うさぎ小屋の密約
「ようやく見つけましたよ……ペチカさん。いや、ペチコート・スタッカート姫。まさか国を追われたあなたが冒険者として」
ペチカは斧を振り下ろし男の首をはねた。
冒険者ギルドの依頼をこなした帰り道、突然声をかけてきた男が秘密のはずの本名で呼んできたのでペチカはとりあえず男を殺した。
しかし、自分の過去を知る者である。このまま野放しにするのもよろしくないと、教会から出てきたところを拘束し拉致することにした。
そして、【ポテトティー】うさぎ小屋。一メートル級うさぎ型モンスターが住み着いた倉庫に男を運び込んだ。
「よーしよしよし、すいませんねー魔石あげるますからちょっとだけ隅っこの方貸してくださいねー」
「ぶぅぶぅ」
駆け寄ってきたうさぎにペチカは手持ちの魔石を全て献上もといむしり取られた。
うさぎがそれを食べている隙に男を小屋の隅に下ろして猿ぐつわを解く。
「何でいきなり殺したり誘拐したりするんですかい!?」
男の心からの叫びにペチカは首を傾げた。
敵あるいはそれと疑わしきは問答無用で先手を取り無力化した方が間違いないというのがペチカの理論である。
「普通は敵対するまでにもう二、三クッション挟むもんじゃねぇですかい!? モンスターですらもっと攻撃に正当性がありますぜ!」
「攻撃に理由を求めていたら一手遅れますから。刺客相手にまともにやりあう愚行を犯す必要はありません」
「だからって味方かもしれない相手を殺さないでくだせえ!」
男の言葉は酷く真っ当であったが、ペチカはそれを無視した。そもそも冒険者とははみ出し者の集まりなのである。正当性を求めてはいけない。
「それで、私に何の用ですか? 元スタッカート王国の姫である私に」
「へえ。今のスタッカート王国はクーデター当時の農耕省大臣、ハナモグリを代表する連中が国を治めています。あいつら改革を口実に自分たちに忠実な犬以外を政府から閉め出しやがって、反感を抱いている人間も多いんでさあ」
「その一人があなただと?」
「ええそういうことですとも。さすが姫さまは頭もよく話が早くて助かりまさあ」
この腰が低い男はぐっちょと名乗った。聞けば、クーデターの際ペチカたち王族の逃亡に手を貸した者の一人だという。
「なるほど。それで? そのときのよしみで再就職先を紹介しろとでもいうんですか?」
「いえいえ、それだけのことなら姫さまのお手を煩わせるほどのことじゃございやせん。あっしは、姫さまにスタッカート王国に戻ってきて欲しいんでさあ」
その言葉に、ペチカが反応する。強請り集りの類いかと思っていたが、どうやら何かを企んでいる輩とみて、態度を変えた。
「戻ってきて欲しい、とはどういう意味ですか?」
「へえ。是非とも姫さまには現ハナモグリ政権を打倒し、スタッカート王国の女王として君臨していただきたいんでさあ」
ぐっちょの望みは革命だ。ペチカを旗印にして、新たな政権を樹立する。そして。
「その暁には、あなたを新政権の大臣として迎えろというわけですか」
「その通りでさあ。あっしはそのためならどんな手でも使わせて貰いますぜ」
ペチカは逡巡の末、ぐっちょの提案を飲むことに決めた。
スタッカート王国への復讐に手を貸してくれる者がいるというなら、手を組むのも悪くないと考えたのだ。
「いいでしょう。ただし、役に立たないと判断した時は、私はあなたを切り捨てますよ?」
「へっへっへ……それでも構いやせん。では、あっしはこれで……」
連絡先のメモを渡し、ぐっちょはうさぎ小屋を去っていった。
「まあ、せいぜい利用させて貰いますよ」
おそらく、ぐっちょにはまだ隠していることがあるだろう。ただで手を貸してくれるとはペチカも思っていない。
ペチカもまた、約束をまともに守るつもりはない。ペチカの目的はスタッカート王国への復讐だ。
仮に女王として君臨したならば、国を混沌に陥れようとするだろう。それはぐっちょの本意ではないはずだ。そうなれば甘い汁を啜るどころではない。
「うさぎさん、魔石を食べ終わったんですね。よしよし」
ペチカはよってきたうさぎの頭をなで回しながら、ぐっちょという男がどう利用できるかを考え、じゃれついてきたうさぎに殺された。
うさぎは【ポテトティー】の団員がおやつ感覚で良質な魔石を与え続けた影響でレベルが五万を越えている。つよい。
うさぎかわいいですよね。あとブクマと評価も欲しいです。




