新たな指導者
「新しく街の統治を任されて参りました、エウレアと申します。若輩者ですがよろしくお願いいたします。」
新しく就任してきた指導者は年端もいかぬ少女だったこともあり、少女愛好国家である日本人は笑顔で歓迎し、掲示板は侍を称ええ、名誉ロリコンの称号を与えた。
「おいおい、これ次に街襲撃とかしたらオッサンに変わるわけ?」
「……ちょっくらPlayer側の戦術を話合わなきゃいけないな。Mostella側に毎回良いようにやられるのは気に食わねえ」
「二度も街の指導者が倒されるなんざ、英雄としての名折れだっつうことよ。別に美少女じゃなくてもな」
「それはそれとして次がオッサンだったら討伐対象だけどね。Mostella化したやつと合わせて殺す」
鈴の音が転がるような美声と、花開くとばかりの美貌による合わせ技に、正気を失ったPlayerは多い。こいつら全員がもれなくMonstella予備軍だ。
薄紫の髪は光にあたることで桃色にも見えるのだが、人誑かしの魔性は続けて言葉を放つ。
「前任の指導者を討伐した、勇者様はどなたかしら?」
名乗り出ようとしたところでコジロウは殺された。
突然の全方位からの殺気。即座に奇襲に備えて、突撃してくる猛者数名。
普段から辻斬りを仕掛ける側もその逆も、楽しんで行っている侍だが、この時ほど気合の入った殺意は珍しい。
おそらくモブベース、自らの顔を多少盛った程度の美男子から悪鬼さながらのチンピラまで、顔を歪ませた殺意に日本人の魂を見た。
理由はどうあれ、ここまで本気で殺しにくるとは。全力で遊べることに顔がひきつるも、内心では歓喜に打ち震える。
その発端となった指導者へとちらりと視線を向けると、全員から視線の的となったコジロウへ確信を持って笑顔を向ける。
心中を推し量ることは出来ないが、この状況で怯える様子が欠片も出さないあたり、鬼畜の片鱗を侍は垣間見た。
前任の指導者が、彼女にとっての敵なのか仲間なのか、知る術は皆無なことに変わらない。
あの魔性も、射るなり斬るなり、殺せば死ぬ。
ともあれ、カウンター狙いでコジローは切り返しの致命傷を数名に負わせたところで背後より、一斉掃射で斬り合ってた前衛ごと撃ち抜かれた。
トドメとばかりにむざむざと近づいてきた幽霊の呪術師は、聖印を施された脇差で滅多刺しにして念入りに殺しておいた。
首に一回。そのまま下へと傷口を開き、急所である太腿に二回。最後に脳天への致命傷を与える。
そこまでで近づくことが危険と判断されたか、距離を取って念入りに囲まれて射殺され、そのまま火葬まで行われた。
軽傷、重症問わず被害者多数、死亡者数名で事件は幕引きする。
「ひ、姫様、お逃げくださいっ! こやつら血に酔ったままだったとは……!」
そこでようやく姫様が怯えた表情を向けた。顔を押さえて震える様子は、動画として世に配信されるが、一部コメントで「これ笑ってね?」という指摘があったという。
【真相は闇の中。正気で狂気へと踏み入るもの達がそこに棲む。
誰が呼んだかMostella。
怪物が産まれるこの彼の地へと、送られるものは英雄の資格を持つものか、それとも……。
とはいえ、非戦闘エリアで殺し合うのはNPCの信用を失うので、ほどほどにしていただきたい。】
後日、運営より注意を受けることとなった。




