地獄の沙汰も金次第
一人で鉱山に魔石を掘りに行ったら殺されそうになったので、ペチカはそれを返り討ちにした。
四肢の骨を折り抵抗出来なくした上で布を噛ませて呪文と舌を噛んでの自殺を封じる。ペチカの行うこの一連の作業は非常にスムーズなものであった。
「大したものは持ってないですね……まあこうなるリスクを考えれば当然ですが」
身ぐるみ剥いでから斧で首を落とした。瞬間、死体は光となって消える。通り魔は教会に転送されすぐに復活するだろう。全裸で。
今回のペチカのようにアイテムを採集しているところを横からかっさらう時は殺せばいいから楽だ。
しかし、身ぐるみを剥ごうとなれば話は別。死んだ者は装備ごと教会に送られてしまうので、殺さずに無力化しなければならない。
逆に言えば、死ねば逃げられるので冒険者は追い剥ぎ対策に自殺する技術が求められたりする。
ペチカなどは慣れたもので、手足を封じられても四通りの自殺パターンが存在する。
「とりあえず金目のものだけ持っていって、後はここに放置でいいでしょう」
その後何事もなかったかのように採掘を続け、バッグが魔石で一杯になったのでペチカは自殺した。
三十分後、ペチカは教会で目を覚ました。
荷物は無事だ。その保証がされていなければワープ代わりに自殺などしない。
「護衛ありがとうございました。これ、今回の寄付金です」
財布からいくらか寄付をして、さっきの追い剥ぎを見つけたので四肢を折って口を布て塞いで身ぐるみ剥いで殺した。ペチカは教会を後にした。
教会。
ある程度寄付をしておくと、復活してから目を覚ますまで手出しを禁止してくれる団体である。全裸なら服も貸してくれる。
逆に、寄付をしてない連中は何故か何者かに身ぐるみを剥がれるようである。
「今日はずいぶんと賑わっていますね。私も少し見ていきましょうか」
旅団への帰り道、近くを通りがかったのでペチカはバザーに寄ることにした。
バッグは一杯だが、食べ歩きや小物を買うくらいなら問題ないだろう。
バザーとは冒険者たちが寄り集まって露店を開いている場所である。
取り仕切る団体にお金を払うことで露店を出す権利の取得と迷惑な客の排除を担当して貰えるから個人の冒険者としては楽なのである。
ちなみに、こういった後ろ楯がない環境で露店を出すと強盗に会うか転売屋の餌食になるし、そもそも違法である。
つまり前にペチカがスタッカート王国で開いていた露店も違法である。
「どこもポーションばかりですねー」
今日のバザーの目玉商品は、各種ポーションをちゃんぽんした違法スレスレの強力ポーションである。
先日のレイド級討伐依頼で配られたやつがなぜかここで販売されている。不思議なこともあるものだ。
「お、ペチカっちじゃん。おーいペチカっちー!」
「あ、パルっちじゃないですか。今日の売れ行きはどうですか?」
パルっちことパルムさんはAランク冒険者で腕のいい武器加工職人である。
エンチャントのついでに武器を独創的なデザインに改造することが得意な黒のショートボブに赤メッシュが特徴的なギャルだ。
「ペチカっちが斧がいいっていうからさー、斧デコったらいい感じに売れてるわ。サンキュー!」
「やっぱり売れ筋は斧ですよ。剣も見た目はいいんですけど、やっぱり使うなら斧になりますから。デザインで売るなら街の方で露店を出すといいと思いますよ。用心棒なら引き受けます」
「そっかー。アタシ的にはこっちでやっていきたいんだけどたまには別んとこにも顔出してみっか」
パルっちはなんというか光側の冒険者だ。一般的な冒険者たちのような、一般社会に適合できないはみ出しものの連中とは一線を画している。
血生臭い冒険者同士での殺し合いの世界には顔を出さず、助け合いの中で人間関係を構築していくまっとうな人間だ。
ペチカはそういった人々を尊敬しているし、邪悪な冒険者たちから彼女たちを守っていきたい。いや、守るのは自分の義務だとさえ思っている。
そして、ペチカの出番は毎日のようにやってくるのだ。
「ふざけんじゃねーぞコラァッ!」
「なんだとオラァ!身ぐるみ剥いで川に捨てられてぇか!?」
冒険者と悪徳商人が喧嘩を始めた。どうせ金銭トラブルか粗悪品を掴まされたとかだろう。すぐに野次馬が集いだして乱闘が始まる。
「すいませんパルっち、ちょっと行ってきます!」
「えっ、ちょっとペチカっち待ちなって!」
パルっちの制止も聞かず、ペチカは斧を抜いて駆け出していた。
「まともに商売してる人たちの邪魔をすんなゴミどもがぁあああ!!!」
手当たり次第に振り下ろされていく斧。宙を舞う生首。喧嘩していた者たちも一斉に斧を抜く。
通報を受け駆けつけた警備隊もこの騒動に参戦し、ペチカは今日二度目の寄付をした。
教会で追い剥ぎにあったものを取り戻したい時は教会主催のチャリティーセールに参加すると買えるらしいです。
ブクマと評価が欲しい。




