転生見聞録 @閑話
(騙されたぁ!!)
パーティを組んでいた男たちが、ノリノリになって突っ込むものだから、なんとなしについて行ったことが裏目に出た。
突撃してくる小鬼の突兵によって大部分の体力を削られ、すぐにトドメを刺された。
そのまま生き返ったものの、流されるままに初心者の街へ包囲突撃を行うこととなった。
小柄な少女。髪も肌も白くきめ細やか。
荒くれどもと肩を並べるには違和感のある素性であり、その中身もいたって健全なエンジョイ勢であった。
なんなら、消息不明の文章さえ読むことを放棄していたのだから自業自得である。
しかしながら、死ぬなと念押しされて後ろに下がろうにも、遅れるなと背中を押されて前に出ざるを得ずに、最後は悲痛な表情を浮かべながら流れ矢を頭に受けて死んでいた。
メアリはそんな、間の悪い少女だった。
再び自らの創造から始まるのかと文句を垂れ流しながら転生の門を開けば、一部以前の設定を引き継ぎながら復活できたことに安息する。
(にしたってあの侍は絶対に倒す)
種族特性《霊体》。物理攻撃を透過する固有スキル。
この恨み晴らさずにはいられない。力では叶わずとも、恨み呪い弱らせ殺す。
ことの発端となった男が最後には特別報酬まで受け取ったのだから腹立たしい。
何故おまえは生きているのか。死を持って償わせると誓った。
ふよふよと浮きながら小鬼を倒す。
短剣を浮かせて飛ばす。ポルターガイスト。
単調に直線に飛んでくる短剣に、不思議な顔をしながら小鬼が避ける。
敵対者の少女は、一見してこれまでの襲撃者たちと性質が違う者だとは理解した。
即座に反撃、地面を蹴って逆に自らの短剣を突きつけんーーとして盛大に空を切る。
何事かと慌てて後ろを向いた頃には、先ほど避けた短剣が眼前に迫り、今度は避けきれずに浅く身体を裂いた。
「このっ……このっ、このっ!!!」
「KKKIRRIIINNNGG!!!」
決してその膂力は強いとは言えない。軸をずらせば刺さり切らず、薄く肌を切り裂くのみ。
しかし、攻撃を受けるたびに身体の動きが鈍くなる。徐々に避けきれなくなり、最後は心臓を深く刺されて倒れた。
「……当て難いけど、範囲が広がるのは面白い気がする」
元の動きとはまた違った運動法則。範囲内での武器の手元より遠くへの移動。
回転、射出、引き寄せと割と器用に動かすのは思ったより楽しめる。
何より、対策がなければほぼ一方的な展開に持っていける。
一度だけ、小鬼の呪術師に出会った時は綺麗に死んだが、油断が無ければ大丈夫、のはず。
夢中で動きを最適化する幽霊娘を、通りすがりの侍が観察する。珍しい種族だが、殺せるか否か。
熱心に敵を追い詰める姿勢、さらに効率化の為に努力する姿勢は、同じ戦士として共感するところがあった。
とはいえ、中身が分かったものでなかろうと、街の外で異性を静かに観察する様子は不審者が如し。
紛うことなき事案である。早々に立ち去るが吉と、狩場を変更することにした。
(にしたって、幽霊のクセして顔真っ赤じゃねえか)
怒りはモチベ。敵を狙うことに没頭し、視野が狭くなるほど集中力を費やした。
よほど良い出会いでもあったのだろう。
また一人、同志が増えたと上機嫌になって日課へと向かった。




