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Monstella Online(仮題)  作者: 豆乳ドーナッツ焼かれてる
13/20

呪術師 @閑話

「くたばれぇ!!」


 舌足らずな罵声が、小鬼の巣穴の中腹より響く。

 はぐれの小鬼たちはもはや敵ではなく、かつての死因の一端を担った突兵に関しても、油断さえなければ対処可能な脅威となっている。


 囲まれたら死ぬ。突撃されても死ぬ。

 機動力の無さは準後衛職である呪術師にとって、切っても切れぬ弱点だ。


「幽霊なのに死ぬってどういうことだよーっ!!」


 なので、基本は引き撃ちとなり、ちまちま削っていくのだが、これがかなり気を使う。

 懐に入られると辛いし、距離を取りすぎると攻撃が届かぬことも珍しくない。


 適正距離を常に求められる戦い方は、冷静さを求められる一方で、メアリは自分が短気であることをよく自覚していた。

 もちろん素直に認める気はない。だからこそ意地になって続けている側面もある。


(呪術師って不遇らしいけど、私はこの戦い方を貫きたいし)


 つまるところ逆張りである。

 流されるままに幽霊となり、相性の良いと考察された攻略サイトの情報を鵜呑みに今の構成となった。


 それが反転、初見殺しではあるものの、対策さえ用意してしまえば突破はそれほど難しくない。

 初期値はかなり紙装甲に設定されており、筋力も知力も中途半端で、高めに設定されているのが信仰と神秘という、人間よりもさらに器用貧乏を詰めた種族。

 それが幽霊である。


 最大の特徴はスキルではない特殊な操作。竜人ドラゴニアンの尻尾攻撃や、獣人の爪や羽といった、キャラ性能であろう。


 ポルターガイスト。


 自らが持てるほどの重量の武器を手から離して操作することが出来る。

 やろうと思えば特大武器すらも浮かせる。それはそれで評価はそこそこ高い。


(でもそれって幽霊っぽいかな)


 コンセプトは大切だ。

 ゲームでのキャラクターの戦い方は、そのまま個性となりうる。

 強い装備、強い構成で当たり前に勝つことを否定するつもりはメアリにはない。


 尊敬はしているけど、真似できるかという自信がないのだ。

 そういう意味で、みんなと切磋琢磨を続けるよりは、隙間産業的な曲芸を身に付ける方が面白い。


 ただし並大抵ではない試行錯誤は求められることだけは誤算だった。

 なんといっても、マイナーは誰もやらないが故にマイナーである。

 一発ネタとしてスキル構成をSNSに投稿する配信者なんかはいるが、ガチで対戦しようという変態は見つからなかった。


 なので、大変不本意ではあるものの、繋ぎ合わせたスキル知識を元手に、一つ一つ検証していくところから始まった。


 あとシンプルに操作が難しい。

 手の延長みたいな感覚は慣れないと大変なら違和感が出る。

 酔い続けながら根性で習得したもので、最後の方は寧ろ現実で浮かせて取る行動が出来ないことに、ちょっと笑ってしまった。


 殴り魔型。

 《双剣》《攻撃》《回避性能》《符呪》《精神力増加》。


 基本的に聖騎士に近い立ち位置にあるのが呪術師だ。


 星に願いを。


 神に祈るでもなく、事象を観測するでもなく、脈々と連なった人々の願い。

 祈りとは似て非なるは、それが自らを戒めるものでなく、乞い願うことによって完成すること。


 要するに神話体系の食い違いでしかない、くらいのぼんやりとした認識だ。

 家庭の医学くらいの認識だろうか、蛇頂石や鏡といった、特殊な祭具が必要な信仰による奇跡である。


 そうして奇跡を受け取る盃を用意することこそが大切……とかメアリが最終に行き着いた結論。


 正直何を言っているのかはさっぱりだ。

 しかし無視をしてしまえば、時折に現れる呪術相伝のクエストを逃してしまうので、注意深く聞かなければいけないジレンマがあった。


 スキル熟練度とクエスト報酬が揃い、記憶スロットに登録されることで、ようやく使用できる。

 ややこしい仕様だとは思うが、足を使って知識を得るのは案外面白い。


 オフラインの脱出ゲームのようだとメアリは前向きに捉えている。


 前置きが長くなったが、双剣はかなり相性が良い。

 符呪自体がかなり万能に使える奇跡体系ということもある。


 純粋な強化魔術でなく、属性攻撃に変換できたり、呪いの状態異常を引き起こすことも可能で、手数の多い双剣とは相性が良い。


 双剣の足りないリーチもポルターガイストで補うことが出来て、最も便利なのは腕が非接触であるからか、取り回して絡まったりすることがない自由度にある。


「結局は火力で押し切られちゃうのがねぇ」


 持久戦となれば強みを発揮するし、追撃性能はかなり高い故に、先日には鬼の担い手を単独撃破することができた。(すごくおっかなかった)


 一方で、ダメージレースとなると苦境に立たされるので、主に手数で足止めの呪い+距離を保ってのハメ殺しが基本戦法としている。


 小鬼たちはかなり優秀な自立思考を持っているので、幽霊と見るや術師の小鬼が出張ってくるのが現場の不満だった。

 そうでなければ火属性での火力上げで無双できるのに。


「PvEくらいはもっと簡単でいいのに」


 おかげで結構な集中力が必要となる。序盤に頼まれる小鬼関連のクエストもあらかたはやりつくした。


 もう少し奥に入るのも興味は尽きないが、流石に一人で戦うのも飽きたところだ。

 フレンドは登録しなおしたし、参加は出来るけど、曲者過ぎて弄られるのが大変気に食わない。


(そもそもあいつらが生者(しんでない)ってどういうことだよーーーー!!!)


 ちょうど良い生贄が見つからぬものか。

 多少迷惑をかけても気にしなくてよく、かつ新鮮みを感じる見知らぬ相手がちょうどよい。


 頭の片隅にちろりと仇敵を思い浮かべた。


 敵情視察は大切だ。相手を知らずして如何に攻略するかを見極めさせてもらおう。

 問題なのはーーメアリが自分からは話しかけらない人見知りであるという一点のみである。


「ふ、ふん。別に一緒に遊んでみたいとかじゃないし。一人で戦うの楽しいなぁ。……ふふっ」


 一人で言い訳する姿を想像して勝手に笑える少女は、ちょっとずつ世間からズレゆく残念な子になっていることを、まだ知らない。

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