拠点探索は始まる。猫って引っ越した家に来た時なんかは部屋を点検して回るらしいね。

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