S級冒険者と不思議のダンジョン
ダンジョン。
ある日突然世界のどこかに出現する、モンスターがうようよしてる上に倒しても時間経過で復活する謎の空間である。
たまに金銀財宝や魔法的に価値あるアイテムが手に入るので腕に覚えのある冒険者は挑戦したいと思ってはいるが、法律で領地内のダンジョンは国のものと決まっているので許可なく足を踏み入れることは違法である。
逆に言えば、国の許可さえあればダンジョンに足を踏み入れることも可能ということ――。
その日の冒険者ギルドには、S級冒険者が六人も集められていた。
旅団【PPCOM】のデスとスノウ。【新時代】のエド。【夕暮れの谷】のハルト。そして我らが【ポテトティー】のパフェとペチカである。
「おはよー! みんな今日はよろしくね!」
パフェが朗らかに挨拶する。
ここにいるS級六人は全員知り合いである。
S級……レベル7500以上に当たる冒険者は少なく、さらに依頼で一緒になることも多い狭い世界だ。
さて、なぜ彼らが集まったかといえば、問題は彼らが受けた依頼にあった。
新ダンジョン攻略メンバー募集。
スタッカート王国の隣に位置するショトルパーン王国に出現したダンジョンが、王国軍だけでの攻略は難しいらしい。
S級冒険者六人と王国の戦士二人でパーティを組み、ダンジョンを攻略して欲しいとのこと。
ここで問題となっているのはその報酬である。
ダンジョンで手に入ったアイテムは全て王国のものなのに加え、報酬もSランク依頼としては相場の半額程度というものであった。
理由としては王国に金がないとか足元を見られているとか考えられるが、ペチカを始めとした冒険者たちの考えはこうである。
これは、私たちへの挑戦です! 身体検査や王国の戦士たちによる監視をすり抜け、ダンジョンの宝を持ち帰ってみせろと言っているんです!
ようするにこの冒険者たちは、報酬が少ないことの腹いせに窃盗行為を勝手に正当化しているのである。
そういうことで、彼らはいかにしてダンジョンの宝を王国に気付かれずに持ち帰るかを議論しに集まっていたのである。
調査の結果、第一候補の装備したまま死に教会で回収する作戦は対策されているということがわかった。教会に多額の寄付をした甲斐があったというものだ。
そして議論を重ねた末、身体検査官に賄賂を贈るというのを基本の方針とすることにした。
それに加えて各々が他にも宝を持ち出す方法を用意しているが、裏切りを警戒して秘密にしている。
過去に似たような状況で王国側に情報を流すことを条件に一人だけ宝を持ち帰る契約をした者がいたのである。具体的に言うとペチカである。
数時間後、一旦旅団ごとに別れてから依頼者の元に集合した。談合を知られないための小細工である。
「はじめまして、俺はショトルパーン王国の戦士、ジャムだ。こっちは賢者のバター」
「ほっほ、バターですじゃ。よろしく頼むぞい」
王国側の二人が冒険者たちを出迎える。
ペチカは直感した。この二人は強い、と。レベルにして8000を越えている。
無意識のうちに斧に手が伸びたが、ハルトがそれを制する。この場で二人を殺しても意味はない。殺すならもっと後だ。
そう、ダンジョンの宝を持ち帰るためにはこの二人の暗殺は必須条件だ。監視されていては細工ができない。
話し合いの結果、デス、ハルト、パフェ、ペチカの四人が前衛。ジャム、スノウが中衛。バター、エドが後衛という陣形になった。
王国の戦士二人が中衛と後衛なのは、冒険者たちを監視しつつ背後からの不意討ちを避けるためだろう。
そして不意討ちができないことは冒険者たちにとってやりづらい形だ。
六人がかりで挑めば間違いなく殺せるだろう。だがおおっぴらにやれば当然犯罪だし一人は道連れにされる。これでは割に合わない。
どうやって事故に見せかけた上で確実に殺すか。冒険者たちの資質が問われていた。
「このダンジョンの敵、かなり頑丈ですね。斧に重量強化のエンチャントをした方がよさそうです」
地下十五階。ここから先は王国軍が攻略していない前人未到の地ということでペチカたちは一時休憩し、装備を整えていた。
ここの敵は動きが遅く物理攻撃主体のゴーレム系統が主体であった。それはつまり後衛に攻撃がいくこと……モンスターの攻撃で二人が死ぬという展開は期待できないということだ。
(やはりあの二人は私たちで殺さないといけないようですね)
(でもどうするの? わたしたちは前衛だし、あの二人全く隙を見せないよ?)
(どうにかして前衛で協力して隙を作りましょう。実行に移すのは後ろの二人に任せます)
(サインを決めておこうか。ここはPPCOMの二人に習ってふぁぼーっ! でいこう)
斧にエンチャントをしながら、ペチカ、パフェ、ハルトの三人は暗号で会議を行っていた。監視の目があるから二組に分けられたが、残りの三人も同じようなことを考えているはずだ。
「これで 丁度いい感じですかね。 楽な仕事でした」
「おおーいい感じ! 特に 両スキルの相性がいいね!」
"こちら囮"と暗号を飛ばす。"暗殺担当"との暗号が飛んできたことを確認して、三人は立ち上がった。
「それでは休憩はこれくらいにして、そろそろ出発しますか」
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