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レイド級モンスター、襲来

「ファボーッ!」

「「「ファボォオオオーッ!!!!」」」


 五百を越える冒険者たちが一丸となって地を駆け、一分と経たずにその命を散らしていく。彼らは捨て石でしかない。それを承知の上で散っていくのだ。


「うわー、引きましょう引きましょう。相変わらず【PPCOM】の連中、目茶苦茶やりますね……」


 その機に乗じてペチカは安全地帯まで後退し、各種ポーションをちゃんぽんした特性ドリンクを一気に飲み干した。

 消耗した体を無理やり覚醒させる、普段使いすると中毒必至の非合法スレスレのやつである。


 そして、ペチカと同じことをしている連中がこの場に百人近くいる。【ポテトティー】の面々を含めた、Sランク冒険者たちである。

 先ほどの軍勢は、彼らの回復時間を稼ぐために散っていったのだ。死に戻りより、こちらの方が彼らの戦える時間は長い。


 最大手旅団【PPCOM】。数千人の冒険者を抱えるこの旅団が音頭をとって初めて成立する戦法である。

 ペチカたちS級冒険者たちは【PPCOM】に雇われる形でこの戦いに参戦していた。ポーションや装備も支給されたものである。ここまでするのは一国の軍隊でもなかなかない。


 そして。逆に言えば、そこまでしなければ勝てない敵がいるということだ。


 Hyugooooooooooo!!!!


 音だけで大地がびりびりと揺れる。咄嗟とっさに耳を塞がなければペチカの鼓膜は破れていたかもしれない。



 冒険者にランクがあるように、モンスターにもランクがある。モンスターのランクは、同ランクの冒険者パーティ(八人)で倒せるくらい、と決められている。今だとD級~S級、昔は奴隷級~勇者級といった具合だ。


 ならば、S級パーティでも到底倒せない相手はなんと呼ばれるか。

 "飽きてどこかに行ってくれるまで数の多い奴隷をぶつけ続けるしかない"ことから、奴隷を文字もじってこう呼ばれるようになった。


 "レイド級"と。



 そして今。レイド級モンスター【Grate-Tornado】が都市のすぐそこまで迫っていた。



 トルネードは竜巻を纏った大イタチのようなモンスターだ。近づくだけで風圧によって体力を奪われる上に、Sランクであろうと即死するかまいたちが飛んでくる。推定レベルは百万とも言われている。


ペチカはかまいたちを避けながら、亀の歩みでトルネードに近づいていく。

 暴風で五感と体力が奪われる上に、かまいたちは容赦なく降り注ぐ。三歩進んで二歩下がることを強要される。

 こんな状況では当然連携は不可能だ。


「化物……としか言い様がないですね」


 単純なレベルで言えば冒険者最強と言えるペチカですらこれなのだ。Sランク以外は等しく戦力外と言えよう。


「てやぁあーっ!」


 それでもたっぷり十分かけてペチカはトルネードに肉薄し、本体のイタチに渾身の力で斧を振り下ろす。深々と刺さった斧をスライドさせるように引いて、傷口を広げる。 


 瞬間。間欠泉のように傷口から突風が吹いて、ペチカの体が浮かぶ。そこにかまいたちが直撃し、ペチカは真っ二つになった。



 戦闘開始から五時間。

 ぶっちゃけ、倒すの無理じゃない? という空気が冒険者たちの間で漂い始めている。

 討伐報酬は捨てて、防御だけに専念すればかなり楽になれる。


 異常な防御性能に加えて、攻撃する度に遥か後方まで吹き飛ばされる突風。そして即死のかまいたち。

 それらを相手にしたら、普通の者なら心が折れるのも当然である。普通の者ならば。


「あはははは! ぶっ殺してやる! ぶっ殺してやりますよ! こんな風に!」


 ペチカは近くにいた冒険者の首を意味もなくはねた。


 極限まですり減らされた神経。度重なるポーションの投与。終わりの見えない戦い。

 そんな状況で一周まわってハイになるのが、S級冒険者っていうやつらなんです。


「殺す殺す殺す殺す殺す…………」

「服なんて邪魔だーっ! 全裸こそ最強よーっ!」

「ぬあああああん!!ぬあああああん!!」


 主戦力の気力は限界突破。一丸となってトルネードに突撃し――全員まとめてみじん切りになった。



 結果として、トルネードを倒すことはできなかったものの、都市部には被害が出ない程度に納めることができた。


 戦果としては万々歳といえる。だが、【ポテトティー】では、団長主催の反省会が開かれていた。


「では……なぜ私は、反省会を開くことにしたのでしょう……わかる人は、手を挙げて……」


「はい。私たちがハイになって目的を忘れていたことです」


「その通り……です」


 依頼において、大事なのは敵を倒すことよりも、目的を達成することだ。それを忘れていたからこそ、団長は広範囲斬撃魔法を放ち、暴走列車と化したS級冒険者たちを死に戻りさせたのだ。


「では……質問です。今回の、依頼の目的は……?」


「はい! もう少し頑張れば倒せたんじゃないかという雰囲気を演出しつつ、適当なところで取り逃がすことです!」


 レイド級を倒して討伐ボーナスを貰うより、何度も襲ってきて貰って長く付き合った方がトータルでは得である。

 旅団【ポテトティー】を含めたS級冒険者たちの間では、これは常識であった――。

 本当の敵は人の欲。

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