幼馴染の妹は解ってくれたのだろうか...
ひとり部屋に取り残された俺だが。
正直、
心配していた。
メールは跡形もなく消したが。
ミヒロの奴が、俺と関係を持ったことを洗いざらい話してしまう危険性があった。
色々考えていたら、昨夜も一昨日の晩もろくに寝れなかった。
マヒロからの電話着信も、
メールもない。
それが逆に恐ろしかった。
ミヒロから色々聞いたのか、
それとも、何も聞いてないのか。
そんなことを考えてたら気がつけば朝になってた。
「ねむ....」
マヒロと顔を合わせるのが気まずかったが、
俺は高校に赴くことにした。
最寄り駅にて。
いつも乗る電車の時間が迫り来る。
ホームにマヒロの姿を見つけた。
「おはよ、シンジ」
「おはよ、マヒロ」
いつもと変わらない挨拶。だいたい同じ定位置に
二人して並んで山手線の電車を立つ。
「ねぇ」
マヒロが俺の顔を覗き込んで心配そうな表情を浮かべた。
「ん?」
「目のしたのクマ、すごいよ?
どうしたの、シンジ?もしかして、
昨夜、あんまり寝てない?」
「顔色もいつもより悪いよ...?」
俺のささいな変化に気がつくマヒロ。
俺は一昨日、今から思えば。
もっとマヒロのこと、常日頃から注意深く観察していれば、間違いを犯すこともなかったのにな、と心の底から悔やんだ。
「マジでどうしたの?シンジ。
すごい、怖い顔してるけど...今まで見たことないくらい険しい表情だよ...?」
「あのさ」
「ん」
「俺さ。
お前のこと、もっとよく見て、知ろうとするわ。今度はけして、失敗しないように。
よく、観察しようと思う...!」
「?」
マヒロの反応から。
どうも、ミヒロはおねぇちゃんであるマヒロに俺とのこと、何も言わなかったのかもな、と思った。
少し、ホッとした。
「私のこともっと知りたい?ふーん。
そっかぁ...」
マヒロはニヤニヤしてる。
「あのね、今度、イチャイチャするときはさ...。言葉責めとかしてほしい。
あと、ネクタイで手首とか縛ってほしい...」
意外だった。
マヒロ、そんな趣味あったの...!?
てか、そんなプレイをお望みなの!?
「ええ!?」
眠気が一気に吹き飛んだ瞬間だった。
「よろしくね、シンジ!」
「あ、電車きた...!!」
結局、俺は。
マヒロとともに、電車に乗り込んだはいいけど。
車内で、
がたん、ごとん、と。
心地よく身体が揺さぶられたせいか。
ふっとんだはずの睡魔がまた襲ってきて。
俺はマヒロの肩に寄りかかって寝てしまい。
山手線を3周もすることになったのでした。
もちろん。
二人して学校には遅刻したけど。
いつも通り。
仲良く恋人繋ぎをして。
校舎のなかを悠々と歩いて。
俺は二年一組。そして、マヒロは二組。
それぞれの教室のちょうど中間地点にあたる廊下の隅で。
「じゃあまた、放課後ね。
校門のところで、いつもの時間に」
と約束して別れたのでした。
妹のミヒロと。
いっ時でも深い関係になってしまったが。
俺たちの関係に、亀裂が入らなくて
本当に良かったと思ってる。
何だかんだ言って。
ミヒロは黙っていてくれた訳だし。
メールだけで。それ以上は何もしなかった
みたいだから。
お姉ちゃん想いの優しい妹なんじゃないか?って。そんな、ことを考えながら俺は授業中の教室に入ったんだけど。
時刻は三時間目開始時刻を大幅に過ぎてて。数学の先生に
「遅刻しやがって...!廊下に立ってろ...!」
って怒鳴られて廊下に出たんだけど。
教室を出たら
マヒロも廊下に立ってた。
「あはは。古文の先生に廊下に立ってろって
言われちゃった...!」
お互い小声でそうやり取りし。
ふふっと苦笑してみせた。
お互い先生に怒られたんだけど。
妙におかしくて。
楽しくて。
マヒロと一緒に廊下に立つのも
悪くないな...と思ったのでした。
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